首都圏情報ネタドリ!
- 2022年10月14日
親が離婚…子どもの気持ち 影響は?青木さやかさんの体験談も
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親の離婚を経験する子どもは毎年20万人に上ります。中には「別れたあともいがみ合う親の姿を見るのがつらい」など、子どもの心理面に影響があるケースも。両親の離婚に直面するとき、その子どもたちはどういった心境を抱えるのか。離婚後の子育て、家族のありようを“子どもたちの目線”から考えます。(2022年9月放送「ネタドリ!」より)
(首都圏局/ディレクター 岩井信行)
「面会交流なし」父子家庭で約3割 母子家庭で4割以上
少子化の影響もあり全体としては減少傾向にあるものの、毎年、新たにおよそ20万人の子どもが離婚を経験しています。
そうした子どもが離れて暮らす親に会ったり、電話や手紙などの方法でやりとりをしたりする「面会交流」。行うケース、行わないケースがありますが、別居する親との交流をしたことがない子どもは、父子家庭でおよそ3割、母子家庭では4割以上にのぼります。
交流を行わない理由として、
◯別居親が求めてこない
◯子どもが会いたがらない
◯子どもが精神的・身体的に不安定になる
◯別居親に暴力などの問題行動がある
など、さまざまです。
離婚で親と離れて暮らすことになったその時、子どもたちはどんな思いを抱くのか。その思いを知ってほしいと当事者の子どもたちが取材に応じてくれました。
“お父さんと会っちゃダメ”と言われて
小学6年生のユミさん(仮名)。半年前に両親が離婚し、母親の香さん(仮名)とふたりで暮らしています。
休みのたびによく出かけていた家族。転機が訪れたのは3年前のことでした。香さんと元夫は、価値観の違いから口論が続き、別居することになったのです。
娘が父親に会う機会はたびたびありましたが、離婚に向けた協議が進む中、香さんはそれを受け入れるのが難しくなっていったといいます。
香さん
「夫婦間で緊張状態が高くなるとこっちも感情的になって。あんなに争っている相手なのに、自分のかわいい子どもが会いに行くのが嫌だな、みたいな時もありました」
ユミさんは、別居が始まった当時、香さんから言われた言葉を忘れることができません。
ユミさん
「お母さんが、お父さんとは会っちゃダメとか、お父さんのことは話したらダメとか。離婚しても、お父さんにもお母さんにも好きなときに会えると思ったからびっくりした」
母の前では、父のことを口にしにくくなったというユミさん。この日、初めてその時の思いを打ち明けました。
ユミさん
お父さんのこと話したら、ちょっと怖いな。怒ったりしたら怖いな。
香さん
お父さんのこと話したら、怖いお母さんだとしたら、ユミはどう思う?
ユミさん
嫌だ。気軽に話せなくなる。
香さん
「ああ、親とか大人として『会っちゃいけない』と言うのって、すごくいけないこと言っちゃったんだなと」
NPOに寄せられる子どもたちの悲痛な声
離婚後の親との関係に悩む子どもたちを支援しているNPOには、連日、相談が寄せられています。
NPO法人ウィーズ 社会福祉士 岸朋美さん
「話を聞いてほしいという形で、LINEで相談をくれる子がすごく多い」
13歳・女子(父親と別居)
「父に会いたいと思って泣き出してしまいます。母はとてもつらそうな顔をするので、父の話はもうできません」
14歳・女子(父親と別居)
「学校に行けない理由は、昨年の夏に両親が離婚したのが大きなダメージです。自分の腕をかむという自傷行為もしてしまうようになりました」
子どもから寄せられる相談は月2000件以上に上っています。
岸朋美さん
「すごくいい家族だったものがある日、壊れてしまう。それを受け入れきれないショックや、不安な気持ちはすごく大きいんじゃないかと思います」
突然 母がいなくなり…自分を責めた
別居する親に会えなかったことを、長い間、心の傷として抱え続けている人もいます。
大学生の翔さん、21歳です。両親の離婚後、父親に引き取られ、妹と3人で暮らしてきました。
翔さん(21歳)
今は一人で暮らしをしている翔さん。病気で目が不自由になった父の世話をするため、頻繁に実家に来ています。
母親がいなくなったのは、翔さんがまだ6才のときでした。
母親と赤ちゃんのころの翔さん
翔さん
「一緒にパンを作ったり、おやつを作ったりとか結構あった。急に母親がいなくなった、ぱっと消えた感じ」
なぜ母はいなくなったのか。ずっと知りたいと思っていましたが、父の機嫌を損ねたくないと聞けなかった翔さん。次第に自分を責めるようになったといいます。
翔さん
「服を片付けなかったとか、布団をたたまなかったとかで、怒って出て行っちゃたんじゃないか、みたいな。場所もわかんないし、連絡先もわかんない。会いたかったし、電話もしたかった」
