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日本被団協がノーベル平和賞を受賞 - ノーベル委員会とマスコミと日本国民の欺瞞

10月11日午後6時、今年のノーベル平和賞が日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)に授与されることが発表され、週末はこのニュースでテレビ報道が埋まった。特に事前の予告や地均しもなく、突然の発表だった。マスコミやネットでは祝福の声が溢れ、核廃絶を渾身で訴えて粘り強く運動してきた高齢の被爆者への慰労と敬服の言葉が溢れている。が、私の受け止めは世間の空気と少し異なり、率直に「遅きに失した。もっと早く受賞してよかった」と述べた長崎市長の鈴木史朗の所感と同じだ。「今ごろ授賞なのか」と空しく不満に思う。尊敬する、心から尊敬する長崎の谷口稜曄は7年前の2017年に死んだ。広島の坪井直も3年前の2021年に死んだ。何でノーベル平和賞委員会は二人が存命中に賞を与えなかったのか。二人の歓びの声を聞きたかった。その声を聞いて感動したかった。日本中が感動の涙に包まれる空間に接したかったと思う。

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9年前の2015年8月、ちょうど安保法制の時局だったが、『谷口稜曄(86)と坪井直(90)のお二人をノーベル平和賞の受賞者に』というブログ記事を上げている。谷口稜曄について以下のように書いた。読み返して、私らしい文章だなと思い、9年分の若さと力強さを感じる。筆致に情熱とエネルギーがあり、政治の理想を追求する精神が漲っている。若い。


「私の胸は床擦れで骨まで腐りました。今でも胸は深くえぐり取ったようになり、肋骨の間から心臓の動いているのが見えます」。この証言は初めて聞いた。苦痛に耐えながら、核兵器廃絶の運動を続け、長崎原爆被災者協議会のリーダーとして先頭に立ってきたこの地上の星を、日本国はこれまで顕彰したり叙勲したことがあるのだろうか。本来、文化勲章などという制度があり、栄誉があるのなら、86歳の谷口稜曄や90歳の坪井直こそが受賞者としてふさわしく、国民の前で功績が讃えられるべきだろう。偉大な文化的貢献や指導性というのは、谷口稜曄や坪井直の人生とその努力にこそ言われるべきで、価値が認められるべきものではないのか。

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これほど人を勇気づけ、尊敬に値する偉業が他にあるだろうか。これほど日本人として誇らしいと思える平和の聖人がいるだろうか。これほど世界に向かって、これが日本人だと胸を張れる英雄が他にいるだろうか。私は、この2人の平和のリーダーを人類史の至高の宝だと思い、日本人として誇りに思い、世界の人々にプレゼンテーションしたいと思う。世界中の人々に彼らの苦悩の歩みを知ってもらい、その偉大さを知って尊敬してもらいたいと思う。そのことを通じて、人知を超えた核被害の非道と不条理を知ってもらい、地上から核を廃絶する気運を高めることができればよいと思う。

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ノーベル平和賞の受賞式こそが最高で最適の機会だ。本来、日本国民は、国民をあげて、国をあげて、この2人にノーベル平和賞を与えるべく運動すべきではないのか。そのことこそが、憲法前文に謳っている「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」という決意の具体的な実践と形象ではないのか。そしてまた、国民として、政府に十分な救済をさせることができなかった被爆者の人々に対する、せめてもの償いとしてできることであり、被爆者の人々の思いに報いることではないのか。2人の受賞が実現すれば、世界の弱者に希望を与え、生きる力を与え、人間の尊厳を教えることになるだろう。(引用終わり)

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この記事から2年後の2017年、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞した。発表は10月6日で、枝野幸男が「枝野立て」のコールを受け、新党である立憲民主党を2日に結成した4日後のことである。この年の10月も国内は衆院選一色だった。ICANの受賞について私は記事を書いてない。ツイッターには憤懣を書き散らした記憶がある。ICANの設立は2007年だ。ノーベル平和賞受賞までわずか10年の活動期間しかない。日本被団協は1956年に結成され、68年間ずっと草の根で核廃絶を訴え、世界に被爆の恐ろしさと悲惨さを訴えてきた。あのとき、テレビに登場したICAN事務局長のベアトリス・フィンは、ぬけぬけと「広島と長崎には一度も行ったことがない」と言い放った。何の衒いもなくカメラの前でそう言った。受賞したとき35歳。ジェンダーの人権活動家からICANに横滑りした経歴である。

