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理系研究者8人に1人が雇い止め 無給で仕事、あっさり解雇の惨状

理化学研究所の雇い止めに抗議する労働組合の組合員ら=埼玉県和光市広沢2で2023年3月29日午後、山崎恵利花撮影

 大学や研究機関で長期間研究したのに10年を前に雇い止めされる――。学術団体が理系の研究者2465人にアンケート調査したところ、およそ8人に1人がこのような事態に直面していた。一定の期間を空けると通算契約期間がリセットされる「クーリング」を強いられた研究者が周囲にいたと証言する人も3割近くに上った。雇い止めやクーリングで研究現場での無期転換ルールが骨抜きにされている実態が浮き彫りになった。

 2013年に施行した改正労働契約法では、一般の労働者について有期雇用の通算契約年数が5年を超えると無期雇用への転換を申し込め、雇用主は拒否できないと定めている。研究者については、研究活動が長期に及ぶため、5年ではなく特例で10年に設定され、23年4月に節目の10年を迎えた。

 アンケート調査は、日本神経科学学会将来計画委員会と日本学術会議基礎医学委員会神経科学分科会などが合同で今年9月に実施。日本脳科学関連学会連合や生物科学学会連合、日本地球惑星科学連合などが協力し、大学や研究機関で働く教員や研究員、学生らが回答した。

 まず改正労契法が研究者の雇用環境に与えた影響を調査した。「悪い方向に影響を受けた」と答えたのは55・7%に達し、「特に影響を受けていない」(34%)、「良い方向に影響を受けた」(3・3%)を上回った。

 本人もしくは周囲に雇い止めされる予定の人がいるか尋ねたところ、約44%が「いる」と回答。「周囲にいる」と答えたのは31・6%で、雇い止めされる本人は12・3%に上った。「いない」か「分からない」は53・3%だった。

 この44%の人に雇い止めされる大学や研究機関の名前を聞いた。最も多かったのが、…

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