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六王は仲良しなんだと思う

本日は二話更新です。これは二話目なのでご注意を。

 子竜の事について相談する為、やってきた魔界南部の竜の山脈。

 一面に岩肌がのぞき、大きな岩山も連なるように並んでいる……ある意味一番最初に想像していた魔界のイメージにピッタリかもしれない。


「……アリス、一つだけ聞く」

「なんすか?」

「……転移魔法とか、無理だったの?」

「いや、全然。転移魔法もありますし、飛行魔法とかも使えますし、ぶっちゃけ放り投げなくても抱えて走った方が早かったです……でも、面白そうだったんで、ノリです――痛いっ!?」


 ここまで連れて来てくれた事には感謝している。けど、やっぱり他の方法あったんじゃねぇか!?

 俺が空中に放り出されて叫ぶのを楽しんでいたと、悪びれもせずに告げるアリスをぶん殴る。


「……お前、本当に……」

「いや~カイトさんの悲鳴は中々素敵でした。新たな趣向に目覚めそ……あれ? なんだか寒気が……」


 アリスがそう呟いた瞬間、俺達の進行方向に巨大な氷柱が現れる。

 そしてそれが砕け氷の欠片が花びらのように美しく舞う中、完全に座った目でアイシスさんが現れた。


「……」

「あ、あれ……あ、ああ、アイシスさんじゃないっすか……」

「……死ね」

「弁明の余地すらなしっ!? ちょ、アイシスさん!? ぎにゃあぁぁぁぁ!?」

「……カイトを虐める……ゴミ……殺す」

「ひぎゃあぁぁぁ!? ちょっ、まっ!? アブソリュート・ゼロはらめぇぇぇ!?」


 アイシスさんによって半分氷漬けにされながらアリスは空高々と吹き飛ばされ、アイシスさんはアリスを追って飛びあがる。

 そして視界の先の岩山が……次々氷山に変わっていく。


『なんじゃ? 騒がしいのぅ……』

「っ!? マグナウェルさん!?」


 目の前で繰り広げられる人知を超えた光景……いや、正しくは逃げてるアリスも、追ってるアイシスさんも早すぎて見えないんだけど……ともかく茫然としていると、地響きと共に巨大な顔が山の間から現れた。

