Chapter 04

個人タスク管理を眺める

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2024.09.05に更新

前章ではタスク管理そのものを眺めました。タスク管理にはプロジェクト、パートナー、パーソナル(個人)の 3 種類があるのでしたね。本章ではそのうち「個人タスク管理」を眺めたいと思います。

個人タスク管理には様々なやり方や考え方がありますし、究極的には自分に合ったやり方を自分で模索していくものです。一方で、おおよそのパターンも見えてきています。本章では主なパターンを紹介していきます。ご自身のやり方や考え方と照らし合わせてみることで、良さそうなタスク管理とは何かのあたりをつけることができるでしょう。

タスク管理する?しない?

そもそもタスク管理をするか、しないかという話があります。

最初にまとめておくと、以下のような内容を扱います。

  • 特性や状況によるところが大きい
    • 特性
      • 頭の中で処理できる人には要らないし、処理できない人には重宝する
      • 運動・トレーニングの側面があり、地道な継続と向き合えるかが鍵である。向き合える人には向いている
    • 状況
      • 慌ただしい状況下だと使いづらい(臨機応変に場当たりの対応をしたり瞬発的にやりとりしたりで凌ぐ世界)
      • 几帳面で自分のリズムやペースに従って生きたい人には重宝する。生活の質も上げられる可能性が高い
  • 向いてないからといってできないわけではない、自分なりに取り入れていけばよい

タスク管理が要らない人

前章にて公理を取り上げましたが、タスク管理にはツールと解釈が必要なのでした。ツールを使わず頭の中だけで処理できるならタスク管理は要りません。また生活に余裕がある人や仙人のような生き方ができる人など管理しなくても済む人にも要りませんし、人や組織に言われたことをやるだけの人にも必要ありません――つまり 自分にとって何がタスクなのかという解釈をしなくてもいい人には必要ない のです。そもそもしようとも思わないのではないでしょうか。ツールを使うにせよ、自分で解釈をするにせよ、面倒くさい営みです。馴染みのない人がいきなり始めるのは難しいですし、そもそも必要性がないのだから始める意味もモチベーションもありません。

逆に非常に忙しくて頭だけでは処理しきれない人や、指示命令だけではなく自発的に取り組んでいく人、また指示命令的であっても何をどの順番でこなすか考えなくてはならない人にはタスク管理は必須です。タスク管理をしなければ振り回されたり迷ったりするばかりで、状況は好転しません。しかし一方で、状況などたかが知れているし、コントロールできるものでもないから管理など無用だ、今を生きればいいだけだろう、という考え方もできます。実際、そうやってがむしゃらに生きている人は少なくありませんし、このような精神論は誰でも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

タスク管理が要らない人の特性

薄々自覚または痛感している人もいるかもしれませんが、タスク管理しなくても生きていける人にはある種の特性があります。バイタリティに溢れ、メンタルが図太くなければいけません。わかりやすいのは、部屋や(PCの)デスクトップを散らかしている人たちです。汚部屋とかずぼらという表現もありますが、このような人たちは頭の処理能力が高く、メンタルも図太い傾向があるため「まあ何とかなるだろう」と楽観視しやすい(かつ実際に何とかしていける力がある)のです。何とかしていけるのですから、面倒くさいタスク管理に手を出すモチベーションはありません。

自己啓発的なことを言えば、カーネギーの名著 道は開ける にて「悩むのは暇だからだ」との金言があります。慌ただしい状況に身を投じて、あくせく働いているうちは悩まなくていい(し悩む暇もない)ということです。慌ただしい状況では管理うんぬんよりも臨機応変な取捨選択と会話が最重要であり、そもそもタスク管理の出番はありません。あるいはせいぜい直近何をするかの可視化と後々何したかの知るための記録として機能する程度でしょう。タスク管理などというまどろっこしいことをせずとも、目の前の忙しさに専念しているだけで済むのです。

逆にタスク管理とは切っても切り離せない人もいます。頭の処理能力が低い人は、頭だけでは進められないので情報を外に出して、それをメンテナンスしながら進めていく必要性に駆られます。また神経質な人は、いつ何をどのくらいの頻度で行うかというルーチンをストイックに構築することもあります。いずれにせよ、慌ただしい状況下を泳いでいける力はありません。自分なりのペースを死守する営みが生じます。よって、誰に言われるまでもなくタスク管理、あるいはそれに近しいことをしています。このような人達にとってはタスク管理は必須でしょうし、タスク管理について学ぶことでさらに生活の質を上げられます。

するか、しないかの目安

色々書きましたが、タスク管理をするか、しないかの目安は一言で言えると思います。

現状すでに私生活でタスク管理(ツールを用いることとタスクであるかどうかの解釈を能動的に行っていることの両方)を、あるいはそれに近しいことをしているかどうか

「私生活で」と書きましたが、これは仕事などで強要・推奨される場面ではなく、使うかどうかは自由だけど自分の意思で使っているかと問いています。している人は、タスク管理は必要でしょう。おそらく苦戦されているとも思います。本書にはたくさんのヒントがあると思いますので、自分に合ったものを漁ってみてください。

していない人は、タスク管理は不要でしょう。そもそもしようとも思っていないのではないでしょうか。あるいは、周囲や常識の影響で「した方がいいのかなぁ」と考えてはいるが、本心では別に要らないと思っているかもしれません。タスク管理は大変な営みであり、それなりのモチベーションを要求します。本心として「要らないよね」「くだらない」「やってられるかよ」といった気持ちがある場合は、おそらく続かないので、無理して手を出さなくても良いと思います。出したとしてもたぶん続かないでしょうし、挫折した人(あるいはし続けている人)も多いのではないでしょうか。

トレメント

タスク管理は、たとえるなら運動のようなものです。運動は筋トレにせよ、スポーツにせよ、もっと軽いアクティビティにせよ、体を動かすという「本質的な面倒くささ」が伴います。これを トレメント(Trement, Training Element) と呼ぶことにします。

トレメントを好きになれるかどうか、あるいは好きじゃないけどまあ続けることはできますねと思えるかどうかは重要です。上記の目安も直感的なものであり、あなたがトレメントを相手にできるかどうかを問うています。

ここで一つ疑問が生じます。

トレメントと向き合えないとタスク管理はできないのか、と。

回答すると、「正直不利ではあるが、できないことはない」となります。幸いにもタスク管理のやり方や考え方は色々ありますし、トレメントが苦手な人でも取り組めるよう工夫されたものもあります。

一つ例を挙げると、ポモドーロ・テクニック は有名でしょう。これは 25 分の集中と 5 分の休憩を(キッチンタイマーなどを使って)ストイックに繰り返すことで集中のリズムをつくっていくものです。トレメントに強い人は「いやそんなことしなくても集中なんてできるでしょ」と捉えますが、それは強いからなのです。弱い人は、集中するのも一苦労なので、このような制約のかけ方に頼らないといけないのです。ポモドーロ・テクニックは、わかりやすい割には強く働いてくれます。

