日テレは実写版『ゴルゴ13』で対抗!? オールスター勢揃いの1979年『紅白歌合戦』! 裏番組の奮闘劇

更科 修一郎 プロフィール

歌番組は『NHK紅白歌合戦』だけではない!

高倉健版は地味過ぎたが、千葉版はやりすぎである。

TBSは通常編成の『月曜ロードショー』枠で映画『ウエストサイド物語』だったが、フジテレビは『スーパージャム'79~'80』という音楽特番を組んでいた。

フジテレビとニッポン放送の共同企画で山本コータローが司会を務め、松任谷由実や森山良子のスタジオライヴ、日本青年館での吉田拓郎コンサート、北海道足寄町での松山千春コンサートをリレー生中継するニューミュージック系特番だった。

現在の目で見ても豪華な企画だと思うのだが、視聴率は2.6%と伸び悩んだ。

テレビ朝日は「80年への狙撃!! 紅白だけが祭りじゃない!!」と銘打ち、浅草国際劇場で行われた内田裕也主催の『ロックフェスティバル'79』を中継した。

のちの『ニューイヤーロックフェスティバル』なので、柳ジョージ、桑名正博、ジョー山中、アン・ルイス、宇崎竜童、ジョニー大倉、近田春夫というおなじみの面子だが、視聴率は1.4%。

以後、紅白の裏番組として中継されることはなかったのだが、この年に裏番組として放送されたのには理由がある。

カネボウ化粧品・秋のCMソングとして歌った桑名の『セクシャルバイオレットNo.1』が10月に入って人気爆発、『関白宣言』のオリコン11週連続1位を阻止し、そのまま3週連続1位となったからだ。

10月11日の『ザ・ベストテン』(TBS)ではゴダイゴ『銀河鉄道999』の8週連続1位も阻止していたので、当然、紅白歌合戦にも出場する……かと思いきや、ヒットの時期が遅かったからか、1977年の大規模な芸能界麻薬汚染事件で逮捕され、まだ執行猶予中だった桑名の本物すぎる不良性感度がNHK的にまずかったのか、内田裕也への恩義を優先したのか、結局、一度も紅白に出場することはなかった。

実際問題、この年の紅白のロック系歌手は西城秀樹と沢田研二を除くと、ツイスト(2年連続)、サザンオールスターズ、ゴダイゴなので、ロック系の不良性をかなり警戒していたのが見て取れるし、敷居もかなり高かった。

 

東京12チャンネル(現・テレビ東京)は『年忘れにっぽんの歌』とワンセットの懐メロ特番『年忘れなつかしの歌声』だが、それでも『日本レコード大賞』との兼ね合いで直接対決を避けていたTBS以外は、ようやく『紅白歌合戦』に対抗する構えを見せ始めた。

その分、手前の『日本レコード大賞』の裏番組は古い名作映画を流して体裁だけ装う、やっぱりどうにもやる気のない編成だったのだが、時間帯が早い分、子ども向けを意識していたのか、名作とも言い難い謎のチョイスになっていた。

日本テレビは19時から通常編成の『ルパン三世』第116話「108つの鐘は鳴ったか」だが、続く映画『地底巨大生物の島 驚異!!地底湖に棲む大恐竜・大海亀・キングゴリラの恐怖!』は、1961年のハリウッド特撮映画『SF巨大生物の島』とはまったく関係なく、ジュール・ヴェルヌの『地底探検』が1976年にスペインで映画化されたものだ。新聞のテレビ欄には(77年伊)と記されていたが。

フジテレビの『ゴジラ対ガイガン』もたいがいだが、テレビ朝日の18時30分からの『ゴルゴ13 九竜の首』は、もはや正気の沙汰とは思えない。一時期、関根勤が千葉真一の大袈裟な物真似シリーズで演じていたが、誰かに怒られたのか、いつの間にか封印されていたアレだ。

というか、千葉真一はさておき、『ゴルゴ13』の時点で子ども向けですらないし、テレビ朝日版『ドラえもん』はこの年の4月から、10分間の帯番組(18時50分)として始まっており、既に人気番組となっていた。

80年代以降の大晦日は1995年以外、現在に至るまで『大みそかだよ!ドラえもん』頼みだったから、それを差し置いてわざわざ『ゴルゴ13』というのは、かなり意外な感じがする。

なお、その唯一の例外だった1995年のテレビ朝日は、日本での放映権を獲得したビートルズの公式ドキュメンタリーTVシリーズ『The Beatles Anthology』を18時から5時間30分一挙放送したが、視聴率は通しで3.3%だった。

次の記事『都はるみ登場時の瞬間最高視聴率は「84.4%」!? 80年代の『NHK紅白歌合戦』と漫才ブームの余波』につづく。

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