父の亮さんは、妻が家を出た理由を、まだ幼かった翔さんに理解させるのは難しかったといいます。
父・亮さん
「正直、どうしようと思いましたね。物心つくまではちょっと僕のほうで、と思っていた」
離婚から6年後、母親との再会を果たした翔さん。会えなかったのは、自分のせいではないと知りましたが、その間のしこりは今も消えないといいます。
翔さん
「いまは理解できるけど、説明してもらった方がよかった。『もう一緒に住めなくなっちゃうよ』って言ってから出ていってほしかった。自分が悪かったと考えることもなかったと思う」
子どもたちへの影響が長く続くことも
<スタジオトーク>
合原明子 キャスター「きょうは青木さやかさんと一緒にお伝えしていきます。青木さん、いかがでした?」
タレント 青木さやかさん
「私も、高校生の時に両親が離婚をしているんですけれど、だから翔さんの話はとても、当時の自分と重ねて見てたんです。親には親の思いがあるんですけど、やっぱりこちらとしては勝手な想像で、大切にされてないんじゃないかと思ってしまったというのあったので、よく分かるなと思いながら拝見していました」
合原 キャスター「ゲストもうお一方をご紹介します。親の離婚に悩む子どもたちを支援するNPOの代表、光本歩さんです。
子どもたちが声を上げられなかったり、親の気持ちが分からないまま過ごしたりすると、子どもにどういった影響があるんでしょうか」
NPO法人ウィーズ 理事長 光本歩さん
両親の離婚などに悩む子どもたちを支援
「翔さんのように、自分のせいでお父さん、お母さんが離婚してしまったと思ってしまうケースも少なくないです。あと、自分の家だけがおかしいというか、不思議な形なんじゃないかというふうに、孤独感を抱えたり、引きこもりや自傷行為につながってしまったりするケースもあります。
いずれも、必ずしも離れて暮らす親に会いたいという気持ちを抱いているというわけではないんですけれど、やはり親の争う姿を見たりして複雑な気持ちを抱えているというのが現状かなと思います。
その傷を癒やせずに20代、30代、40代になって、人を愛することとか、家族をもつということに恐怖心があるという声も、私たちのもとに届いています」
合原キャスター「子どもへの影響が、そのままにしておくと大きいということですけれど、青木さんは離婚後のご両親に対して、子どもの時どんなことを感じていました?」
青木さん
「私は母と暮らしました。父が出ていったんですけれど、なんか父に会いたくなるんですよね。でも、うちでは母の前では、父親の話ってなんかタブーみたいなところがあって、父に会いたいって言えなかったんですよね」
合原キャスター 「言われたわけではないんですか?お母さんからそう言われてはないけれど感じていた?」
青木さん
「言われたわけではないんですけど、母親と祖母が話している会話の中で、父の話はしない方がいいんだなって思い込んだということもありますね。父に会いたいと言えなかった。
当時は携帯電話がなかったので、気軽に連絡を取り合う手段はなかったんですけど、とはいえ、父の方から頑張れば会いに来れたり連絡はつけられたりするわけで、それがなかったので、ああ、大して大事にされてないんだなって、こっちが思ってしまったというのはありますね」
合原キャスター 「さみしさというか、不安な気持ちというか」
青木さん
「大切にされてないんだっていうのが重なったなという思いがありますね」
合原キャスター 「今のお話にもありましたけど、子どもは親や周りの様子をよく見ていて、自分の気持ちを我慢しちゃったりするところがあると思うんですけれど、光本さん、子どもにそういうことを強いないために、親はどうしたらいいとお考えですか?」
光本さん
「子どもって、本来やりたいことを自由に表現したり、反抗期がくれば親に少し汚い言葉を使ってしまったり、そういった子どもらしい子ども時代をそのまま過ごせるように配慮をしてあげるというのがすごく大事なことなんじゃないかなと思います。
その一部として、例えば離婚をした理由をしっかりと子どもに、子どもが分かる言葉で伝えてあげるとか。『しんどい』とか『本当は離婚してほしくない』とか『悲しい』『つらい』というような、子どもの負の感情をしっかりと受け止められるような経験を積むことで、子どもが新しい家族の形について納得感を得られるというのが、大事なことではないかと思います」
子どもの思いにどう応える?悩む親たちへの支援も
「離婚後の子育て」を支援する団体が開く懇親会。お父さんと離れて暮らすユミさん(仮名・11歳)と、母親の香さん(仮名)も参加しました。
代表
お子さんと離れて暮らすようになってから、土日とかって、最初のころどうでした?