他にも HabiticaChill Pulse などゲーミフィケーション要素を取り入れたツールもあり、ゲームで進捗を進めるような楽しさとともにタスク管理していけます。

そもそもあらゆるやり方を全部取り入れる必要はなく、ちょっと使うだけでもいいのです。自炊と同じです。別に料理人のようにつくれずとも、野菜と肉を切って鍋やフライパンに放り込むだけでもそれなりのものはつくれます。極めれば「雑な鍋料理だけで食事を完結する」こともできるでしょうし、そもそも一切自炊せず 100% 外食で済ます戦略も可能です。トレメントが苦手だからといって何も出来ないわけではないのです。

もっと言えば、どこまでならできるのか、何が合っているかには個人差があり、トレメントとどこまで向き合うかも含めて自分自身で探していく他はありません。しつこいですが、タスク管理は個人的なもので、自分自身で模索していくものなのです。

確実性か、納得性か、パフォーマンスか

タスク管理がカバーするものは多数ありますが、3 つに集約できると思います。

  • 忘迷怠(ぼうめいたい)
    • 忘れないこと、迷わないこと、怠けないこと
    • 「確実にこなしたい」
  • 調動脈(ちょうどうみゃく)
    • 調子、動機、文脈
    • 「納得したことがしたい(納得できないことはしたくない)」
  • 熱夢集(ねつむしゅう)
    • 熱中、夢中、集中
    • 「パフォーマンスを最大限に引き出したい」

以下、各々の詳細を見ていきましょう。

忘迷怠

忘迷怠(ぼうめいたい) とは忘れること、迷うこと、怠けることの総称です。本書では文脈により忘・迷・怠そのものを指していたり、忘迷怠の防止や軽減を指していたりしますが、上手く読み取ってください。

タスク管理と聞いて、まず思い浮かぶのは忘迷怠でしょう。タスクという形で残しておくことで忘れない(正確には忘れても見れば思い出せる)ですし、それをやればいいのだともわかるので迷いません。やったものはチェックを付けて、まだ終わってないものに着手して、それも終わったらチェックをつけて――とリズムに乗れば怠けることなく消化もしていけます。

「そんな上手くいくわけないよね」と思われるかもしれません。そのとおりです。私達は意思を持った怠け者であり、機械ではないので、タスクを書き残していたからといって 100% そのとおりに行動するとは限りません。何から「タスクは見たし、認識もしたし、このあと行動するつもりだった」のに実際しなかった、みたいなサボタージュもよくあります。それでもタスクが目に見えないよりははるかにマシです。何も残していないと完全に気分と気まぐれ(あとは自身の頭の処理能力)に依存してしまいますが、まがいなりにも残して見える化しておけば頼れるのです。

もちろん単に残せばいいというものではありません。TODO リストという言葉は有名ですが、同時に「役に立たない」ことでも有名です。TODO リストとは TODO(やること)を書き並べたリストであり、タスクリストと同義と捉えてもいいものですが、単にタスクを並べたものにすぎません。極端な話、タスクが 100 個並んでいるとして、それを全部忘れず迷わず怠けず消化できるかというと、できないでしょう。

タスク管理ツールの存在

だからこそタスク管理ツールが存在します。優先順位とか、カテゴリーとか、状態(未着手・進行中・完了)とか締切とか開始日とかいった属性を導入して、タスクごとに値を設定しておけば、色々と便利です。たとえば「終わってないタスクだけを表示する」とか「優先度が高いタスクだけを表示する」とか「締切まで間もないタスクを表示する」とかいったフィルタリングができますし、特定の条件で整列させて見やすく俯瞰したりもできます。ただタスクが並んでいるよりははるかにマシです。

ただし、ツールを機能させるためには、日頃からタスクとその属性を細かく更新する必要があります。仕事だとプロジェクトタスク管理の形で更新します(させられます)が、個人だとそうもいきません。先ほどトレメントを取り上げましたが、日々トレーニングを積むように自ら行動できる人でないと中々できません。少しでも行動に起こさせるために、ツール側も日々進化しています。たとえば綺麗なデザインだったり、カスタマイズ性が豊富だったり、前述しましたがゲーミフィケーションを取り入れたり、と色々あります。また、稀にタスク管理ツールを自作する人がいますが、これは「自分が作ったものを自分で使う」という DIY 的モチベーションを生むのに重宝します。

動線の重要性

つまり忘迷怠とは ツール上に存在するタスクを見れば、ある程度は(忘れる・迷う・怠けることを)防げるよね というだけの話です。100% では到底なく、ツールを使う私達自身の意思や適性やスキルは変わらず求められますが、それでも何も使わないよりははるかにマシなのです。

さて、この忘迷怠の質を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。細かいテクニックは後の章に譲るとして、一つだけ最も重要なことを取り上げます。動線 です。

導線ではなく動線です。「生活の動線」といった言い方をしますが、この動線です。意味としては「毎日頻繁に通る場所」となります。通るというと物理的な場所に限定されがちですが、そうとも限りません。たとえば自宅のトイレ、自宅のトイレのドア、自宅の冷蔵庫、スマホのホーム画面、PC のデスクトップ画面、SNS のタイムラインなどはすべて動線です。ただし人によっては動線は違います。筆者は私有のスマホは持っていないのでホーム画面は動線になりませんし、長期的な旅行や出張をしている人は自宅は動線にはならないでしょう。

さて、タスク管理ツールの話に戻りますが、私達がツールを用いて忘迷怠を担保するには、ツールを見る(Read) → タスクを選ぶ(Select) → 行動する(Act) → 行動後ツールに戻ってきて状況を更新する(Feedback)、のステップが必要です。一巡したらまた Read から始めます。これを RSAF サイクル と呼ぶことにします。

では、RSAF サイクルをまわすにはどうすればいいでしょうか。もうおわかりですね、ツールを動線に組み込む必要があります。たとえば一日何十回と目を通す存在にしないといけません。動線に組み込みさえすれば、一日のうち何回も見るはずなので(実際に書かれているとおりの行動ができるかはさておき)少なくとも目には入ります。目に入れば忘迷怠にも繋げられます。逆に、そもそもツールを見ることができなければ話にならないのです。

動線以外の方法

忘迷怠には動線が必須なのでしょうか。

そんなことはありません。他にも色々な方法があります。カレンダーや環境の力に頼ることは言うまでもなく知られています。ツールを動線に組み込む、というと小難しいですが、カレンダーであれば、すでに動線になっている方も多いのではないでしょうか。一日に何度も見ますよね(※1)。あるいはパートナーや家族がいらっしゃる人は、フォローしてもらえるので忘迷怠を防げるでしょう。特に子供は、よほどしっかりしてなければ、基本的に親からのフォローで動くはずです。

