1票の格差、最大3.03倍でも「合憲」 2022年夏の参院選で最高裁「拡大傾向にあると言えない」
2023年10月18日 21時51分
「1票の格差」が最大3.03倍だった昨年7月の参院選は投票価値の平等を定めた憲法に違反するとして、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は18日、「最大格差が拡大傾向にあると言えない」として「合憲」と判断し、選挙無効の請求を退けた。参院選を合憲と判断するのは2016年選挙から3回連続。
◆11人が「合憲」…「違憲」1人、「違憲状態」2人
15人の裁判官のうち11人の多数意見。4人の個別意見があり、法学者出身の宇賀克也裁判官が「違憲」、検察官出身の三浦守裁判官と裁判官出身の尾島明裁判官の2人が「違憲状態」、弁護士出身の草野耕一裁判官は合憲としつつ独自意見を述べた。
焦点は、最大格差3.00倍だった19年参院選後に新たな格差是正策をとらず、わずかだが格差拡大につながった国会の姿勢をどう評価するかだった。
大法廷判決は「格差是正のための法改正の見通しが立っておらず、具体的な検討が進展しているとも言い難い」と停滞状態と認めた。しかし、15年公選法改正で「鳥取・島根」「徳島・高知」を一つの選挙区にする「合区」が16年選挙から導入され、「数十年にわたり5倍前後で推移していた最大格差が3倍程度に縮小した。合区を維持し、最大格差が拡大傾向にあると言えない」と指摘した。
さらなる是正措置については、合区対象の4県で「投票率の低下や無効票投票率の上昇が続き、有権者が都道府県ごとに国会議員を選出する考えが強いことがうかがえる」と合区の問題点に言及し、「是正の取り組みにはさらに議論を積み重ね、広く国民の理解も得る必要がある」と、「国会が新たな具体的方策を講じなかったことを考慮しても、投票価値の著しい不平等状態だったとは言えない」と結論付けた。
1票の不平等問題は、議員1人当たりの有権者数が選挙区ごとに異なるため投票価値に差が生じる問題。二つの弁護士グループは全国14の高裁・高裁支部に16件の訴訟を起こし、「違憲」が1件、「違憲状態」が8件、「合憲」は7件だった。(加藤益丈)
「違憲」と「違憲状態」 最高裁は1票の不平等を巡る訴訟で(1)投票価値に著しい不平等が生じているか(2)不平等を是正する猶予期間(合理的期間)を過ぎたか—の2段階で違憲性を判断してきた。投票価値に著しい不平等が生じていれば「違憲状態」、さらに国会が合理的期間内に是正しなければ「違憲」と判断する。最高裁が違憲と判断したのは1972年と83年の衆院選。選挙が無効になることでの不都合を避けるため、選挙は有効とした。違憲状態と判断したのは衆院選5回と参院選3回。
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