右翼が政治家ゴシップを「週刊新潮」に渡した理由

 7月上旬、「週刊新潮」(新潮社)に「山崎正昭・前自民党参院幹事長と25年も付き合った愛人」という記事が掲載された。同記事によると、自民党の重鎮・山崎正昭議員(67歳)は妻と3人の子どもがいながら、地元・福井に愛人とその子どもをつくるも、その子を認知するという約束をほごにしているというのだ。

さらに、5年前には愛人関係も終了し、養育費も支払われなくなったという。記事は、愛人本人による、憤りの果ての告発だった。

 解散総選挙直前の自民党にとっては痛手となったであろうスキャンダルだが、このネタを「週刊新潮」に持ち込んだのは、都内の右翼団体「白皇社」だった。右翼といえば、企業や大使館などに街宣をかけ、問題を追及するというイメージが強いが、今回は、なぜ週刊誌に持ち込んだのか? そこにある、彼らの「義」とはなんなのか? 白皇社・塩崎逸雄相談役を直撃した。

「今回の相談は、山崎と妾関係にあった女性からある人物を介して、我が団体の会長に持ち込まれたもの。山崎は参院議員になってしばらくは、愛人や娘のために養育費を支払っていたのに、内閣や党の要職に就くと、"負の遺産"を消去しようとしたかったのか、連絡を絶つという卑劣な手に出た、というものだったんです」(塩崎氏)

 同団体は、山崎議員の無責任さを看過できないとし、「今回の問題について考えを聞きたい」という質問状を同議員に提出したという。

「いきなり街宣するなどして事が公になると、メディアや民主党が自民党を攻撃する材料にする。我々は旧社会党や労組上部組織、日教組などが実権を握る民主党政権誕生には寄与したくはない。軽量化したとはいえ、消去法で自民党政権の維持が望ましいんです」

 対する山崎議員は、質問状は無視して、「官憲(警察関係など)を使って圧力をかけてきた」(塩崎氏)という。

 近年、右翼からのこうした質問状に対して、政治家も企業も「即警察に相談」という対応を取る。政治家が警察関係者と癒着したり、企業が天下りで警察OBを受け入れたりするケースも増えている。「そういうことをする奴らほど、いかがわしいことをしているもの。

自己の責任を棚に上げ、すぐに官憲に頼る」この姿勢を、塩崎氏は「社会主義的社会規範の浸透」だとして、危機感を強める。官憲に頼り、弱みを見せることは、彼らの政治や経済への介入を許すことになるというのだ。

「質問状に対して、明確で誠意ある回答をすれば、今回は目をつむるというメッセージを投げることが多いのに、官憲の天下りを過信するあまり、逆効果を招くんだ」という塩崎氏は、ここにきて「右翼にも『意地』がある。非人道的所業を白日の下にさらすために、反日左翼メディア以外のメディアへの情報提供で対抗する」と決意し、「新潮」に情報をもたらしたというのだ。

「昔の政治家は、妾の子どもであっても、差別なく育て上げ、その子が議員を継ぐなんてこともよくあった。総理候補の中にも妾の子がいるだろう(笑)。それが、今の政治家は器が小さく、自己保身に汲々とするばかり。山崎の記事が世に出れば、そうした風潮や、右翼や市民からの問題追及に対して不遜な対応を続けてきた政治家や企業への見せしめになると思った」(同)

 かくして、「新潮」が6ページも割いたスキャンダル記事は表に出たのだが、当の山崎議員は同誌の取材に対して、愛人や子どもの存在は認めた上で「逃げも隠れもしない。お書きになって結構」と強気の姿勢を見せている。

 それまで散々、女性や右翼から逃げてきた人間が言う言葉とは思えない。ブレ続けてきた麻生・自民党の断末魔を象徴する人物といえよう。
(文=編集部/「サイゾー」9月号



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「円安」は受験業界にも影響大 留学費用が大幅UPで語学、国際系学部離れの傾向も?

Getty Images

 止まる気配がない、円安。アメリカの中間選挙で共和党が勝てば円安は一段落するという見通しもあるが、年初に1ドル100円台半ばだったレートは現在140円台後半で推移しており、日本中が大きなダメージを受けている。

 資源、資材、食糧など円安の影響は多岐にわたるが、ダイレクトに影響を受けているのが留学生たち。円が急落したことで、留学生たちの懐は火の車だ。

「コロナ禍で約2年、留学の動きはパッタリ止まっていましたが、今年度に入ってようやく、留学を希望していた学生たちが動き始めました。しかし問題は留学費用です。どの国のどんな大学に行くかによって費用は大きく異なりますが、アメリカなら最低でも生活費として月1000ドルは必要。しかし、1年足らずで円が3割も安くなって、滞在費が大幅に増し、しかも『とにかく物価が高い』という悲鳴も聞こえてきています。

 奨学金をもらっている学生からは、『ドル建てでほしい』という声が上がっていますが、そんなに簡単に制度が変わるはずもなく、ある学生は『為替レートばかりチェックしている』と話していました」(都内中堅私大関係者)

「日本=物価が高い国」だったのは、もはや過去の話。アメリカでは、大学のカフェテリアで食事をしても1食1000円以上かかるというから、日本の平均的サラリーマンよりよほどリッチな昼食だ。物価高は日本人留学生だけの問題ではないが、円安は確実に日本人が留学するチャンスを奪っている。都内の私立高校で進学指導にあたる40代の男性教師は、こう述べる。