現実的には様々な方法を上手く組み合わせるのがベストです。筆者の例を挙げると、基本的に PC 上の自作ツールが動線ですが、カレンダーも使いますし、家事に絡むタスクは自宅の冷蔵庫や玄関や浴室前も動線となっています。最後の浴室を取り上げますと、今日リモートワークが終わったら風呂掃除するかなーと思ったら、浴室前に掃除セットを置いておくのです。そうしたら、風呂に入る前に目に入るので「あ、掃除するんだった」と思い出せます。洗面所やトイレに行くときも目に入るので、一日何回も目に入ることになります。何回も目に入るなら、一回くらいは「掃除するか」となります。このやり方は、ツール上に「風呂掃除する」というタスクを書いておくよりも効果があります。あくまで筆者の例です。筆者はトレメントに耐えられる側の人間なのでこれで十分ですが、どういうバランスが適しているかは本当に人によります。

    • 1 カレンダーは本当に優秀なツールだと思います。過去の予定を更新しなくてもいい(放置しておけばいい)のが地味に便利ですよね。RSAF サイクル的に捉えると、最後の Feedback が不要なのです。この「ちょっとした手間の無さ」は大事で、カレンダーが親しまれている理由の一つだと思います。

調動脈

調動脈(ちょうどうみゃく) とは調子、動機、文脈の総称です。調子とは体調やコンディションのことです。好調とか不調とかありますがそれです。動機とはモチベーションを指します。やる気とも言いますね。 文脈(Context, コンテキスト) とはそのタスクの前提、状況、背景、あるいはそのタスクが備える性質などを指します。重要かつ奥深い概念なので太字にしていますが、詳細は後の章で扱います。

調動脈の観点はおざなりになりがちですが重要です。タスク管理と聞いても浮かびにくいもので、狭義か広義かで言えば広義に入ります。それゆえ軽視されさがちなのですが、軽視がもったないほど大事なものです。特にわかりやすく言うなら、「体調ややる気も大事です」と言われると納得できるのではないでしょうか。あまりに当たり前すぎることではありますが。

ここで「いやタスクは仕事なんだから体調ややる気は関係ない、とにかくこなすべきだろう」と思うかもしれません。そういう場面があることも否定はしませんが、常にそうだと息切れしてしまいますし、これは筆者個人の考えですが、自分の調子ややる気は尊重するべきだと思っています。ワークライフバランスやウェルビーイングなど、自分自身を大事にする価値観が色々と盛り上がっているのも時代がそうなっているからです。水準が上がっているのです。自分の意思でとにかく頑張る(頑張らないといけない環境に自ら飛び込むことも含む)のなら構いませんが、蔑ろにされるのはいただけません。そうでなくとも、ないよりはあった方が良いに決まっています――と、少し筆者の主張が強くなってしまいましたが、これが絶対的に正しいかどうかはさておき、本書では調動脈も軽視しません。

納得感の最大化

調動脈を考慮するとは、納得感を最大化すること に他なりません。納得できれば良し、という前提のもと、ではどうすれば納得できるかというと、調動脈を踏まえればいい、となります。

調子については、体調やコンディションが良いと納得感が高いと思います。逆にこれらが低いと納得感も低くなります。特に精神的に参っているときはネガティブ思考になりがちですし、身体的に疲れているときは何もかもが面倒に感じますよね。納得感を高めるためには、体調やコンディションを高めればいいです――というのはかんたんですが、はい高めますといって高まるものではありません。どちらかと言えば日頃から、あるいは中長期的に体調を維持したり、どんなときにコンディションが良くなるか(悪くなるか)を把握してそれに則ったり、といった行動が必要になります。

動機については、やる気のことですのでわかりやすいと思います。やる気があるなら納得もできますし、ないならできません。納得感を高めるためには、やる気を高めればいいのですが、ではやる気とはどうやって高めるものでしょうか。そもそもやる気とは何でしょうか。心理学や脳科学や哲学を深追いする気はありません。肝心なのはメカニズムを知ることよりも、どうやったらやる気が出るのか、増えるのかを知り、行動することです。端的に整理すると、次のようになります。

  • 明確にする
    • 何すればいいかわからないタスクを分解する
    • 何がわからないのかもわからないので、いいからとりあえず始めてみる
    • 目標に紐づけて進捗感や意義を見えるようにする etc
  • 浸透させる
    • 習慣、日課、こだわりなど労力なく勝手にこなせるようにする
    • 体力やスキルを鍛えて、抵抗感や消耗具合を減らす
    • 仕組み化や自動化や単純化などでシームレス(垣根をなくす)にして、腰を上がりやすくする etc
  • とにかく始める(ための環境を整える)
    • 始めやすくするための環境をつくる
    • 環境を見つけて通う
    • 誘惑を減らす etc

最後に文脈については、そのタスクの文脈がわかれば納得感が増すこともあるということです。たとえば何のために行っているのかわからないタスク A と、これこれこういうために必要なんだよと丁寧に説明されたタスク B とでは、後者の方が納得感があります。タスク B について、その文脈(この場合は取り組む意義)がわかっているからです。なので、文脈の観点で納得感を高めたいのであれば、文脈を知りに行けばいいことになります。調べたり、見聞きしたりはもちろん、自分の内面と対話したり、自己分析して現状や適性を踏まえたりといったことが必要になることもあります。やり方に個人差が出るのも特徴で、筆者は自分ひとりで考え込むのが好きですが、他者と話すのが好きな人もいれば、一見すると話し好きに見えるけど実は観察をしている(つまり観察こそが好き)人もいますし、事例や資料や論文といった情報を調べるのが好きな人もいます。

好きこそものの上手なれ

好きこそものの上手なれ、ということわざがあります。上手になるためには継続が大事ですが、好きじゃないと中々継続できません。

このことは、調動脈を考慮して納得感を高めることについても言えます。ここまで調動脈について軽く紹介しましたが、能動的かつ継続的な行動が必要になりがちです。ここで効いてくるのが興味や好奇心、好き嫌いや性癖、信念といった個人の嗜好なのです。嫌いなことやどうでもいいことは長続きしません。

「いやお金があれば関係ないよ」と思われる方もいるでしょうが、筆者は懐疑的です。お金のために、と言っている人に限って、実は仕事と嗜好がマッチしていたりします(※1)。「家族のためだから関係ない」も同樣です。それで続いている人は、続くだけの嗜好を持っているのだと思います。

    • 1 お金のような外からの報酬は「外発的動機づけ」と呼ばれます。興味関心や信念をベースとした内発的動機づけよりもやる気を保ちにくいことが知られているそうです。一方で、現実では、お金によってやる気を維持している人もよく見かけます。どういうことでしょうか。筆者としては、単に「お金以外の内発的動機づけが実はある」だけかなと思っています。仕事は楽しいという興味関心だったり、お金がこれだけ貯まったらこういうことができるから絶対に必要だという信念だったり、あるいは作業をこなせばこなすほど結果が来るというゲーム性に快感を見出せる性癖(そしてそれを可能にする実力)を実は持っていたりします。いわば内発的動機づけがあり、その上、お金も伴っているという状態です。やる気が出るのも当たり前だと思います。逆を言えば、内発的動機を見出せない人は、おそらく長続きしないでしょう。

