非正規の待遇は改善される

 話を本題にもどそう。

 一人当たりGDPで韓国を大きく上回る日本が、平均給与で負けてしまう理由。それは、「日本は人口減少下で、主婦・高齢者・学生など総出で労働参加」しており、「彼・彼らの多くが非正規雇用」となるためだ。結果、労働力は薄く広くなる。その分、平均賃金は下がってしまう。

 この件自体は、一種の社会シフトであり、一概に悪いこととは言えないかもしれない。

 ただし、だ。結果、非正規の待遇改善がなかなかなされない構造になってしまう。まず、一番の問題は、有期雇用のため、「下手なことを言ったら、契約終了にされてしまう」という恐怖だ。これはとにかく大きい。仮に無期雇用であれば、会社の経営状況の悪化や、勤怠の悪さなどで解雇されることはあったとしても、労働者として当然の権利である「待遇改善」への常識的な要望であれば、解雇はできない。この点、やはり非正規問題は大きい。

 次の問題としては、主婦・高齢者・学生は、家計の柱に別の収入源があることだ。配偶者、年金、両親だ。だから自らの賃金はその「補填」ということになる。そのため、待遇改善への要望度合いが高まらない。むしろ、配偶者や両親の雇用が維持されるなら、自分は身を引く的な行動にも出がちだ。この点もマイナスとなるだろう。

 昨今では、労働組合も非正規雇用者に参加資格を広げているケースが珍しくないが、ここでも問題は起きる。主婦であれば家事、学生であれば学業、高齢者であれば体力的制約により、組合活動に力を入れる余力が限られてしまうのだ。加えて、組合費を徴収されることも厳しいだろう。労働組合への参加は、あくまでも「自主的な活動」であるから、こうした制約下では、主婦・高齢者・学生の参加は遅々として進まないだろう。

 ただし、「広範な労働参加とそれに伴う労働収入の希薄化」という問題は、早晩、大きな曲がり角を迎えて、持続不可能になるだろう。それは以下の2つの理由からだ。

1.高齢者の減少。正確には、後期高齢者(75歳以上)は増え続けるが、労働参加率の高い前期高齢者(65~74歳)は坂道を転がるように激減していく
2.主婦パートの減少。女性の大卒→総合職化が進み、一大戦力となっている今、企業は彼女らを「結婚・出産」退職で逸すことをよしとしない。結果、継続雇用者は増え、そのあおりで、主婦パートへの転出者が減少する。この傾向は2018年から既にデータでも確認できる

 社会全体で非正規人材が枯渇する状態になれば、人材獲得競争も激化し、賃金アップも起きるだろう。その結果、人件費増を価格転嫁する循環が生まれざるをえなくなるはずだ。

 既に、大手の流通・サービス業では、人手不足から有期雇用者の無期化を積極的に行っており、キャリアラダーを設けて、昇進昇給が進む体制を敷きつつある。こうした動きに自動化なども加わり、徐々に給与・待遇・生産性が改善していくと考えている。

 この面での「安い日本の『人』」問題は、大局的に見ればすでに終盤に入っているのではないだろうか。