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ICANの日本ビューロー代表として登場した川崎哲も、それまで全く知らない顔だった。NHKやマスコミが被曝関連の報道で紹介した事例もなかった。私だけでなくほとんどの日本人がICANなる組織を知らず、その活動内容に不明だっただろう。何せ10年の(核禁止運動の)活動歴しかないのだから。苦労して苦労して世界に核廃絶を訴えた日本の被爆者の努力を差し置いて、抜け駆けして、どうしてこんな浅薄な(国家権力とも微妙に近い)団体がノーベル平和賞の栄誉を横取りするのだろうと憤り、村上春樹の問題もあって、私はノーベル賞に意味を認めない立場になった。名誉だも権威だとも思わなくなった。理科系については門外漢なので断定的な評価はできないが、少なくとも平和賞・文学賞・経済学賞については仰ぎ奉って拝跪する価値はなく、むしろ、そこにはアジア人や日本人を愚弄し差別し操作するような、怪しい思惑と動機を疑う選考結果ばかり目につく。

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実際、過去の受賞例を見ると、身内の国際官僚のお手盛りとか、アメリカへの忖度とか、ベルレモンの意向とか、不審で面妖な性格を感じさせるものばかりで、欧州から遠く離れた地平に住む、われわれのような世界の底辺の庶民の感覚からは遠い面々だ。もっと直截に言えば、そこには、欧州貴族の特権的密室での仕切り(コードとプロトコル)を、世界の80億の民衆に押しつけて睥睨し順応させようとする、一方的で優越的な意図が見え隠れし、われわれは疎外感を覚えずにはいられない。それは、五輪を運営するIOCの態度や言説や方針に感じる違和感や距離感と同じだ。個人的意見として敢言すれば、ノーベル委員会と国際オリンピック委員会は、欧米が世界を支配するための道具であり、ラディカルで辛辣な表現を試みるなら、欧米帝国主義が自己の正当性と普遍性を維持し保障するための文化イデオロギー装置である。WEF(世界経済フォーラム)と同列の存在であり支配機構だ。

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被団協が翌12日に開いた会見で、92歳の田中煕巳が似たような趣旨の発言をしていた。1985年に「核戦争防止国際医師会議」なる団体がノーベル平和賞を受賞している。核戦争防止を呼びかける医師団によって1980年に結成され、わずか5年の活動で受賞となった。そこから10年後の1995年、核兵器廃絶を訴える科学者の国際会議である「パグウォッシュ会議」がノーベル平和賞を受賞した。どうして、地道に放射能の人体への影響と被害について自らの身体を犠牲にして訴えてきた日本被団協が、その貢献をノーベル委員会に認められないのか。39年前と29年前の遺念が会見で語られていた。39年前と29年前にその挫折と不遇を味わい、さらに7年前にICAN授賞という三度目の冷酷な仕打ちを受け、田中煕巳は、もう日本の被爆者がノーベル平和賞を授かる機会はないだろうと諦めていたと、そう言っていた。同時に、核戦争は再び起きるだろうと思うようになったとも。

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私も田中煕巳と同じ意見だ。85年の国際医師会議も、95年のパグウォッシュ会議も、17年のICANも、受賞の理由は同じだろう。核のタブーの規範を世界に浸透させ、核兵器の禁止と廃絶へと世界を動かしてきた平和運動という点で同じだ。だが、医師会議もパグウォッシュ会議もICANも、運動の基底にあったのは日本の被爆者の痛みと訴えであり、日本の被爆者が発してきた主張と説得だ。日本の被爆者の体験と発信と伝導と勇気こそが、先に受賞した三つの反核運動体の前提であり基礎に他ならない。であるならば、反核の国際平和運動において最も功績があり、唯一無二の存在として資格があるのは、日本の被爆者の運動だということになるだろう。実際、キノコ雲の下で何が起きたかを説明し、その想像力を世界の人々に導き、核の恐怖を意識させてきたのは、その主役は日本の被爆者であり、それを支援した広島と長崎であり、日本の市民と知識人だった。そう考えたとき、日本の被爆者が68年間も顧みられず、ノーベル委員会に無視されてきた事実は異常だ。