熱夢集

熱夢集 とは熱中、夢中、集中の総称です。

忘迷怠は確実性(確実にこなすこと)、調動脈は納得性(納得感を増やすこと)にフォーカスしますが、熱夢集は継続性(続けること)にフォーカスします。

熱中とは熱意や興味が冷めないようにすることです。夢中とは熱中や集中を探したり育てたりすることです。集中とは取り組みを開始し軌道に乗せることです。一言で言えば、(夢中と集中の言及順を入れ替えますが)熱中はエンジン、集中は稼働、夢中はエンジンや稼働のメンテナンスと洗練です。夢中についてはこじつけ感がありますが、エンジンや稼働を扱うことに夢中になっていると捉えてください(※1)。

要はエンジンとその動かし方の両輪で、自らを動かそうというわけです。いくら忘迷怠にてタスクを捉え、調動脈にて納得感を醸成できたとしても、実際にタスクをこなせなければ意味がありません。そして、こなせるかどうかは「こなせるまで続けるか否か」にかかっています。さらに言えば、続けるのにしてもだらだらやって100分で終わらせるよりも10分でさっさと終わらせた方が効率が良いです。集中力という概念は、あえて説明するまでもなく知られていますよね。

    • 1 熱夢集という言葉、特に夢中の部分はもうちょっとわかりやすくしたかったのですが、これが限界でした……。こじつけ感があると書いてますが、正直言うと完全にこじつけです。

パフォーマンスの最大化

熱夢集によって高められるものは パフォーマンス です。ここでパフォーマンスとは性能という意味であって、業績や成績といった生産性は指していません。パフォーマンスが高いとは、自分が持っている性能を高く引き出せる ということです。必ずしも高い生産性に結びつくとは限りません(※1)。

パフォーマンスを高めるには、熱夢集を高めればいい。では熱夢集の各々はどうやれば高まるでしょうか。

    • 1 一般的にパフォーマンスと生産性は比例します。特にものづくりやナレッジワークは、その人に合ったやり方と集中の仕方が必要になるため「まとまった時間」と「高い裁量」が求められます。ここがわからずやり方を制限したり、細かく管理したり、高頻度に会議を入れたり声を掛けたりするのはパフォーマンスを削ぐ妨害行為です。一般的に、と書いたのは、たとえば「一見すると生産性は高そうだがアラが多い」とか「考慮すべき前提が漏れてるのでせっかくつくってもらったところ悪いけどやり直し」といったことがあるからです。そういうわけで、このような仕事では当人に全面的に任せる → 出てきた成果物をレビューするという二段階のやり方が取られます。もっとわかりやすいのは作家や漫画家でしょう。

熱中

熱中については、まさに前述した調動脈が役立ちます。調子を整え、動機を引き出し(やる気を引き出すための行動をし)、文脈も理解して納得できれば、熱意や興味は維持できるでしょう。特にスポーツがわかりやすいですが、本番で出し切るために何日何週間何ヶ月も前から準備に手間暇をかけることもあります。また、ずっと気張っていると消耗してしまい最悪病んでしまいますので、オンオフの切り替えや気分転換も大事とされています。

集中

次に(またも順序を変えて、先に集中から述べますが)集中については、自分の癖を把握して飼いならすことが求められます。一つ例を挙げると、筆者は誰にも何にも全く邪魔されない静音環境だと集中しやすいです。一方で、テレビの音はあってほしいとか音楽を聴きながらやりたいという人もいるでしょうし、ペットの猫などアトランダムな刺激や癒やしを好む人もいます。また同じ人であっても状況によってやり方は変わります。新しいアイデアを考えるときは何も聴かないが、単調作業をするときは何か聴かないと耐えられないなどです。

別の言い方をすると、集中は制約のかけ方をいかに工夫するかにかかっています。最近わかりやすい動画を見かけたので紹介します。ケンガンアシュラ作画のだろめおん先生の密着動画 なのですが、作画作業に集中するためにポモドーロ・テクニック、発声、おにぎりを食べる、と色々駆使しています。これは単調寄りの作業の例ですね。単調作業は退屈であり、意識の大部分を持て余してしまうわけですが、この意識の暴れ馬をいかに抑えるかが肝心となるわけです。筆者の持論ですが、プロと呼ばれる人はパラレルかつスピーディーだと思っています。常人では非常に時間かかること、あるいは決してこなせないことを短時間でこなせますし、複数の作業も並行(パラレル)して進行できます。それほどの実力が伴っているのです。だからこそ仕事における単調作業の割合が必然的に増え、意識の暴れ馬の制御が問題となります――と、これは単調寄りの話ですが、難解な仕事の場合も発想は同じですが、工夫の難易度が跳ね上がります。

夢中

最後に夢中については、熱中や集中のやり方を積極的に模索すれば良いです(そもそも夢中の定義はエンジンや稼働のメンテナンスと洗練でした)。

仕事術やタスク管理について調べたり、上述の動画もそうですが、他人(特にプロ)のやり方を参考にしたり、あるいは同僚や友人とそういう話をしてみても良いでしょう。自分で試行錯誤してもいいですが、慣れないうちは難しいと思います。先にどんなやり方や事例があるかをインプットした方が捗ります。

どちらかと言えば、模索するための時間をちゃんと取れるかにかかっています。たとえば「1日30分の時間を確保できるか」といわれると、どうでしょうか。特に忙しい方には難しいでしょうが、このような投資ができなければ話になりません。

浅く管理するか、深く管理するか

タスクをどこまで管理するか、は人によって大きく違ってきます。

ざっくり言えば、浅く管理するか深く管理するかに二分できます。

  • 浅いタスク管理
    • 自分を取り巻いている多数のタスクを管理します
    • 目的は「理想的な消化に近づくこと」であり、忘迷怠したい人に適しています
    • 忘迷怠の項で述べたように動線は重要です、また複数のツールを使い分けることも一般的です
  • 深いタスク管理
    • 少数の重要なタスクのみ管理します
    • 目的は「打開と前進」であり、忙しい人に適しています
    • 結局は決めの問題であり、意思決定する(特に捨てる)ための要領を日頃から磨いておく必要があります

浅いタスク管理

浅いタスク管理 とは、自分を取り巻く多数のタスクを管理するスタンスです。仕事の本業と雑務、日常生活の家事、日課や習慣、趣味、勉強やトレーニングといった投資――など生活はタスクに溢れていますが、これらをなるべく捉えて管理します。

目的は前述した忘迷怠です。多数のタスクを何も意識せず適当にこなしているだけでは何かと非効率なのです、忘れたり迷ったり怠けたりします。逆にそれらを全部捉えて、管理できれば、効率的にこなせます。あるいは自分のペースやリズムに則った形で割り当てていけば生活自体が快適にもなります(いわゆる生活の質が向上する)。さらに言えば、やり忘れのタスクがなくなることで、「タスクをやり忘れたことによる後々の被害の拡大」も防げます。

