当選無効になった元市議に報酬「全額返還」命じる 最高裁が初判断 議員活動した期間の報酬も「0円」に
2023年12月12日 21時26分
公職選挙法違反(買収)の罪で有罪が確定し、当選無効となった元大阪市議に対し、市が支払った議員報酬など約1400万円の返還を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は12日、市の請求通り全額返還を命じた。返還額を一部にとどめた一、二審判決を変更し、元市議の全面敗訴が確定した。
◆「自ら選挙の公明、適正を著しく害した」
公選法は、候補者が買収や事前運動などの罪で有罪が確定した場合、当選を無効にすると規定。その際、自治体が失職までに議員に支払った報酬などをどこまで返還請求できるかについて、最高裁が初の判断を示した。
元市議は当選無効までの間に報酬や期末手当(計約1000万円)、政務活動費(約400万円)を受領。判決は、候補者が買収などの罪を犯すことは「自ら民主主義の根幹をなす選挙の公明、適正を著しく害したと言うべきだ」と指摘。その上で「(任期開始に)さかのぼって職を失った人が市議として活動していたとしても市との関係で価値を有しない」と判断した。
裁判官5人のうち4人の意見。今崎幸彦裁判官は「市議として活動した事実は残る」とし、一、二審を支持する反対意見を出した。
◆「十分議論されず、返還請求しない運用がされてきた」
林裁判長は補足意見で「従前は当選無効になった人の議員報酬の取り扱いについて十分な議論がされず、返還請求しない運用がされてきた。判決を機に議論が尽くされると期待したい」と議論を促した。
一、二審判決は元市議に返還義務があるとしつつ、逮捕前や保釈後は議員活動していたとして、活動できなかった逮捕・勾留中の21日分の報酬と未使用の政務活動費の計160万円に限って返還を命じた。
元市議は2019年4月の大阪市議選で当選したが、運動員を買収したとして逮捕、起訴された。20年2月に有罪が確定し、失職した。(太田理英子)
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