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ノーベル平和賞委員会のフリードネス委員長が述べた授賞理由は、一般論として尤もであり、頷ける内容だ。だが、私の目からは、欧州で核戦争の危機が迫ったときに、都合よく日本の被爆者を思い出し、シンボルとして利用したように見える。狡猾で巧妙な政治性を感じ、また場当たり的ないい加減さを感じる。欧州貴族の官僚ペーパーだ。本来、2024年10月に発表するノーベル平和賞は、何らかイスラエルのガザ虐殺に関連したものでなくてはならず、イスラエルの蛮行を抑止する良知のメッセージ発信でなくてはならなかっただろう。世界中の人々がそれを期待していたはずだし、オスロの委員会もその圧力を感じていたに違いない。そのとき、ガザを無視して、いつものような身内のお手盛りとか、アメリカとEUの意向に沿った無意味な(あるいは米欧リベデモイデオロギーの宣教を目的とした)木偶人形に授賞してしまうと、世界の失望とノーベル平和賞の権威失墜は甚だしいものになる。

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だから、一計を案じたフリードネスは、ガザ虐殺を無視しても世界から批判が出ないような対象を選考し、これなら文句あるまいと日本被団協を持ってきたのだろう。フリードネスは授賞理由の文中でこう言っている。「広島と長崎の地獄の炎を生き延びた人々の運命は、長く覆い隠され、顧みられずにきた」と。正確な指摘であり、重要な事実認識だが、それでは問い返したい。長く覆い隠して顧みなかったのは誰なのか。日本の被爆者の存在を隠し、光が当たらないように妨害してきた最大の責任者は誰なのか。日本の被爆者が世界から注目されないよう、別の木偶人形を推したて、それを「核禁止」や「核廃絶」の象徴として名誉を与えてきたのは誰なのか。広島にも長崎にも一度も足を運んだことのない人間を「核廃絶の女王」に仕立てたのは誰なのか。平和賞の本来の理念からすれば、40年前に日本の被爆者が受賞し、10年前にペシャワール会の中村哲が受賞して当然だった。ノーベル賞は欺瞞に満ちている。

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今回、マスコミの中ではNHKがこの受賞の報道に熱心で、被爆者の運動の意義を称えていた。だが、日米同盟の強化に最も熱心で、その意義を強調して、日米の拡大核抑止を積極肯定して宣伝しているのも、同じNHKである。と言っても、日米の拡大核抑止に反対のマスコミなど一社もなく、批判している政党もほとんどない。日本人は矛盾した行動を無原則に平気でする。拡大核抑止とは、アメリカの核兵器を日本に配備し、対中国戦争で使用するという意味で、核禁止や核廃絶とは真逆の核武装と核使用の軍事行為だが、日本の多数はそれを認めている。認めつつ、被団協のノーベル平和賞受賞を国民的祝事として慶んでいる。次の総選挙で議席増が予想される立憲民主党の野田佳彦は、首相だった2012年6月、原子力基本法を改定し、それまで平和利用(電力生産)だけに限定してきた原子力開発の目的を、安全保障でもOKと変更した。官邸前での反原発デモがたけなわだった時期で、この決定には大いに驚かされた。

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これはすなわち、日立とか三菱重工が自前で核弾頭を開発製造するべく準備を始めるという意味で、政府がそれを密かに差配し推進して、いずれ改憲後には国産核兵器を自衛隊に配備しますという意味だ。今、三菱重工が急ピッチで12式の地対艦および地対地ミサイルを製造していて、非常に高性能だと前評判が上々だと言われている。これは陸自に配備する。おそらく、この国産の中距離ミサイルに国産の核弾頭を装填する計画なのではないか。山本太郎が党首討論会で言っていたように、国内には(その目的のために)大量のプルトニウムが貯蔵されている。


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