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スタッフが語る「大河ドラマが生まれた日」
小澤友香(持ち道具)

小澤友香さん

持ち道具の仕事

持ち道具は役者さんが身につけるものや、持ち物を準備して管理する仕事です。帽子、眼鏡、カバン、靴をはじめ、手帳や万年筆、時計などの小物に至るまで、扱うアイテムは多岐にわたります。他局では履物もすべて担当していますが、NHKでは靴だけは別の会社が扱っており、私たち持ち道具は現場での管理のみを担当しています。

下駄箱

台本からキャラクターを想像

携わる作品が決まって最初にするのは台本を読むこと。読みながら自分のなかで役のイメージを膨らませていきます。配役が決まっている場合は、具体的に「こういう持ち道具を用意するといいかもしれない」と想定していくことが多いですね。配役が決まっていない場合は、ふだんの読書と同じで「主役は誰になるだろう」などと考えながら、漠然とキャラクターを想像していきます。

小道具

「衣装合わせ」で予定変更も

スタッフ全員が番組に対するイメージを統一させる「美術発注」の前に、監督と大まかな打合せをすることが多いですね。その時、監督のやりたいことをうかがって、「衣装合わせ」用に物を準備していきます。
「衣装合わせ」では、監督だけでなく俳優さんからも意見が出されます。両方の言うことが必ずしも同じとは限りませんから、「監督は眼鏡は要らないと言っていたけれど、この俳優さんはかけたいと言いそうだな」などと想像の範囲で物を用意している場合もあり、ある程度は急な依頼にも対応ができます。想定外でその場で用意できていないものについては、できる範囲で対応できるよう努力します。

衣装合わせ

最も苦労したのは腕時計

今回は男性出演者が多く、本当にたくさんの腕時計を用意することになりました。どんな腕時計でも良いということではなく、時代考証が関わってくるため、手持ちのものでは間にあわず、6、7本は新たに購入することに。アンティークショップをまわったり、ネットで探したりして何とか必要な本数を揃えることができました。

腕時計

佐田啓二さんの腕時計

腕時計と言えば、中井貴一さんがお父様の佐田啓二さんが実際に使われていた時計をお持ちくださり、中村七之助さんが身につけることになりました。撮影当日に中井さんご自身が「使ってほしい」と持って来られたので、私自身はもちろんプロデューサーや監督にとってもサプライズでした。貴重な思い出の品を使わせていただけるということで、ありがたくお預かりしました。

佐田啓二さんが実際に使われていた時計

スタッフらしさを演出

また今回はドラマ撮影の舞台裏を描くということで、テレビスタッフらしさが感じられるよう、ガチ袋(釘や金槌など、仕事に必要な道具を入れて腰からぶら下げておく袋のこと)をたくさん用意しました。美術スタッフを演じる役者さんが多かったのですが、ガチ袋を付けていないと普通のオジさんのように見えてしまうんです。現代ではベルトを通して身につけている人が多いですが、当時はロープで腰からぶら下げていたようなので再現しています。新品を用意すると使い込んだ感じを出すための汚しが必要ですが、ちょうど会社に在庫があったので使用しました。

ガチ袋

じっくりと取り組めた作品

これまで様々なタイプのドラマを担当してきましたが、『大河ドラマが生まれた日』の登場人物は男性がメインであることと、その多くがテレビマンだという点で、持ち道具についてもオーソドックスなものを揃えることになりました。
この作品の前に担当していた特集ドラマ『アイドル』では女性キャラクターが多く、ステージ衣装など奇抜なふん装も多かったので、実際にお芝居で使った3倍ほどの持ち道具を集めたと思います。かなりのアイテムを集めなくてはならず大変でしたが、その分やりがいもありました。個人的にはぶっ飛んだ感じのビジュアルの作品が好きなのですが、そちらはとても手がかかるので、『大河ドラマが生まれた日』のようにじっくりと取り組める作品も貴重です。

撮影現場の様子