「嫌われちゃうのは、しょうがないかも…」動物園の”獣医さん”の切なすぎる本音
ちょっと短めのおみ足にまるいボディ。唯一無二のフォルムを持つ、神戸市立王子動物園のメスのジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」。そのかわいい姿と優雅な所作から、親しみを込めて、“神戸のお嬢様”とも呼ばれています。 【写真】パンダのタンタンと過ごした、すばらしい日々 2021年に心臓疾患が見つかり、治療を続けていたタンタンですが、2024年3月31日に虹の橋を渡りました。当時、国内最高齢の28歳でした。いつでも笑顔をくれた神戸のお嬢様・タンタンをしのび、在りし日の日常を振り返りながらお伝えします。
嫌われちゃうのは、しょうがないかも
お嬢様の苦手な獣医師さんが紹介されたのは、連載65回目(https://gendai.media/articles/-/92498)のこと。「獣医が部屋に入ってすぐは、警戒したような目つきで見ますね。でも、毎回敵視しているわけじゃないんですよ」と話すのは、飼育員の梅元良次さん。 採血や検査を担当する獣医師さんは、菅野拓(かんのひろき)さん。じつは梅元さんの同級生で、仲が良いのだそうです。「週のうちに何度も採血や検査をしますからね、嫌われちゃうのは、しょうがないかもしれませんね。でも、それが獣医の仕事ですから」(梅元さん) 時間に余裕があるときは、菅野さんからリンゴをあげてもらい、お互いに慣れてもらうよう気を配っているのだとか。お嬢様のためなんですよと言っても、イヤなものはイヤなんですよね。いつか、菅野さんの真心がお嬢様に伝わりますように……。
トレーニングの優先事項
前あしを置くバーの扱いに慣れすぎた様子が紹介されたのもこの回でした。公式ツイッターの画像では、前あしがオリの外に出すぎています。「長年にわたりトレーニングを行ってきたタンタンであっても、一度、楽なやり方を覚えてしまうと、次からも楽をしようとします。今までできてきたことを、書き換えてしまうんですね」と、梅元さん。 慣れが出過ぎたときは、どうやって元に戻すのでしょうか。「ハズバンダリートレーニングと同じです。もう一度根気よく教えていき、できる限り動作にメリハリを付けるようにしています」 さらに「以前なら100パーセント直していましたけど、今はそれをする余裕がありません。タンタンの機嫌を損ねないことを優先しています」と話す梅元さん。心臓疾患を抱えるタンタンにとって、定期的に健診を受けることが、このときの最優先事項でした。 一方で、やる気満々でトレーニングルームに入ってくるタンタンの様子もツイートされています。タンタンの気分は、入ってきたときの雰囲気や表情でわかるのだとか。「機嫌が悪そうだなと思ったら、リンゴをあげてみます。それで食べない場合は、もうダメですね」リンゴを食べた場合は、多少やる気がなくても、気を紛らせながら続けるのだそうです。 「無理にやらせると、タンタンがイライラしてしまって良くないんです。お互いにケガをしないことが一番大切なので」と話す梅元さん。安全にハズバンダリートレーニングを行うには、タンタンのやる気が大切なんですね。