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【産後ケア】に関する関係者による意見交換会に参加しました

【産後ケア】に関する関係者による意見交換会に参加しました

出産後、残念なことに、自ら命を断つ母親がいます。新しい命を産んだ母親の死は防がなければなりません。
産後、心身ともに疲れや悩みを抱えて、赤ちゃんを育てることに自信を無くしている母親がいます。
その母親の心と体の健康を、生きるチカラを、身近な専門家や身近な地域社会で支えることが必要です。

昨年度末の3月に、東京都世田谷区に所在する【国立成育医療研究センター】で「産後ケアに関する意見交換会」が開催され、こども家庭庁参与として参加しました。会議終了後は、 濵口欣也日本医師会常任理事、園田正樹東京大学医学部産婦人科学教室、北澤潤国立成育医療研究センター企画戦略局長、木庭愛こども家庭庁成育局母子保健課長と語り合い、今後の多様な多職種連携で、「産後ケア」の充実を図りたいと心合わせをしました。

【産後ケア事業】とは、母子保健法においては、「出産後1年以内の女性及び乳児の心身の状態に応じた保健指導、療養に伴う世話又は育児に関する指導、相談その他の援助」を産後ケアとしています。
これは、市町村が利用条件を満たす母子に対して病院、助産所等への入所、通院、自宅訪問のいずれかの形態で助産師を中心とした専門的ケアを提供する事業です。
「産後ケア事業」は、母子保健法の一部を改正する法律(令和元年法律第69号)により、市町村の努力義務として令和3(2021)年4月1日に施行されているのです。

出産して退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を行う産後ケア事業については、誰もがより安心・安全な子育て環境を整えるため、法定化により市町村の努力義務となった当事業の適切な全国展開を図る必要があります。
現在開会中の国会で審議されている『子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案』では、具体的な子育て支援施策として「産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付け、国、都道府県、市町村の役割を明確化し、計画的な提供体制の整備を行う。」という項目があります。
具体的には、産後うつのリスクの高い産婦などを受け入れた施設において、利用者への適切な支援として、たとえば①利用者へのアセスメント、②アセスメント結果を踏まえたケア、③市町村との情報共有や、必要な支援を実施するための連携などを実施できるよう、こうした施設に対する加算を創設することとされています。
そこで、妊産婦のメンタルヘルスに対応するため、都道府県の拠点病院を中核として、地域の精神科医療機関等と、精神保健福祉センター、保健所、市町村(母子保健担当部局・こども家庭センターなど)、産婦健診・産後ケア事業等の母子保健事業の実施機関が連携するためのネットワーク体制の構築を図ることが必要です。

とはいえ、令和4(2022)年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「産後ケア事業及び産婦健康診査事業等の実施に関する調査研究事業」によると、産後ケアをめぐる現行の課題として、委託側の自治体にとっては委託先確保、精神疾患を抱えた母親への対応、広域連携における調整等に困難があり、国や都道府県には、安全性とケアの質を担保するための基準の制定や事業実施機関との連携のための整備が必要です。
また、受託側には、安全対策が不十分、利用者が少ない、経営・人材確保、自治体との連携等の課題があるとされています。
そこで、今後、地域格差のないユニバーサルな事業を目指していることから、産後うつ病のハイリスクなど、特に支援を必要とする母とこどもの把握、具体的なケア提供体制、継続支援の方法などについての対応が不可欠であることが、令和3年日本助産師会「産後ケアに関する調査実施報告」・令和5年産前産後ケア・子育て支援学会「産後ケア事業全国調査報告書」・ 令和5年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「産後ケア事業の体制整備に関する調査研究事業」などで指摘されています。