タスクの総量自体は変わりません。たとえば今日やるべきタスクが 20 個あって、6 時間かかるとしても、管理しようがしまいが 20 個や 6 時間は変わりません。それでも管理しなければ忘れて迷って怠けて 9 時間かかったり、9 時間かけても終わらないかもしれません。逆に管理ができて、かつ適切に実行できたら、6 時間で 20 個という理論値に近づけるのです。そういう意味で、 浅いタスク管理とはタスク消化の理論値に近づくためのもの です。

やり方は色々ありますが、一般的に複数のやり方を使い分けます。たとえば予定にはカレンダーを使うでしょうし、忘れたくない用事にはリマインダーやアラームを設定するでしょう。起床時の目覚ましやカップラーメンの 3 分タイマーは有名です。ゴミ捨てなど定期性のある雑務については、タスク管理ツール側の設定を定期にしたり、あるいは単に時間割のような表をどこかに掲示してそれを見たりするでしょう。

もう一つ、大胆なツールとしてタスクシュートがあります。これはタスクリストに書かれたとおりに行動することを強力に促すツールで、いわば毎日何するかを全部リスト化する(できるように育てていく)ものです。人が一日に抱えるタスクは 20~60 と筆者は思っていますが、そのすべてを投入して管理することさえ可能です。ちなみにタスクシュートも(忘迷怠の部分で前述しましたが)動線になりますし、動線として使うことが想定されていると思います。

深いタスク管理

深いタスク管理 とは、少数の重要なタスクを管理するスタンスです。たとえば「今日はここに書いた 7 個のタスクだけをやるぞ!」といったやり方は、その 7 個という少数のみにフォーカスしています。仕事上、あるいは生活上はもっと多数のタスクがあるはずですが、あえて 7 個だけを見るというわけです。

浅いタスク管理は大胆な取捨選択と言えます。本質にのみ目を向けるため、子細は捨てねばなりません。前章にて解釈の公理(意思決定の必要性)を述べましたが、まさに意思決定が求められます。いわゆる自己啓発や仕事術の文脈でも、こちらが想定されていることが多いです。アイビー・リー・メソッド は毎日 6 個ですし、時間管理マトリクス は重要と緊急の観点で大胆に優先順位を下します。

この性質上、忙しい人に適しています。忙しい人は 1 日 24 時間では到底足りないレベルのタスクを抱えていることが多く、ただでさえ状況に流されがちですが、そんな中だからこそ、今はこれをやるのだと決めることに価値があるわけですね。もっとも、決めただけで実際にできるとは限らず、むしろできないことの方が多いです。深く管理すると決めたところで、現実の忙しさは何も変わらないわけですからね。諦めること、捨てること、協力してもらうことからやり方や考え方を変えることまで多方面かつ継続的な努力が求められます。特に捨てる勇気(または委譲する要領や力)が要ります。

このように厳しい取捨選択をするのは、深いタスク管理の目的が打開と前進だから です。タスクが多すぎてどうしようもないときに、それでもまずはこれをやると決めて、実際にやるのです。口で言うのはかんたんですが、忙しいと余裕がありませんし、「うるせえ全部大事なんだよ」「お前に何が分かる」とあたりたくもなります。

だからといって当てずっぽうで選べばいいというものでもありません。何を選べばいいかは、前述した調動脈にかかっています。早い話、日頃から調べたり考えたりしておかないと、いざという時に役に立ちません。「わかったわかった、今から 20 個から 3 個に絞るから 2 日待ってね」は、大抵の場合許されないでしょう。「うん、じゃあこの 3 個にしようか」とすぐに判断できるだけの調動脈を日頃から備えておく必要があるのです。

ツールはアナログか、デジタルか

タスク管理ツールとして何を使うか、についても大きく分けて二つあります。

アナログとデジタルです。

  • アナログ
    • デジタル機器を使わないツール
    • メリットは、親しみやすく始めやすいことと、体験が豊かなこと(手書きの効用や電子書籍に対する紙の書籍と同じ)
    • デメリットは、素早い操作が行えないことや空間に限りがあること、総じてある程度頭の中で処理する性能が求められること
  • デジタル
    • デジタル機器を使ったツール
    • メリットは、操作の素早さとデータ同期で、大量のタスクを扱えるしどこからでもアクセスできる
    • デメリットは、スキルが必要なことやツールごとに勉強が必要なこと、そして目移りしやすい(手段の目的化)こと

アナログツール

アナログツールとはデジタル機器を使わないツール(道具)を指します。

例を挙げると紙に書く、手帳に書く、付箋に書いて貼り付ける、冷蔵庫に貼り付けた落書きボードに書く、ホワイトボードに書く、壁一面をホワイトボードにしてそこに書く(ホワイトボードウォール)、チョコの包装に書くなどがあります。他にもたくさんありますし、紙に書く一つを取り上げても、どんな紙で、どんな形式で、どんなペンで書くかといったバリエーションも色々とあります。そもそもタスクを言葉で「書く」だけでなく、図表にしたり、マインドマップのように線で繋いだり、あるいは単に気持ちを上げるために絵を入れたりなど「描く」こともあるでしょう。

アナログツールのメリットは親しみやすさと豊かな体験です。まずデジタルの知識やスキルが要らないので始めやすく、自分なりのカスタマイズもしやすいです。実は手先の器用さ、視覚的記憶力、空間認識能力といった適性があり、向いてない人もいるのですが、少なくとも(タスク管理自体を除けば)特別な知識やスキルは要りません。もう一つ、無視できないのが読み書きする時、特に書くときの情報量です。よくキーボードやタッチパネルよりも手書きの方が覚えやすいといいますが、手書きという行為の方が刺激(情報)が多く、神経も使い、あまりスピードも出せないのでしっかりと向き合うことにもなり、と記憶しやすいからです。物書きの世界では写経(丸写しする)という鍛錬方法もあります。電子書籍があっても紙の本はまだ根強い人気がありますが、手書きも同樣です。いわば体験として豊かとでも言えるでしょう。これが意外と重要で、退屈になりがちなタスク管理に彩りを与えます。別の言い方をすると 気持ちが上がります。タスク管理はまず続けることが大事ですから、気持ちを上げて折れないようにできることは大きなメリットです。

デメリットもあります。間違ったときに素早く修正できなかったり、そもそも書くスピードがあまり出なかったりするため、多くのタスクを扱えません(さらに言えば紙面にも限界があります)。ある程度頭の中で処理してから、それを外に出す という営みが必要になります。もっと言うと、頭の中で処理するのが苦手な人にはアナログは向いていません。それでもないよりはマシです。もう一つ、紛失や覗き見に弱いことも挙げられます。デジタルだとクラウドに保存できますし、接続元の PC やスマホをセキュリティーで保護すれば他人には読まれませんが、アナログだと物理的になくしてしまいますし、見られてもしまいます。丁重に管理すればいいだけですが、神経を使います。個人タスク管理には誰にも見せないプライベートな情報も入れますから、このセキュリティーの低さは意外としこりになります。