 マグナウェルさんのサイズは頭で理解してても、やっぱり出てこられると驚愕する。


『うん? おぉ、ミヤマカイトか! よく来たな』

「あ、はい。ってうぉっ!?」


 俺の姿を見つけたマグナウェルさんは、少し嬉しそうな声を上げて一歩踏み出す。

 ここで重要なのは、以前会った時と違い……今の俺の隣には、リリウッドさんがいない。つまり障壁等が無い。   

 マグナウェルさんが一歩踏み出した事による地震と、岩山に阻まれていくらか弱くなっているが風圧で尻餅をついてしまう。


『っと、すまん……』

「……カイトを……虐めるな」

『なっ!? 待たんかアイシス!? いきなり何を――ぬぉっ!?』


 俺が尻餅をついた瞬間、先程までアリスを追っていた筈のアイシスさんが現れ、次の瞬間マグナウェルさんの常識外れな巨体が宙を舞った。

 どうやら俺が尻餅をついた事で、マグナウェルさんが俺を虐めていると勘違いしたらしいけど……容赦なしである。

 というか、アイシスさん、あんなでかいマグナウェルさんを吹っ飛ばせるの!? さ、流石六王……


 そしてマグナウェルさんが落下し、まるでミサイルでも落ちたかのような土煙が舞い上がる。

 当然凄まじい地震と風圧が襲いかかってくる筈だが、いつの間にか俺の周囲には青色の薄い膜が張られており、衝撃を消してくれていた。

 アイシスさんが張ってくれたであろうその障壁からは、アイシスさんが本当に俺を心配して守ろうとしてくれてるのが伝わってきて、不謹慎だか少し嬉しかった。


『アイシス……貴様……喧嘩を売っておるのなら、買うぞ』

「……黙れ……トカゲ……カイトを……虐めるな」

「あぁ、もうっ!? さっきから黙ってたら極大魔法ばかり!! 私にSMプレイしていいのはカイトさんだけっすからね!!」


 明らかに険悪な雰囲気と共にマグナウェルさんが起き上がり、直後に氷山が一つ粉々に砕けてアリスが空中に浮かびあがる。

 あれ? コレなんかヤバくない? なんか怪獣大戦争が始まりそうなんだけど……


 とてつもない魔力がぶつかり合い、空気が震える。

 このままじゃ、周辺一帯が消し飛びそうだと考えた俺は、何とか六王三体を止めようと口を開く。


「ちょっと、皆さん……落ち着いて……」

「面白そうな事してるじゃねぇか! 俺も混ぜやがれ!!」

「どっから湧いて出た戦闘狂!?」


 皆を止めようとする俺を嘲笑うかのように、どこからともなく火柱が上がりメギドさんが姿を現す。

 あ、だめだこれ。収拾つかない……


「……お前達……カイトを虐めるなら……許さない」

『先程から訳の分からん事を……じゃが、ヤルというなら応じてやろうぞ!』

「私にも我慢の限界ってものがありましてね……ぶっちゃけ『原因は私』ですけど、この際気にしない事にします!」

「事情は良くわかんねぇが、最高の状況だ! 全員纏めて俺が相手になってやる!!」


 六王四体が一堂に集まり、今、まさに天災と呼べる戦いが始まろうとしていた。

 現実逃避したくなってきた……もう完全に止まらない……特にメギドさんが止まってくれそうにない。

 確か、マジックボックスの中にお茶があったよなぁ……それ飲んでようかなぁ……




















 六王達による怪獣大戦争呼べる規模の戦い……それは、開始数秒であっけなく終了した。

 現在俺の前には、アイシスさん、メギドさん、アリス、マグナウェルさんがボロボロの状態でいて、その前で腕を組んで仁王立ちしているクロが居た。


「もぅっ!? 物凄い魔力感じて来てみたら! アイシスもシャルティアもメギドもマグナウェルも何やってんの!! ボクが来なかったら、この辺り全部消し飛んでたでしょ!!」

「……ごめんなさい……」

「……申し訳ねぇっす」

「……悪ぃ」

『……すまん』


 そう、天地を揺るがす四体の戦いは、突如現れたクロの手によって瞬く間に終結した……正しくは、クロが全員ぶっ飛ばした。

 そのおかげで周辺が更地になったりする事はなく、そもそもアイシスさんが現れた時点で……俺を残して周辺の生物は逃げ去っていたので、生物的被害もない。

 しかしクロは怒った様子で、説教を始めようとしていたが……そこで俺が口を挟む。


「待って、クロ」

「え?」

「アイシスさんは、俺の事を心配して、俺の為に怒ってくれたんだ……だから、その、あまり責めないであげて欲しい」

「……カイト」


 売り言葉に買い言葉で喧嘩に発展したとはいえ、アイシスさんはそもそも俺がアリスに虐められたと思って怒ってくれた。

 マグナウェルさんも、どちらかというと巻き込まれたような形だし、そちらもあまり責めないでほしいと頼んでおいた。


「……あの~カイトさん。私は?」

「アリスとメギドさんに関しては、思いっきり叱っといて欲しい」

「うん。分かった説教して……『躾とく』」

「ちょっ!? カイトさん!?」

「待てっ、カイト! 俺が悪かった! それだけは……」


 アリスはそもそもの発端だし、メギドさんに至っては喧嘩したくて現れたので庇うつもりはない。

 クロは俺の言葉に頷き、アリスとメギドさんの首根っこを掴んで引きずっていった。


『……あの、クロムエイナ? ひび割れた大地とか、凍りついた岩山は……』

「ごめん、直しておいて」

『……はぃ』


 クロと同じタイミングで現れ、今まで黙っていたリリウッドさんは……ガックリと肩を落としながら、アイシスさん達が壊した岩山を直し始めた。


 拝啓、母さん、父さん――アリスのおふざけが原因で、危うく六王同士の喧嘩が始まる所だった。まぁそれはクロが来てくれたおかげで収まった訳だけど……まぁ、しかし、喧嘩したりなんだり、互いに遠慮なしって感じがするし、なんだかんだで――六王は仲良しなんだと思う。

 



六王大集合。

六王は皆仲良しなので、互いに遠慮なく喧嘩したりする事も度々あります。


冥王、死王、戦王、竜王、幻王「後片付けよろしく!」

界王「全員死ねっ!!」


その都度……直してるのはリリウッド……

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