闇バイトが実行役の一連の強盗事件 共通点は?身を守るには?

首都圏で相次いでいる闇バイトを実行役にした一連の事件について、警視庁と、埼玉、千葉、神奈川の3県の警察本部は18日、合同捜査本部を設置しました。

1都3県で発生した少なくとも14の事件で関連が疑われるとして、指示役の特定など、グループの全容解明を進めることにしています。

これまでの事件についてまとめました。

ことし8月以降 1都3県で14の事件

ことし8月以降に1都3県で発生した一連の事件では、闇バイトで応募した若者など、9つの事件で29人が逮捕されていますが、いずれも実行役や見張り役で、指示役の検挙には至っていません。

【8月27~28日 さいたま市の住宅 強盗傷害など】

【8月29日 千葉県八千代市の質店 強盗予備】

午後6時半ごろ、千葉県八千代市の質店に2人組が押し入り、経営者に「脅されているので警察に通報してほしい」と伝えたあと、逃走。

【8月31日 さいたま市の住宅 強盗予備】

【8月31日 神奈川県厚木市の中古ブランド品店 強盗傷害】
午後0時半ごろ、神奈川県厚木市の中古ブランド品店に2人組が押し入り、ハンマーを振り上げるなどして店員を脅し、腕時計など130点、およそ8400万円相当を奪って逃走。

【9月3日 神奈川県鎌倉市の質店 強盗傷害】
午後6時半ごろ、神奈川県鎌倉市の質店に2人組が押し入り、バールでショーケースのガラスを割って腕時計2個、2万2000円相当を奪う。押し入った1人はその場で店員に取り押さえられたが、その際、店員がけが。

【9月18日 さいたま市の住宅 強盗傷害】
午前1時ごろ、さいたま市西区の住宅に4人組が押し入り、住人の80代の母親と60代の娘を粘着テープで縛って暴行。現金10万円余りを奪い逃走。

【9月26日 千葉県船橋市の住宅 強盗傷害】
午前2時すぎ、千葉県船橋市の住宅に2人組の男が押し入り、住人の50代の男性を「車の鍵を出せ」などと脅す。男性はハンマーのようなもので首元を殴られたが、けがはなかった。息子が警察に通報し、2人組は何も取らず逃走。

【9月28日 東京 練馬区の住宅 強盗傷害】
午前3時前、東京 練馬区の住宅に複数の男が押し入り、住人の50代の父親と20代の息子に暴行を加えたうえ、腕時計や現金など合わせておよそ120万円相当を奪って逃走。

【9月30日 東京 国分寺市の住宅 強盗傷害】
午前4時ごろ、東京 国分寺市の住宅に複数の男が押し入り、住人の60代の女性を粘着テープで縛ってハンマーで殴るなどの暴行を加え、逃走。現金数百万円奪われたか。女性は顔を殴られ、腕を骨折するなどの大けが。

【10月1日 埼玉県所沢市の住宅 強盗傷害】
午前2時ごろ、埼玉県所沢市の住宅に4人組が押し入り、住人の80代の夫婦を刃物で切りつけて現金およそ8万円などを奪って逃走。

【10月9日 千葉県船橋市の住宅 強盗傷害】
千葉県船橋市の住宅に住む高齢夫婦の親族から「強盗と鉢合わせたようだ」と警察に通報。2人組の男が押し入ったとみられ夫婦は「現金900万円を奪われた」と説明。70代の妻が胸などを強く打って骨折。

【10月15日 横浜市青葉区の住宅 強盗殺人】
午前9時半ごろ、横浜市青葉区の住宅で後藤寛治さん(75)が粘着テープで手足を縛られた状態で殺害されているのが見つかる。現金およそ20万円がなくなっていたことが分かり、強盗殺人事件として捜査。

【10月16日 千葉県白井市の住宅 強盗傷害】
午前3時半ごろ、千葉県白井市の住宅に複数人が押し入り、住人の70代の母親と40代の娘を縛って目隠しをして暴行。現金およそ20万円と軽乗用車を奪って逃走。親子は全身を強く殴られ、母親は手の指を骨折した。

【10月17日 千葉県市川市の住宅 強盗傷害】
千葉県市川市の住宅に3人組が押し入り、居合わせた50歳の女性が粘着テープのようなもので縛られ、連れ去られる。女性は埼玉県内で保護。全身を打撲しているものの、受け答えはできる状態。女性に暴行を加え、現金や車を奪った疑いがあるとみて捜査。