総じて、アナログツールは 頭が強い人には便利なツール と言えるでしょう。基本的に頭で処理できるが、ちょっと外に出しておきたい、といったように補助としてタスク管理を使いたい人に適しています。物理的な道具ゆえの限界はありますが、電子書籍に対する紙の書籍と同樣、気持ちが上がる効果も見逃せません。

デジタルツール

デジタルツールとはデジタル機器を使ったツールを指します。

例を挙げるとスマホアプリ、PC 用のデスクトップツール、コマンド、テキストファイルやエディタ、ブラウザから使う Web サービス、スマホでも PC でもないデジタルデバイスなどがあります。直接的にタスク管理を謳ったツールが多いですが、工夫次第では、汎用的なツールをタスク管理用途に仕立て上げることもできます。たとえば task.txt をつくって自分なりのルールで運用すればそれも一種のツールですし、まさにそういうテキストファイルベースなツールもあります(todo.txt)し、プレーンテキストで管理するのが最強という人もいます。プレーンテキストは専門的なので後の章で詳しく扱います。

デジタルツールのメリットは素早さとデータ同期です。まずタイピングやフリック入力、もちろんコピペや複製も使えますし、修正や並び替えや挿入や検索もかんたんで、タグをつけたりそれでフィルタリングできる――と素早く操作できるのが強いです。向こう一年間のタスクを全部投入して管理する、なんてこともできてしまいます。ツールやスキルにもよりますが、何百何千というタスクも管理可能です。加えて、Web サービス型のツールですと、データの同期もできるので、どこからでもアクセスできます。普段 PC からアクセスして、外出先でスマホからアクセスして、なんてこともできます。特にやりたいことが多い人に有益で、要はやりたいことをタスクとして全部ぶっこんでおき、自宅なり外出先なりから眺めて、今できることをやったり絞り込んだりするといった「ちょっとした作業」がしやすいのです。デジタルだからこその恩恵でしょう。

もちろんデメリットもあります。まずはスキルです。スマホにせよ PC にせよ一定のリテラシーは必要ですし、ツールごとに作法や機能も違うので、基本的にツールごとに勉強が必要です。要領がいい人や横着な人は、とりあえず使ってみることで何とかしようと考えますが、デジタルツールは意外と融通が利かないしですしわかりづらい。結局ドキュメントを読んで勉強するか、実験的な試行錯誤をすることになります。そもそも手に馴染むまで時間がかかるので、多少は辛抱強く使わないといけません。前述したトレメントですね。このあたりができないと、すぐ次のツールに乗り換えようとしてしまいます。何しても続かないダメ人間、というと言い過ぎですが、そんなスパイラルに陥りがちです。まさにこの現象もデメリットの一つで、手段が目的化しやすい のです。色んなツールを試したり遊んだりすることが目的になってしまう。厄介なことに、タスク管理ツール側も利用者の気を引くためにそれを助長してきます。魅力的な宣伝文句、クールで使いたくなるインターフェース、絶賛しているインタビュアーやレビュアーの声――抗うのも大変です。

総じて、デジタルツールは 操作の早さやアクセス性の高さを求める人には便利なツール と言えるでしょう。アナログツールは頭で処理したものを出すのがメインでしたが、デジタルだと(ツール次第ですが)その必要もありません。かわりに素早く操作し、投入したタスクもツールに則って管理できるだけのスキルは要求されます。また、選択肢が多いので、目移りを許すと手段の目的化に陥ってしまいます。

様々な戦略とスタンス

戦略とはどんなやり方や考え方で望むかという方針のことです。スタンスとは「こういうときはこうする」という反応や行動のことです。タスク管理の戦略やスタンスは色々ありますが、主なものを捉えてみました。詳細は後の章に譲るとして、ここでは概略を眺めていきます。

  • 戦略
    • 時間や話題などの「枠」で区切って、各枠を尊重する
    • 整頓せず一箇所にまとめておく
    • 日課や習慣など、繰り返しの力でまわす
    • ツールの活用は最小限とし、基本的に自分の頭に頼る
  • スタンス
    • タスクを抱える量を減らす系
    • タスクの処理にかかる手間を減らす系
    • タスクの外の環境に働きかける系

戦略

「何を拠り所にするか」で分けることができます。

時間で区切る

最も有名なのはカレンダーを用いて予定ベースで生きることです。予定に従って行動すればいいだけなので比較的かんたんですし、特にビジネスの管理職層はこれに頼っている人も多いのではないでしょうか。

次によく知られているのが「時間帯を意識すること」でしょう。午前は何をする、昼食前後は何をする、午後1と午後2、夕方、通勤、夜、就寝前――時間帯の分け方は様々ですし、単に1時間とか1.5時間といった枠(授業や研修がまさにそうですよね)をつくってそこにタスクを差し込むやり方もよく知られています。

あとは、前述したタスクシュートもそうですが、今日とそれ以外、と日単位で分けて今日にフォーカスする潮流もあります。今日という区切りをつくって、今日やるべきことを決めて、全部終えたら今日はもうおしまいとするわけです。マニャーナの法則 も同じアプローチで、今日やることを決めた後に新たなタスクが降ってきてもそれは明日に回す、という先送りをしますが、これも今日と明日以降に二分しているからこそできる発想です。

話題で区切る

1-話題 1ページで扱えるシステムがあり、これを使うと 1-タスク 1-ページで情報をつくることができ、タスク管理を行えます。たとえば「何かしら運動を始める」「書籍 XXXX を読む」「引っ越しの検討をする」「冷蔵庫を買い替える」など、思いついたタスクをつくります。この場合は 4 ページ分のタスクが生成されます。各タスクページでは自由にコメントを書き込めるので、進捗や情報があれば追記できます。ツール次第ですが、終わったらクローズして見えなくしたり、締切や優先度を設定して強調したりもできます。

この戦略はかなりニッチではありますが、この手のシステムを知っているエンジニアの方には支持されやすいです。ツールとしては GitHub Issuesが知られています。汎用的なノートツールや原始的なファイルでもできなくはないですが、細かい操作が面倒くさいので、よほどの甲斐性か、あるいは自分で仕組みを自動化できる人でないと長続きしません。エンジニア向けと言えるでしょう。

一箇所にまとめる

とにもかくにも必要な情報をすべて一箇所にぶちこむ、という戦略です。

有名なのはガレージや書斎など仕事場、デスク(机)、PC のデスクトップ、スマホのホーム画面です。散らかっている人も多いのではないでしょうか。何も意識しなければ、基本的にこのスタイルになりがちですが、それで上手く行っているのなら無理して別のやり方に変える必要もありません。というより、この一箇所ぶちこみ作戦も立派な戦略の一つなのです。下手に管理するよりも圧倒的に楽ですし、結局見つかればそれでいいのですから。ただし、見つけるためには相当頭が良くないといけません。天才と呼ばれる人達は整頓が下手なイメージがありますが、頭が良くて引っ張り出せるから整頓の必要がないのです。

