欽ちゃん復活! 1979年『NHK紅白歌合戦』の裏番組
裏番組へ目を向けると、ピンク・レディー人気凋落の原因を作った日本テレビは、新宿コマ劇場からの中継で『欽ちゃんの紅白歌合戦をブッ飛ばせ! 第1回全日本仮装大賞・なんかやら仮そう』を放送していた。
タフで芸達者な坂上二郎が『カックラキン大放送!!』(日本テレビ)、『明日の刑事』(TBS)など、ピン仕事が多くなったこともあり、素人いじり路線へ転じた萩本欽一による視聴者参加型番組だった。
これが「大将めっけ」こと萩本欽一最後の冠番組として、現在まで残る『全日本仮装大賞』の第1回なのだが、大晦日の生放送ということで、現在のように家族や仲良しグループによるコント仕立ての仮装は少なかった。
『ぎんざNOW!』(TBS)や『TVジョッキー』(日本テレビ)の素人参加コーナーの延長線上で、『新春かくし芸大会』(フジテレビ)の素人版を狙っていたのだろうが、実際、それらの素人参加コーナーで物真似芸を披露していた竹中直人が4組目で登場し、「松田優作のドラキュラ」なる仮装(?)を演じて、番組初の不合格になっていた。
審査員は青島幸男、桐島洋子、富島健夫、鈴木義司、沢たまき、樹れい子、江夏豊、岡田眞澄、青木雨彦、所ジョージ、山本晋也、里中満智子、谷啓という、いかにも井原高忠や斎藤太朗の番組らしい面子なので、合格しそうな気もするのだが、仮装というよりは物真似だし、題材からして欽ちゃん好みの素人っぽさがなかったのだろう。
肝心の視聴率は4.8%で、前年の8.2%からかなり落ちたが、予想とは違った手応えがあったのか、お茶の間向けの視聴者参加型バラエティ番組として企画修正され、1980年5月3日、『土曜スペシャル』枠の19時へ繰り上げた第2回が放送されると一気に人気番組となった。
ところで、広島東洋カープ初の日本一に貢献した江夏豊が『日本レコード大賞』ゲストからの遅れ参加で審査員に入っていたのだが、監督の古葉竹識は『紅白歌合戦』の審査員で、衣笠祥雄、高橋慶彦、木下富雄、萩原康弘といった主力選手たちも何故か「元祖ハンバーグ師匠」菅原洋一の応援要員に駆り出されていたので、江夏はつくづく一匹狼だったんだな、と感慨深いものがあった。
そして、その江夏の前で「広島東洋カープ優勝の瞬間」の仮装(?)を演じた無名の素人はさぞ緊張したことだろう。