別居する
父親
1人でいろいろ考えちゃうんで、どうしてもね。
離婚後、子どもと同居する親と、別居する親が互いの気持ちを知るため、話し合います。
子どもと会えるのは月1回、1時間なんで、ちょっと短いです。会ってすぐお別れ、みたいな。
会えないよりはいいかなと思ってます。
香さん
「同居親は、とにかく一緒にいるのが当たり前。忙しいとかそういう、同居ならではの苦労とか不満で頭がいっぱいになっちゃって、別居親への気持ちまで全然いかないんですけど、きょう聞いてて、やっぱり寂しいとか、週1回会いたいとか、そういう気持ちがあるんだなっていう、一緒に住んでない立場の気持ちを聞けたというのはすごいよかった」
オンラインでも、相談会を開いているこの支援団体。離婚後の子育ては、双方の親が意向を確認しながら、進めることが重要だといいます。
一般社団法人りむすび しばはし聡子代表
「自分の相手と同じ立場の他人の方から、いろいろ相談をしたり、話を聞いたりすることで、相互理解を深められるっていうきっかけになる。最終的に子どものためになると思う」
さらに、団体では、親同士の話し合いに第三者として立ち合い、相談にも乗っています。
香さんも、支援を受けた1人です。夫婦の関係が終われば、親同士の関係も絶たれると考えていましたが、別の選択肢もあることを教えられたといいます。
香さん
「えっ?離婚しても子育てについては、元夫婦同士で手を取り合っていいんだという、そんな方法があるんだって、非常に目からうろこで」
次第に娘と父親が会うことを前向きに捉えられるようになっていった香さん。ユミさんも、毎月お父さんに会えることを、楽しみにしています。
ユミさんが、あるものを見せてくれました。
もらったドリームキャッチャー。熱海で買った。
お父さんからもらったプレゼント。悪い夢を見ないようにしてくれるという、お守りです。
2学期が始まったばかりの8月下旬。ユミさんは父親と会うために近所のショッピングモールに向かいました。
待ち合わせたのは、ユミさんが好きなイタリア料理のお店でした。一緒に過ごした2時間。飼っているハムスターや旅行の話を楽しみました。
おかえり。お疲れ様、うれしそうじゃん。
楽しかった。今度、お父さんが旅行に行かないかって。
今度旅行、いつ?
年末に沖縄って。
年末に沖縄、いいな。
香さん
「数年前は考えられなかったですね。帰ってきた時の表情が、全然行きと違うんですよね。ニコニコっていうか、満面の笑みというか。今この状態で良かったなって思っています」
今では自由にお父さんに連絡をしたり、会ったりすることができるようになったユミさん。お母さんとの時間も、お父さんとの時間も、大切にしたいと思っています。
子どもに寄り添った面会交流のあり方は
<スタジオトーク>
青木さん
「よかったですね。お父さんの話をお母さんとできるってね。家で風通しがよくなるってすごく、いいことだなと思いましたし、やっぱり離婚した親同士だと当事者同士で感情的になるじゃないですか。だから、第三者に入っていただくというのは、ある時期は重要なことかなと思いますね」
合原キャスター 「青木さんのところは、どういうふうにされてるんですか」
青木さんは離婚を経験し中学生の娘を育てている
青木さん
「うちは娘と私が暮らしていますが、週に1回、父親のところに娘は泊まりに行っています」
合原キャスター 「どのように決めたんですか。いつごろ、どの段階で」
青木さん
「離婚する前に、相談していた弁護士の先生が、娘が父に会えるようにしておいた方がいいですよということと、父親の方に、例えば新しい家族ができた場合、娘と会わなくなるパターンがあって、そうすると子どもが傷つくということが大いにあるので、週に1回。『会いません』と娘が希望するまでは、会うという取り決めをしています」
合原キャスター「最初の段階で、取り決めをしていたということなんですね。支援としては、他にも子どもと別居した親が会う面会交流の時に、親同士が顔を合わせなくても済むように、子どもの受け渡しなどの支援も行われています。
光本さんのNPOでも、調停や裁判などの場所で決定した条件のもと、支援を行っているということです。親だけでは難しい場合には、こうした支援もあるということですね」
光本さん