この国立成育医療研究センターは「女性の健康ナショナルセンター」として、シンクタンク機能臨床開発・支援機能を持っています。
そこで、「産後ケアセンター機能」についても立ち上げ準備をはかることとしており、3~4年後の完成を目指して、このたび、まずは主として下記のメンバーによる意見交換会が、会場参加とオンライン参加のハイブリッド会議で開催されたのです。
【参加者の敬称略:五十音順】
秋山 千枝子 あきやま子どもクリニック      石山 智子 世田谷区 児童相談所支援調整担当係長
伊藤 隆一 日本小児科医会 会長          木田 良徳 世田谷区 子ども・若者部児童相談支援課長
鈴木 俊治 日本産婦人科医会 常務理事       園田 正樹 東京大学医学部 産婦人科学教室
高田 昌代 日本助産師会 会長           濵口 欣也 日本医師会 常任理事
林 謙治 日本産前産後ケア・子育て支援学会 理事長 堀口 寿広 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
松本 幸夫 世田谷区 子ども・若者部長       渡邊 香 日本産前産後ケア・子育て支援学会 総務担当理事
渡邉 博幸 日本周産期メンタルヘルス学会 理事   

国立成育医療研究センターからは、笠原群生(病院長)北澤潤(企画戦略局長)竹原健二(政策科学研究部長)三井真理(周産期・母性診療センター診療部長)和田誠司(周産期・母性診療センター長)和田友香(新生児科 医長)嶋田せつ子(看護部看護部長)井手美佳(看護部看護師長)はじめとする関係メンバーが参加し、こども家庭庁からは、私の他に木庭愛(成育局母子保健課長)内田愛子(成育局母子保健課指導専門官)がオブザーバーとして参加しました。

この意見交換会では、まず、私が三鷹市長在任中に、三鷹市初の「産後ケア」を開始してくださり、現在まで拡充をしてきたくださった、産後ケアについて各団体との連携を進めてこられた小児科医の秋山千枝子先生が、産後ケアについて、ナショナルセンターを設置して、条件整備をしていくことの必要性を発言されました。
そして、国立成育医療研究センターからは、令和6(2024)年度は、国立成育医療研究センターを事務局として、「産後ケア事業シンクタンク機能活動計画」に基づいた調査研究が進められること、こども家庭庁の予算を活用した事業についての説明がありました。
具体的には、産後ケアに関する、①知見などの収集、②評価・分析及び事故報告の分析・検証のための体制構築、③マニュアル・提言などの作成、④人材育成、⑤取組支援、⑥質の担保の仕組み、⑦情報発信について、これら活動を行うにあたり、これまでの議論で課題提示されているケアの質や、安全面、経営面等について、定期的に評価・検討することとされています。
そのために、それぞれの課題ごとに有識者を交えた会議体(委員会)を設置・開催し、国立成育医療研究センターがその事務局を担いつつ、展開していくことになります。
そして、木庭愛こども家庭庁母子保健課長は、こども家庭庁が進める産後ケア支援の予算や事業について説明しました。
その後、各参加者から、それぞれの問題意識に基づき、産後ケアに関する意見交換会を今後も継続して、より良い制度を作っていくことの意義や課題についての発言がありました。

私は、三鷹市長在任中に母子ともに元気に過ごしていただくために開始した産後ケアについては大変に有意義であり、それを全国の地域格差なく推進していく必要性、そのための多職種連携の必要性を提起し、だからこそ国立成育医療研究センターが文字通り「産後ケアセンター」として機能していただくことへの期待を発言しました。
意見交換会の前に初対面であった笠原群生病院長は、こどもの腹部の臓器移植が専門でいらっしゃるとのことで、患者の保護者からプレゼントされたという「K」のイニシャルが腹部にある白衣の刺繡が素敵な白衣を着られていて、「こどもたちの健康な育ちのためには、お母さんの健康が不可欠であることから「産後ケア」の取組みを今後重点的に推進していきます」と語り、心強く思いました。
なお、4月7日にNHKスペシャルで放映された『Last Days 坂本龍一最期の日々』で、笠原院長は、ご遺族のご了解のもと、坂本さんの医療に携わった一人としてインタビューに答えていらっしゃいました。多種の癌と闘った坂本さんに寄り添っていらしたことをこの番組で知りました。
笠原院長に伺いましたら、「大切な友人」でいらしたそうです。

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