坂爪圭吾に電話かけまくり放題デイを実施したらものすごい楽しかったので、未来永劫開催する。昨夜は五億人から電話が来た。性欲を持て余して女風に通い出した女性や、旦那の暴力から逃げ出して一人暮らしをはじめた女性や、一生を身内の介護に費やしてようやく自分のことを考える時間を得た女性や、明日仕事をやめることにした女性など、さまざまな女性から電話が来て「俺ってモテモテだな」と感激した。いろいろな人生に触れると体が軽くなる。無骨な俺も意外と人の役に立てるんだなと、まんざらではない気持ちになる。

女性には優しいが男性には厳しい。ある政治団体の勧誘を受けた私は「より良い国民になるってことは、よりよい奴隷になるってことなんだよ」とぶった斬った。いいかお前ら、耳をかっぽじってよく聞け。教祖を求めるな。お前が教祖になれ。誰か一人を教祖に置いて、そいつを崇めるように布教をするのは、奴隷を増やすことと同じなんだよ。俺が服従しているものにお前も服従しろと言っていることと同じなんだよ。それを奴隷根性と呼ぶんだよ。そう言う奴に限って、自分が服従しているものに服従しない人間を見ると非国民だと罵倒する。自由な人間を罵倒して、自由を殺す。弱い奴が、さらに弱い奴を叩く。お前がトップになれ。お前が俺を魅了しろ。俺は惚れた者のためにしか動けないんだよ。誰かの言葉じゃないお前の言葉を語れよ。そうじゃないと、同じことの繰り返しなんだよ。トップを求めるな。お前がトップになれ。英雄を求めるな。お前が英雄になれ。

男性には厳しいが女性にも厳しい。ヘラヘラ笑いながら電話をしてきた女性に「なんでそんなにヘラヘラしているんだ」と言ったら、途端に泣き出して本当はつらいんですと白状した。やりたいことがわからない。楽しいことがわからない。自分はナチュラルボーンの迷子なのだと泣き出した。明るくいないと嫌われる。元気でいないと嫌われる。笑顔を作り続けた結果、自分の心を見失う。自分の嫌いをごまかすと、自分の好きもわからなくなる。喜怒哀楽の喜と楽だけを歓迎して、怒と哀を雑に扱うと、喜と楽も結局わからなくなる。楽しいことがわからないお前に必要なことは、真っ当に怒ることであり、真っ当に哀しむことだ。しっかり怒り、しっかり哀しんだら、しっかり楽しいことも出てくる。しっかり喜びも出てくる。

自分のことを「遺産の女です」と名乗る女性から電話が来た。莫大な遺産を引き継ぎ、働かなくてもいいだけの金が手元にあるものの、何もしていないのは不安だから仕事をしている女性である。遺産の女は「意を決して、仕事をやめることにしました」と言った。そして「金のある無職になります」と高らかに宣言した。つきましては、高知県にある水族館に行きたいと思っているのでドライバー役をお願いします、お金に糸目はつけませんと言った。正しい私の使い方である。遺産の女（最悪な呼び名だが、親しみを込めてこう呼び続けたい）は人生全部アドリブと言った。出たとこ勝負。後悔薄めの方を選ぶ。多少の後悔はしかたがない。後悔薄めの方を選ぶことにしましたと言った。私は「素晴らしいなあ」と思った。何かを決意した人間から放たれる独特の気に触れると、触れたこちらも元気になる。遺産の女は「決着をつけてきます」と、仕事をやめる決意を語った。

よりよい国民はよりよい奴隷。よりよい職員はよりよい奴隷。よりよい生徒はよりよい奴隷。よりよい人間はよりよい奴隷。魂の成長なんて言葉に騙されるな。都合よく奴隷化させられているだけかもしれないよ。役に立たなくてもいいんだよ。こどもを見ろ。無駄のかたまりじゃないか。こどもはお菓子を欲しがる。あの手この手でお菓子を欲しがる。お菓子を買ってもらえなくても「お菓子を買ってもらえないのは自分に価値がないからだ」とはならない。次はもっとうまくやろうと、そこで頭脳を働かせる。そこで知能を獲得する。褒められるためではなく、認められるためではなく、愛されるためではなく、許されるためではなく、欲しいものを真っ直ぐ取りに行く力を養う。大事なことは素直になることである。みっともなくてもいいから、自分の欲望に素直になることである。喜怒哀楽のいいとこ取りをすると、歪む。ズレる。自分がわからなくなる。全部やろう。人間の全部。喜怒哀楽の全部の中に、人生がある。