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祖父や叔父らの戦歴を知りたい、戦死の状況を知りたいー第一歩は軍歴照明書の取得から

 第二次世界大戦が1945年9月2日に終わってから、もう79年が経過しました。中の人は父親が戦時下を生きた世代ですが、もっと若い人になると、祖父の世代が戦中世代となります。父親や母親も直接戦争を知らない世代が、今は主流でしょう。そうすると、例えば戦死した親族の情報も、断片的にしか分からなくなってくるものです。そこで、軍人・軍属(看護師や医師、技術者など)だった親族がどの戦場に行き、どんな経過をたどったかということを調べたいという方のため、中の人が取った方法をお伝えし、方法が分からないとお困りの方に、少しでも参考になればと思います。
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 まず、「軍歴証明書」を入手するのが第一歩です。軍歴証明書を管理しているのは、海軍の場合は厚労省、陸軍の場合は本人の本籍地のあった都道府県です。軍歴証明書は個人情報ですので、交付を申請できるのは本人か親族に限られます。親族の場合でも、請求できるのは6親等内の血族か、3親等内の姻族に限られますので、早めに対応されるのをお薦めします。
 ここでは、親族が請求する場合についてご説明します。

 【陸軍の場合】交付申請できるのが親族に限られますので、申請して調べたい人と自身の関係を証明する書類が必要になります。まずは、各県の地域福祉課に連絡し、申請に必要な書類などを確認します。中の人は陸軍で戦死した叔父とニューギニアから生還した祖父が同じ三重県でしたので、三重県庁に連絡しました。
 すると、地域福祉課の担当者が、まず名前と本籍から、記録が残っているかどうかを確認してくれました。三重県の場合、戦後の書類焼却などもあって、6割ほどの人しか把握できない状態でしたので、無駄な手間がかからないように、まず確認してくれたのです。この割合は各都道府県によって違いがあり、ちなみに空襲で大きな被害を受けなかった長野県は、おおむね揃って居るとのことでした。
 2人とも記録があると分かり、「調査依頼書」を送付していただきました。これに記入して必要書類をそろえて、地域福祉課に送り返すことになります。調査依頼書の記入をし、添付書類として本人であることが確認できる書類(運転免許証など)のコピー、調査したい対象者と請求者の親族関係が確認できる戸籍謄本、返信用封筒と指定の切手が必要でした。

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送っていただいた調査依頼書に添付されていた書類

 次に戸籍謄本集めです。対象者本人の最後の本籍地の市町村に連絡を取りました。そこでは、ホームページから申請書をダウンロードし、発行費用のための定額小為替(金額は指定される)、切手を貼った返信用封筒、身分証、そして請求者本人の戸籍のコピーをまとめて送付しました。
 戸籍謄本が折り返し帰って来るので、きちんと請求者と対象者がつながるか確認し(場合によっては、複数の戸籍謄本が必要になる)、先に述べた県庁あての書類をまとめて申請。一か月余りで、軍歴証明書が届きました。

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祖父の軍歴証明書
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叔父の軍歴証明書

 このように、所属部隊や進級時期、戦死の状況や階級などが分かります。これでも充分ですが、さらに調べたい場合は、示されている部隊名などを、さまざまな書籍で追跡していきます。
 戦友会の多くは解散していますが遺族会が残っている場合もあり、慰霊祭をしている事例もあります。また、似たような状況の手記が残されている場合もありますので、根気よく探せば手がかりは出てきます。

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ムック本でも連隊の基本情報は分かります
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こちらはビルマ戦線へ補充された牧内兵長の足跡を知るため集めた資料です

 また、中の人が二人(いずれも故人)の情報をわざわざ示したのは、具体的にどんなことが記載されているかをお伝えするのが第一義。そして、実はまだこの二人については調査が進んでおらず、こうして示すことで何か新しい情報が来るかもしれないと思ってのことです。
 SNSで発信して情報を集めるのは、現代ならではだと思います。ただ、あくまで個人情報でありますので、提供の仕方、反応への対応は、慎重にされるのが良いかと思われます。
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 【海軍の場合】対応窓口は厚労省調査資料室になります。こちらも「個人情報開示請求書」を手続きの案内とともに送付してくれます。そして遺族関係が確認できる戸籍、戦没者の場合は死亡年月日が確認できる(除籍された)戸籍が必要になります。さらに、身元確認書類(運転免許など)に加えて開示請求する日の前の30日以内に作成された請求者の住民票が必要です。戸籍は陸軍の場合と変わりませんし、基本的に住民票が加わるだけです。また、こちらは調査に時間がかかるとしていて、中の人が請求した時は3か月以上かかるとなっていました。
 また、これは参考ですが、敗戦時に外地にいた陸軍部隊の名簿や資料も保管されていますので、陸軍関係の調査の補足になると思います。

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厚労省からの開示手続きに関する案内
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海軍に入った叔父の軍歴証明書
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厚労省による補足説明

 これも、戦死した時にどんな船に乗っていたのか、105掃海特務艇とは、と調べることになりました。有名な船とは違い補助艦艇ですから、難しいと思いましたが、資料本を購入し、ようやく判明しました。

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なぜこの本を選べたか不明。ネットで調べたか
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来歴や雷撃した潜水艦の名前まで分かりました
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こちらもなぜ選べたか不明
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だいたいこのような艦という写真がありました

 こんな小船で魚雷攻撃くらえば、即沈没、戦死でしょう。あらためて、叔父に合掌します。
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 以上、長々と続けてきましたが、具体的に入手した中の人の体験を伝えることで、手続きの雰囲気が伝わればと思いました。どこも丁寧に応対していただけます。厚労省の場合、ホームページのカスタム検索で「旧陸海軍」と入力すると申請ページが出てくると教えていただきました。リンクを張りましたので、ここからでも飛べます。
 なお、中の人が軍歴証明書のことを知ったのは、戦後70年の2015年3月15日に掲載された信濃毎日新聞の記事でした。記事によりますと、この節目の年には海軍も陸軍も請求が急増していたとの内容でした。来年は戦後80年。もし軍歴証明書を取りたいという方は、早めに動くことをお勧めします。





 

ここまで記事を読んでいただき、感謝します。責任を持って、正しい情報の提供を続けていきます。あなた様からサポートをしていただけますと、さらにこの発信を充実し、出版なども継続できます。よろしくお願いいたします。

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