200ファイル以上ある名刺のデザインデータをIllustrator + XMLで一括で作成したお話
スタディスト 開発部 デザイナーのたなゆうです。つい先日オフィスが移転しました。とっても広いです。
自席も良いのですが、何よりカフェスペースで作業するとめっちゃ捗ります。
さて今回はその移転に少し関係のあるデザインのお話です。
移転にあたり、「住所の記載を新しくする」という作業は必ず発生します。その中でもおそらく一番厄介なのが「名刺」だと思います。
名刺作成で抱えていた課題
①メンバーが増えて名刺ファイルが大量になり、作成・編集時間が膨大になった
スタディストはおかげさまで現在70人以上のメンバーがJoinしています。つまり名刺ファイルも70人分以上あることになります。
改めてファイル数を確認してみると、単純な人数分だけでなく表記が分かれているパターンもありました。
- 裏面のデザインが違うパターン
- 社用携帯番号のあり・なしパターン
- 英語版パターン
これらを含めると編集するaiファイルは200以上あることが判明しました。
つまり200以上あるaiファイル内の住所を新しくしないといけない…
②新メンバーの名刺データの作成時にもミスが起こりやすい
名刺データを個別で作成するデメリットは移転といった特別な時だけはありません。今までは新メンバーがJoinした時、以下のようなフローで作成していました。
1人分追加ならまだいいですが、これが複数人になっていくと作成するファイル数が増えていきます。
その際のテキスト流し込みで編集漏れが発生するというデメリットもあります。しっかりとチェックすることも大事ですが、「ミスが発生しにくい」仕組みを作るのも必要です。
また、デザインフォーマットファイルという概念もないので、何かの拍子でオブジェクトの配置がズレたりすると一貫性が保てません。
どうにかできないものか…?
外部ファイル(CSV/XML)でテキストを流し込んで解決しよう!
そんな時、DTPに詳しい弊社デザイナーからありがたい言葉を頂きました。
そんな方法が・・・(白目)
作成方法を調べると、IllustratorでCSV/XMLをインポートして変数を用いてテキストデータを流し込む作成方法がありました。
よし!これだ!!
斯くして名刺の住所変更に伴ったデザインデータの作成フロー変更プロジェクトが開始されたのです。
どのようなフローで行うのか
基本的な外部ファイルのインポートと保存方法について
基本的な作成方法についてなどはAdobe公式ブログを参考にさせていただきました。
Illustrator + XMLファイルを用いたフローに決定
最終的に以下の「XMLファイルを用いてのフロー」にまとまりました。
- XMLファイル内のコードをExcel(.xls)で編集
- 編集したコードをXMLファイル内にペーストし、保存
- XMLファイルをIllustratorのフォーマットファイルにインポート
- バッチ処理でメンバー分の名刺ファイルを一括保存
スタディストでは社内ルールとして「名刺の追加発注は各メンバーが必要な際に自分で行う」というルール(管理部の工数削減のため)にしているのでaiファイルを個別にして「誰のものか」を明確にする必要があります。
データセット名=個別のファイル名となるので、データセット名も一括管理するためにXMLファイルによるインポートにしました。
作ってみた
まずは以下のファイルを用意していきます。
- 名刺のフォーマット(aiファイル)
- XMLファイル
- XML編集用Excelファイル
1.名刺のフォーマットを作成
まずはフォーマットとなる名刺のデザインをIllustratorで作成します。
複数人分の情報を流し込むことを考慮したり、オフィスも増えたこともあったので、まずは既存のデザインから大幅に変更することにしました。
2.データベースとなる名刺情報が記載されたXMLを作成
まずは上記で参考にしたブログと同様に、Illustrator上でフォーマット内の各テキスト・オブジェクトに変数をバインドし、変数名をつけます。
各変数をバインドできたら、カメラアイコンを押してデータセットを一つ作ります。
その後「変数ファイルの保存」を行ってXMLファイルを保存します。
このXMLファイルを今後、インポートファイルとして利用していきます。
3.編集箇所をExcel形式(.xls)で作成
XMLを直編集するより表にしていたほうが情報の視認性が高く、編集しやすいのでXMLのコードの編集はExcel上で行うようにしました。
まずはXMLファイルをAtomで開きます。
青枠部分が各データセット部分なのでインデントを無効にして一行にします。
その後Excelで新規のXLSファイルをつくり、ペーストして列単位で編集する項目に分けていきます。
全項目できたら、Altキーを押しながらExcelのフィル ハンドルで自動的にコピーしていきます。
あとは赤文字部分を一旦リセットし、各項目に総務部から頂いた名刺情報データを参照して入力していきます。
また、この時点で各メンバー分のデータセット名の項目にファイル名の命名規則を元に、任意の名前を入力しておきます。
全員分入力していったら、XMLの編集用ファイルの作成は完了です。
4.Excelで編集した情報をXMLにペーストする
3で作成したXML編集用Excelファイルからコピーし、Atomで開いているAtomにペーストすればXMLファイルの編集は完了です。
インポートしてみた
Illustratorでマスターデータに先程作成したXMLファイルを読み込んでみました。
きちんとデータセット名も指定した通りに読み込まれています!
エクスポートしてみた
あらかじめ「アウトライン化→保存」や「PDFで別名保存」といったアクションを保存しておき、バッチ処理をかけてデータセット名ごとに保存していきます。
Illustratorでバッチ画面を開き、「ソース」を「データセット」にして書き出す範囲を選択します。
さらに「保存先」から「選択」を押して保存するフォルダを選択。最後に書き出すファイル名を「データセット」に指定します。
上記の設定を完了し、「OK」を押すと指定したフォルダにaiファイルやPDFファイルがデータセット別に複数保存されます。
さらにイメージの表示・非表示も制御可能
裏面が違うパターンなどはtrue / falseを使えばメンバーごと(データセットごと)に表示を制御することも可能です。
英語版について
英語版についてはレイアウトの関係もあり、マスターデータとXMLデータは分けました。ただデザインやテキスト情報も異なる箇所が多かったので現状は問題なく作成ができそうです。
名刺ファイルを総務部に提出後、印刷発注
こうして出来上がった新しい名刺がこちら
まとめ
① 200ファイル以上の名刺データを一括で保存し、工数削減できた
個別のaiファイルを一つ一つ手動で行った場合、テキストを編集・保存するのに1ファイル5分かかるとしたら単純計算すると200ファイルでも16時間40分。1日(8時間)フルで稼働しても約2日以上かかる計算になります。
今回のXMLインポートを採用したことによって200ファイルの編集・保存までの工数を約1時間まで短縮することができました。
②新メンバーの名刺作成時にもミスが起こりにくくなった
個別のaiファイルで編集していくとファイルを複数開き、個別でファイルを見る必要があります。
この状態ですと編集だけでなく確認時も複数ファイル見る必要があり、効率も良くありません。
今回の改善で確認箇所を表一覧にしたことで、確認がしやすくなりミスが起こりにくい仕組みができました。
またIllustratorのファイルを一つのマスターとしたことで、デザインの一貫性を保つことも可能になりました。
マニュアルにもまとめたので見てね
今回の名刺作成フローを弊社プロダクトの「Teachme Biz」のマニュアルとしても公開してありますので、ぜひご覧頂ければと思います。
終わりに
スタディストではマニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」のより良い改善を共に目指してくれるデザイナーを募集しています。
ぜひぜひお気軽にお声がけください!