公開投稿
2023.08.18 16:22
画像生成AIの間接的な利用に関して考えていること(※今回の内容は画像の投稿ではありません)
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最近の画像生成AIを巡る話題を見ていて少々思う所がありましたので、
絵のお仕事で報酬を頂いている身としての視点から、現在の自分のスタンスと考え方を書き記しておこうと思いました。
<前置き>
基本的に現在主流となっている無断学習を元にした生成AIには否定のスタンスを取っていますが、そこから更に私の個人的な認識を書いた内容になります。
また、どちらかというと絵のお仕事で報酬を頂いてきた立場を強く意識したお話であり、その上でもおそらく多くの方にとって共感しにくい内容の筈ですので、
興味のある方だけ目を通して頂ければと思います。
尚、話の前提として全てのAI技術について反対している訳ではありません。
そのあたりの私がそもそも何を問題点と考えているかについてや、生成AIについての前提知識については今回の記事では扱いません。
後者については、事前にご自身で関連資料に目を通して頂いた方が読み易いかもしれません。
(必要があれば自身の備忘録という意味でも追加で記事を書こうとは思っています)
<本題>
今回は主に間接的な利用――例えば素材にするのではなく参考にする使い方等――に絞って触れていきます。
最近になって、そういった形であれば問題ないというお話をよく見るようになりましたが、
これに関して、私は現状では間接的な利用に関してもNGという立場です。
理由については以下の通りです。
例えば流行りの絵を参考に自身の絵柄を変えようとした時、これまでのように相手が人であれば、
参考にした方々の存在に望む望まないに関わらず確実に触れる事になります。
個人差はあるかもしれませんが、絵を描く方ならそういう過程を経て誰かの名前を強く意識したり、そこから覚えるケースもあったと思います。
ですが、今主流になってる無断学習のデータセットを用いた生成AIによる生成物を同じような目的で利用するのが当たり前になると、
そういった個々の名前を意識する機会は確実に減ります。
リスペクトのある無し以前に、それは学習元になった本人(あるいは複数の作家)にとっては知名度の上昇や存在の意識という点でも損失になる筈です。
どれだけ考えても、それがこれまでの誰かの作品を普通に参考にする事と変わらないとは考えられませんでした。
直接的な利用と比べれば一見体裁は整っているとしても、お仕事として創作に携わる方々の間でその行為が沢山積み重なった時、
その先で良い影響があるとは思えないのです。
また、生成AIを通す事で著作権が曖昧になるから背景や塗りの時短の素材として使い易くなるという考え方も、
前提として既存の創作物が土台になってる事を考えると、長期的に見た創作の環境や作品の価値の保護という観点でどうしても抵抗があります。
個性の獲得が重視される価値観の中、上達の為に自分の引き出しに無い絵柄や技法を参考にするという過程で、
そこに誰かの存在がある事を煩わしく感じる事も人によってはあるのかもしれません。
膨大な制作量と報酬との兼ね合いの中で、生活や時間の短縮の為に使えるものは何でも使いたいという気持ちも正直に言えば分かります。
しかし、創作に携わる自分以外の誰かとその作品を蔑ろにする価値観を肯定する事は、自身が同じ事をされても反論できないという事でもあります。
自身の制作物に責任が問われるお仕事の場であれば、猶更慎重にならなければならないのではないかと、私は思います。
学習元の開示、学習の際の還元、それを望む人のみからデータセットを作る仕組み、また生成AIの利用の明記等が適切に行われる等、
環境が整備されているのであればそういった懸念も薄くなるでしょうし、それが今抱えている問題を解決する為の一つの指針だとは思います。
しかし、現状ではまだその段階には至っていないはずです。
<終わりに>
肉眼での判別が難しい環境や精度が高いツールも稀に誤検知がある事を考えると現実として実践し続ける事は難しく、
自身が制作で使用するか否か止まりの話である事は否定できません。
また、私が潔癖症すぎるのかもしれませんし、杞憂なのかもしれません。
絵に携わる方が今敢えて生成AIを利用するという事であれば、何か考えあっての事だとは思います。
その事を考えると私にはこの記事で書いた内容を他人に強いる事は出来ませんが、
この記事が現状の環境が抱えている問題を考える一助になれば幸いです。
また願わくば、様々な話題が飛び交う中で、本来は何が問題視されているのか、
どういう過程があって今があるのかについても改めて知る切欠になれれば嬉しいです。
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