要は整頓せずに一箇所にまとめておくという原始的な戦略です。タスク管理に当てはめると、タスクを言語化して放り込むというよりは、タスクを表す何らかのもの(書類だったりファイルだったり物品だったり)が散らかっているイメージです。役所への申請が必要な封筒や通知があった場合、「~~の申請を行う」的なタスクをツールに追加するのではなく、その封筒をデスクに置いたり、通知の内容(メール本文やウェブサイトのURL)をファイル化してデスクトップに置いたりします。一方、note.txt のような「唯一の巨大なノート」を用意して、全部そこに書くというスタイルもあります。

繰り返しの力でまわす

習慣や日課、毎日少しずつ着手するといったことを重宝する戦略です。

習慣トラッカーのような記録ツールでモニタリングしたり、タスクシュートのような「定期的なタスクを扱いやすいツール」に頼ったりします。この戦略を採用すると、毎日「今日はこれとこれとこれとこれとこれをやる」といった形でタスクがずらりと並ぶイメージです。

少しわかりづらいので一つ例を挙げると、「XXXX という本を読みたい」といった場合は「10分読む」という日課を毎日差し込んだりします。毎日が嫌なら2日に1回とかでも構いませんし、もっと読めるなら1日30分でもいいでしょう。もちろん朝にやるのか、夜にやるのか、毎日タイミングを固定するのかそれとも適当に空いたときにやるのか、なども含めて自由です。細かい部分は人次第ですが、ともかく定期的に続けていくという発想で捉えます。

見るからに面倒くさそうですし、難しい戦略でもあります。どのタスクをいつ、どれくらいの頻度で行うかはきちんと管理しなければいけません(これを手作業で行うのは厳しいため専用ツールに頼ります)。忙しい人というよりは、やりたいことや備えたいことがたくさんある人に向いていますが、そう単純でもありません。ツールが提示してくれたタスク達と、それを実際にそのとおりにこなせるかどうかには大きな隔たりがあって、やる気や集中の面で苦労しがちです。

自分の脳内が正義

基本的に自分の頭だけで事足りるが、さすがにタスク全部は覚えていられないので必要最小限の手間で思い出したい、という人もいます。このような人は、タスク(の元となるやり取りや物)を保存しておいて、あとで見返します。たとえばブラウザやチャットツールや SNS のブックマーク機能を使ってチェックをつけておく、などです。

情報収集の文脈でいう「あとで読むタグ」や「あとで読むカテゴリー」は、まさにこの戦略です。メールを仕分けしたり重要タグをつけたりするのもこれですが、細かく分類するというよりは「何もつけない or 重要マークをつける」など二値にのみ頼るのが本質です。要はつけるか、つけないかです。つけたものは重要なものとみなして、あとで読み返して消化します。この程度の手間ならまあ負ってもいいだろう、というわけです。

この戦略も本人の頭の良さが求められます。そもそもこんな単純なやり方だけでは上手くいかないからタスク管理に苦労するわけです。とはいえ、誰がどんな性能を持っているかは本人さえもわかりませんから、試してみるのはアリです。この戦略で済むならラッキー、済まなくて当たり前といったところでしょうか。

ちなみに、この戦略は「作業的なタスク」との相性が良いです。作業的なタスクとは、時間さえかければ終了に導ける類の「作業」とも呼べるタスクです。面倒くさいかもしれないが、かんたんなタスクというわけですね。逆に限界もあって、いくら作業的なタスクであっても物量が多すぎると歯が立ちません。また作業的でないタスク、たとえば正解も事例もない創造的な仕事や、中長期的な投資が求められる研究的な仕事などはお手上げです。

スタンス

いくつかの観点で分けることができます。

抱える量を減らす

そもそもタスクを抱える量を減らしていこう、と考えます。

一番わかりやすいのは「人に任せる」ことでしょう。フォローや管理は必要になるかもしれませんが、何でもかんでも自分で行うよりも前進できることがあります。そもそもある程度の規模になると個人だけではまわらなくなりますので、どこかの段階で多かれ少なかれこの発想は必須です。別に経営者やマネージャーの特権ではなく、身近なところで言えば、お金を使って家事代行サービスを頼む等もこれにあたります。言われてみると単純ですが、人はタスクを自分で抱えたがる(※1)ので、意外とこの発想は忘れがちです。

他によく知られているのは「抱えない」ことでしょう。メールやチャットが来たら即返信するとか、会議や相談時は先送りにせずその場で決断を下すといったことです。ボールというたとえが使われるのは有名だと思います。また、ボールとは違いますが「面倒くさい雑務はすぐに終わらせる」「2分以内で済むことはすぐ終わらせる」といったアドバイスも有名かもしれません。

もう一つ挙げると、戦略の項でもチラッと出ましたが「先送りする」ことです。特に今日はもうやりません、明日やります、と今日の領分が侵さないようにすることです。そうでなくとも人気店で品切れが発生したときに並び待ちはここまで、と締め切ったりしますし、昨今、Web サービスや通信回線なども使いすぎると制限が入ったりしますよね。先送りというとピンと来ないかもしれませんが、無理やりぶった切っているわけです。ぶった切ってしまえば、それ以上抱えることはありません。言葉にすると単純ではありますが、ぶった切るための判断基準と、何よりぶった切るのだという意思決定が難しいです。

    • 1 人がタスクを自分で抱えたがる理由は秘匿性と排他性です。秘匿性については、要するにプライバシーです。タスクには個人的な情報や背景が絡んでいることがあり、無闇に人に渡せるとは限りません。部屋の掃除をお願いしたいにしても、まずは見られては困る物の対処が要りますよね。こういうのが面倒くさいので、「じゃあ自分でやってしまうか」となります。もう一つ、排他性については、要するに「部外者は黙っとれ」です。人は自分なりのこだわりやプライドを持っているものですが、これはタスクにも反映されています。タスクを無闇に人に任せると、そこが侵害されてしまうおそれがあります。赤の他人に部屋の掃除を任せたときに「汚いですね」とか「もう少し綺麗にした方がいいですよ、参考までに――」などと言われたら苛つくでしょう。侵害の可能性があると、「いや、まあ、自分がやればいいか」と逃げの心理になります。逆を言えば、この二つを軽減できれば、どんどん任せることができます。

省力化する

タスク管理に要する手間――特に操作や連携や選別を省力化していこう、と考えます。

操作や連携については、自動化機能(Automation)で省力化できます。近年のプロジェクトタスク管理ツールはこれをサポートするようになりました。たとえば AsanaClickUpmonday.com(のWork Management)Trello など。その本質は「もし XXX が起きたら、YYY を実行する」というもので、XXX をトリガーとして YYY を自動実行します。たとえば「デザインが必要」タグをつけたらデザイナーの A さんを担当者に割り当てるとか、締切が近づいたら担当者にメンションをつけたコメントを送信するなど、工夫次第で色々できます。