「我々の時代は大学選びも学部選びもわりと適当で、“数学が苦手だから文系”といったレベルでしたが、今の高校生たちはとにかくマジメで実利重視。ネットでいくらでも情報が拾えるので、就職な有利な学校や、将来食べていけるスキルが得られる学部しか選びません。

勉強ができる子はとりあえず理系。最新トレンドは、AIや情報系です。

 円安も志望動向に大きく影響を与えています。語学系や『国際』と名の付く学部、近年急増するグローバル学部などは安定した人気がありますが、コロナで海外渡航が難しくなり、モチベーションを失う受験生が続出しています。さらに、極端な円安で留学のハードルが上がり、海外留学は現実的でないと、進路を変える生徒もいます。そもそも、全大学生の約半数は奨学金を受けており、経済的に余裕がある家庭は一握り。留学を視野に入れた学部を選べる学生は、同級生から羨望の眼差しで見られるような状態です」(私立高校教師)

 ドルで資産を持っていたり、親がドル建てで給料をもらっていれば話は別だろうが、そんな家庭はごくごく一部。若者の勉学への意欲を削ぐ国に、明るい未来はあるのか……。

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日刊サイゾー2022.10.03

「文春1強」に陰りか? ベテランエース記者が続々と他誌移籍の背景

「週刊文春」11/24日号(文藝春秋)

 寺田稔総務相を、政治とカネの問題で丹念に追及し、辞任に追い込んだ「週刊文春」(文藝春秋)。先日はジャニーズ事務所のKing & Prince分裂騒動も詳報し、“文春砲”は健在だ。

「雑誌の売り上げ1位をキープしつつ、『文春オンライン』『週刊文春電子版』も好調。今の雑誌業界は相変わらずの『文春1強』です」(出版関係者)

 そんな「文春」にも、脱退騒動が起きているという。

 2016年にベッキー不倫、甘利明経済再生担当相をスクープ。“文春砲”ブランドを確立させて以降の新谷学編集長体制での「文春」の快進撃は、説明は不要だろう。

 だが実は、現在の加藤晃彦氏が2018年に編集長に就いたあたりから、潮目は変わり始めていると、「文春」関係者が声を潜めて語る。

「『文春』編集長はこれまで、若手の頃から記者として鳴らし、誰もが納得する人が就いてきた。新谷氏はまさにそうでした。しかし加藤氏は記者経験が少なく、スポーツ誌の『Number』などを渡り歩き、久々に『文春』に戻ってきた時はデスクとしてでした。編集長に昇格が決まると、多くの社員が首を傾げたものです。加藤氏に白羽の矢が立ったのは、コンプライアンスのうるさい世の中で、訴訟対策など、ガバナンスをしっかりしてきた点が評価されたからでしょう」

 これは、“プラプラ呑み歩いてたまに大スクープを放つ”といった「古き良き時代の週刊誌記者」を放逐することとイコールでもあった。

「『文春』といえば、雑誌記者として名を挙げた人が『文春』に引っ張られ、その後、フリーで活躍するのが王道。『プレジデント』から斉藤貴男、『FRIDAY』から麻生幾、『噂の真相』から西岡研介が契約記者として来て、巣立っていった。

かつては力のある記者は、企画会議に出なくてよかったり、莫大な経費を使っても何も言われない時代もあった。ただ、今はそんな記者を囲っている余裕などない。加藤氏はベテラン記者相手にも、忖度なく厳しいことを言っていました。それもあって、加藤氏の編集長就任と前後して、40代の記者3人が一気に辞めたのです」(前出の「文春」関係者)

 契約記者の顔ぶれもさま変わりした。

「”文春砲”のおかげで、大手新聞社という安定した地位を捨てて『文春』の契約記者を志願する若手もいます。かつてなら考えられません。雑誌業界未経験者も積極的に採用するようになった」(同前)

 さらに昨年から、異変が如実に表れてきたというのだ。

「去年、まず甘利大臣スクープをすっぱ抜いた記者が辞め、フリーランスに。さらに、ジャニーズなどの芸能スクープを飛ばしまくった記者は、小学館の『NEWSポストセブン』デスクに就いた。そしてこの10月には、『文春オンライン』の40代の記者2人が、それぞれ集英社と『ポストセブン』に転職しました」(同)

 なぜこうした事態となったのか。彼らを受け入れたある雑誌の編集者が指摘する。

「とりわけ『文春リークス』には上質なタレコミが集まっており、それをきっちり捌ける記者が求められます。

その一方で、自分の人脈でネタをとってきたり、文章にこだわりのあるベテランは敬遠されるようになった。加えて『文春』は厳格な『50歳定年』を敷いており、どれだけ活躍していても例外はない。65歳定年が一般的な世の中で、明らかに逆行しています。記者にも家庭があるわけで、定年を前に、他誌に移籍しておこうとの考えのようです」

 これは「文春1強」の時代に変化をもたらすのでは、と編集者は続ける。

「やはり人材は重要ですから、この歪みは出てくるでしょう。これからはネットを中心に、署名原稿を書きたいライターも増えてくる。そうなるとシビアな『文春』より、企画が通りやすい他誌のネット部門に流れるのでは。実際、『いずれは文春で』と考えるライターは少なくなっています。20年近く販売部数1位を誇ってきた『文春』の陥落もありえるでしょう」

 栄枯盛衰は世の習いでもある。

週刊文春、ついに中吊り終了――”大転換”でもひた隠すあの騒動 雑誌文化のひとつが終焉を迎えたーー。 週刊文春(文藝春秋社)が、電車内の天井から吊らされる「中吊り広告」を8月いっぱいで撤退するというのだ。出版関係者が解説する。

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