捜査関係者 “被害者の「共通点」が絞り込みにくい”

これまで被害にあっているのは住宅と質店ですが、捜査関係者はターゲットにされている被害者の「共通点」が絞り込みにくいと話しています。

たとえば高齢者が含まれている家もあれば、そうではない場合もあり、犯行グループが何の情報をもとにターゲットを選定しているのか特徴がつかみづらく、その間に次の犯行が起きてしまっているということです。

また、施錠していても窓を割って侵入するなど、強引な手口がみられることから、防犯対策も簡単ではないとしています。

警察はこれまでに29人の実行役を検挙しましたが、指示役の検挙には至っていません。

警視庁は実行役から押収したスマートフォンを解析し、指示役や首謀者の特定を急いでいますが、その間に実行役が闇バイトに応募して集まってしまえば、次の犯行が行われるおそれがあり、警察庁は全国の警察に対して、▽闇バイトに応募した人で、指示役などから危害を加えると脅されているという人や▽犯行グループに個人情報を送ってしまい、脅されている人などに対し、警察への相談や通報を呼びかけ、保護するよう通達を出しました。

また、▽深夜のパトロール活動を重点的に実施することや▽不審な動きをする人物や車を見つけた場合に、積極的に職務質問を行うことなどを指示しました。

犯罪グループからどう身を守る?

家の中に突然押し入ってくる犯罪グループからどう身を守ればよいのか。

防犯対策を専門にしている「ステップ総合研究所」の清永奈穂さんは、被害に遭うリスクを減らすため、『段階ごと』の対策をとっておくことが重要だとしています。

【ターゲットにされないために】
まず犯人グループからねらわれないための対策として、▽玄関の鍵を複数にするほか、窓と一緒にシャッターも閉めて、侵入に時間がかかるように見せること、▽塀などの上に「忍び返し」と呼ばれる防犯器具などを設置することで、『警戒している』と相手に知らせることが有効だとしています。

【敷地に侵入されてしまったら】
もし、相手が家の敷地の中にまで侵入してきた場合にいち早く異変に気づけるよう▽窓などに衝撃を感知すると音が鳴る防犯ブザーを取り付けておくことや、▽防犯ブザーの先に釣り糸などをくくりつけて侵入経路になりやすい場所に仕掛け、犯人の足が引っかかった際に音が鳴るようにしておくこともできるとしています。

【家に入られてしまったら】
そして万が一、家の中にまで入られてしまった場合、▽まずはすぐに110番。そして異変を誰かに伝えられるよう、寝る時でもスマートフォンや防犯ブザーは近くに置いておくこと、▽警察官が駆けつけるまでの間、鍵がかけられる部屋に逃げ込むためのルートをあらかじめ考えておいてほしいと話しています。

“ルフィ”事件でも秘匿性高い通信アプリ

今回の一連の事件では、指示役が使っていた秘匿性の高い通信アプリのアカウントが一部重なっていることが分かっていて、警視庁は実行役から押収したスマートフォンを解析して指示役などの特定を進めることにしています。

2022年から2023年にかけて、「ルフィ」などと名乗る指示役のもとで行われた一連の広域強盗事件でも、実行役への指示には秘匿性の高い通信アプリが使われていました。

警視庁による捜査の過程で、フィリピンの入管施設に収容されていた特殊詐欺グループの幹部4人が関与した疑いがあることは、比較的早い段階でわかり、4人は日本に送還されて特殊詐欺に関わった疑いで逮捕されました。

しかし、強盗事件への関与を立証するのは簡単ではありませんでした。

4人が使っていたとみられるスマートフォンなどの端末の一部は、データがほとんど残っていない状態でしたが、警視庁は「デジタルフォレンジック」と呼ばれる技術を使い、消去されたアプリでのやりとりを復元していきました。

実行役からの聴取に加え、スマートフォンの解析結果や、同じ収容施設にいた関係者の証言など、証拠を一つ一つ積み上げ、警視庁は4人を強盗事件の「指示役」と特定し、逮捕につなげました。

警視庁は、今回の一連の事件について犯行グループが捜査をかく乱するためにアカウントを使い回している可能性も念頭に解析を進め、指示役などの特定につなげたいとしています。

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