また、タスク情報をチャットツールなど他のツールに流す機能を備えたものもあり、Todoist など個人タスク管理ツールではこちらが多いかもしれません。Zapier や IFTTT といったワークフローツール(※1)との連携も想定されていたりします。そういう意味で、個人タスク管理のシチュエーションでは、省力化≒ワークフロー連携によりタスク管理を支援する、と言えそうです。一見すると省力化の効果にはピンと来ませんが、トリガー実行のシチュエーションは(個人レベルでも)意外と多いので、上手く落とし込めれば効果は期待できます。特に手作業が多い人は、1日30分以上の削減も可能かもしれません。

選別の観点としては、許可的と拒否的があります。

許可的とは「あらかじめ決めたもの以外は全部捨てる」というもので、前述した深いタスク管理が当てはまります。これをするんだ、と決めた少数のタスク以外は全部(いったんは)捨てるのです。すでに述べたとおり、たしかな判断基準と意志決定力が求められます。

拒否的とは「指定条件を満たしたものは問答無用で捨てる」というもので、前述した「時間で区切る」戦略がわかりやすいです。マニャーナの法則は今日降ってきたタスクは全部明日にまわす(今日やることを捨てる)のでしたし、他にも タイムボックスという時間枠を設けてその範囲でのみ対応する(つまり時間枠の外でタスクをこなすことを一切捨てる)やり方もあります。営業時間の概念はまさにそうですよね。働く時間をビシッと定めてしまうことでメリハリをつけます。

いずれにせよ、思い切って決めてしまうことで余計な判断の手間をなくしています。判断の省力化と言えます。

    • 1 ワークフローとは「仕事の一連の流れ」を意味する言葉です。特に情報を誰に渡すかとか、どのツールに流すかといった流れを指します。プロジェクトタスク管理で言えば、たとえばチャットツール、タスク管理ツール、スケジューラー、管理者によるレビューと承認という要素があったなら、チャット上で仕事のやり取りが発生 → 正式なタスクはタスク管理ツールに登録する → レビューが必要な事項はタスクにその旨を設定後、当該管理者の予定を押さえる、のようなフロー(流れ)が想定されます。また個人で、たとえば記事や SNS の投稿を生業としている場合も、情報収集ツールで情報を集める → ネタになるものをブックマークで溜める → 書けそうなものを下書きツールで書いていく → 清書は清書用ツールで仕上げる → 投稿先にコピペして投稿、のようなフローがあるでしょう。通常、仕事ではこのようなワークフローは自ずと構築されていきます。ワークフローツールは、このようなフロー(の各々で必要な作業)を自動化しようというものです。いちいち手作業でやるのは面倒ですし、人間なのでヌケモレもありますが、ワークフローを定義してツールの力で自動で流せるようになると安定的に素早くこなせます。

盤外戦をする

盤外戦を重視しよう、と考えます。

盤外戦とは、タスク管理そのものよりも、より高次の視点での対処を行うことです。たとえばタスクの発生源そのものに働きかけたり、タスクを遂行する自分自身の心技体を変えたり改善したりといったことです。タスク管理という盤上の戦いではなく、その外の戦いにこそ目を向けようというわけです。詳しくは後の章で扱うとして、ここでは盤外戦を重視するスタンスをいくつか紹介するに留めます。

あそびや余裕を持つことや、それらを侵食させないことは盤外戦の一つでしょう。仕事と生活の配分はよく議論になりますが、ワークライフバランスという言葉もすっかり久しく、今はワークインライフと言ったりします。これはワーク一辺倒ではなくライフを行う余裕も持とうとも言えるでしょう。ちょうど一つ前の項で述べた「タイムボックス」も、ある意味これです。仕事する時間枠を強制的に決めることで、それ以上生活という余裕が侵食されるのを防いでいます。

また調動脈の脈、文脈を重視することも盤外戦のセオリーです。タスクにバカ正直に向き合うのではなく、その文脈――背景や前提や真意などを探って、ショートカットしたり根本から解消したりするためのヒントを探します。ただし、こちらは泥臭く向き合うことにも等しいため、手間暇がかかりがちです。特に文脈は誰かの脳内にのみ存在するケースも多く、その人から引き出すためには信頼関係の構築も必要で、なおさら時間がかかります。人間関係的な気力も消耗します。このように、余裕を持つこととは相反する傾向があります。一方で、最初に苦労して文脈をしっかりと把握しておけば、後々首が締まらずに済みます。文脈を考慮した必要最小限の行動で済みますし、何なら先回りしてタスクの発生を抑えることもできるからです。直感に背くかもしれませんが、長期的に見ると余裕の担保にも繋がるのです。このスタイルが如実に求められるのがいわゆる新事業の開発で、顧客の隠れた文脈そしてそこから見えてくる真のニーズを探るための慌ただしく動きます。これができないと「一生答えにたどり着かない」もありえます。

もう一つだけ紹介すると、タスクを一気に処理するという考え方もあります。たとえば普段地方に住んでいる人が、久しぶりに1週間の東京旅行に行く場合、東京で行える用事をこの1週間でこなしたいと考えますよね。そのための準備は惜しまないはずです。このような考え方をタスク全般に適用するイメージで、「まとめて処理する」タイミングを常にうかがう形になります。一見すると面倒くさいことをしているように見えますが、たくさんの情報や制約から上手く準備する作業は楽しい(旅行計画が楽しいのと一緒です)ですし、この準備作業を通じて文脈の理解もできたりしますので、意外と理にかなっています。軍師というと大げさですが、そのような営みが好きな人には向いています。

まとめ

本章では個人タスク管理をいくつかの観点で眺めました。各観点ごとのまとめは各節冒頭を参照してください。

  • タスク管理する人としない人
    • 特性や状況に依存する
    • トレメントに耐えられる人はする・できる
    • ゼロイチではなくグラデーションがある。自分なりのバランスを模索すれば良い
  • 忘迷怠、調動脈、熱夢集
    • 忘れる迷う怠けるを減らして、確実にこなすか
    • 調子と動機と文脈を踏まえて、納得感を持って望むか
    • 熱中と集中と夢中を制御して、快適に取り組むか
  • 浅く管理するか、深く管理する
    • 最小の手間で済ませたいなら浅く。色んな手段とツールを駆使して全部管理する。几帳面さが必要
    • 前に進みたいなら深く。多数を捨てて少数にフォーカスする。捨てる意思決定を素早くこなす地力が必要
  • ツールはアナログか、デジタルか
    • アナログには頭の良さ(処理性能)が必要
    • デジタルにはスキルと勉強が必要
  • 戦略(どんなやり方や考え方で管理するか)やスタンス(こういうときはこう対処する的な姿勢)も色々とある