「離婚の直後というのはやはり、親御さんたちも感情的で面会交流が難しいというケースがありますので、面会交流をやるというふうに両親間で決めたケースだとか、裁判所で決められたケースについては、両親間の調整をしたり、交流の見守りを行ったりしています。
親の支援というふうに見えるかもしれないんですけど、その中で私たちは、親に会いたい子が、親に会いたいという気持ちを言えたり、逆に会いたくないという気持ちを吐露できたり、そういうことを通じて、子どもが面会交流について制限や義務感を感じないように、それぞれの子どもに寄り添うことをしています。
離婚をしてもお父さんであること、お母さんであることは変えられないですし、子ども自身が、親を自分の目で見て、肌で感じるというような、判断する機会にもなっているかなと思います」
合原キャスター「こうした面会交流やその課題については、今、国の法制審議会でも議論されています。
審議会の委員でもある早稲田大学教授の棚村政行さんは、『面会交流について、これまでは事前に取り決めをしなくても、離婚ができた状況。今後は離婚前に取り決めを作ることを考慮すべき』としています。
合原キャスター「一方で、こんなデータもあります。法務省の調査では子どもが別居する親に『会いたくなかった』『あまり会いたくなかった』がおよそ3割。その理由の1つがDVだと指摘されています」
暴力を受け離婚…親の連携が困難なケースも
元夫と離婚した、さとみさん(仮名)です。元夫から暴力を受けたというさとみさんの訴えを受け、行政がさとみさんと子どもたちの保護を決めた証明書。
さとみさんが離婚を決意したのは、子どもたちにも暴力が及んだからだといいます。
さとみさん
「私よりも子どもたちに被害があったら、もうたまったもんじゃないと思った」
元夫が子どもとの面会を求めてきても、子どもたちは望んでおらず、元夫とは会っていません。
さとみさん
「子どもたちが求めてないというか、逆にいま会うとパニックを起こすというか。ようやく怖い思いから逃げられるんだ」
離婚を親だけの問題とせず、子どもの話に耳を傾けて
<スタジオトーク>
合原キャスター「国も面会交流に応じるかについて、『相手から身体的・精神的暴力等の被害を受ける恐れがあるなど、子どもの最善の利益に反する場合には当てはまらない』としています。
光本さん、DVなどがある場合はやはり、リスクが大きいということですね」
光本さん
「私たちのもとにくるのは、面会交流をすることがすでに決まっているケースになるんですけれど、やはり深刻なケースは、DV被害者や子どものケアであるとか、DVをしてしまう加害者とされる親御さんのケアであるとか、そういったことが優先されるべきかなと思います。
ただ、DVがあってもお父さんに会いたい、お母さんに会いたいという子もいますし、DVがなくても会いたくないという子もいますので、その子どものサポートというのは、また別軸で考えるべきかなと感じます」
合原キャスター 「そして、子どもが別居親に会う、会わないにかかわらず、親や、私たち社会全体は、離婚を経験した子どもの声にどう向き合えばいいと思いますか?」
光本さん
「とにかく離婚を親だけの問題とせずに、しっかりと子どもの声に耳を傾けるというのが大事かと思います。
子どもは、この人にならどこまで話せるかとか、成長に応じて思いを変えたりということもありますので、やはり、近くの大人に気軽に話せるという環境があることと、その大人が、その意見を否定しないで受け止めてもらえることで、面会交流をする親子だったり、離婚を経験した親子もはじめとして、さまざまな家族とか親子関係の形に、寛容で優しい社会が作られていくことがいいんじゃないかなと思います」
合原キャスター 「近くの大人というのは、地域の大人というのも含まれるということですよね。
子どもの思いに向き合って、しっかりと声に耳を傾ける大切さというのを感じるんですけど、青木さんは、ここまで見てきて親の立場からどんなことが大切だと思いますか?」
青木さん
「いろんなケースがあるなというふうに見させてもらいましたけれど、子どもに、もちろん愛情はすごくあるんですが、その時々で、伝えていかないと伝わらないことってあるんだなと思いました。
あと、離婚して思うのは余裕がないんですよね、親の方も。離婚している親に余裕がない。体力もなくなる。そんな時に相談できる第三者の立場の人がいるというのはすごく重要だなというふうに感じました」