「小学生の時にね、こんな馬鹿なことを考えていたの。星の光は何万光年てあるわけでしょう。だから、空にカメラを向ければ、大昔の写真が撮れるんじゃないか、そういうものができないかなって」
ショウビジネスの世界に入ってからも、ジャニーズのステージで早変え用のズボンを考案するなど、アイデアマンとしての彼の才能はいかんなく発揮された。子供の頃から日本の芸能界の人たちに囲まれて育ったという彼の環境が、人脈だけでなく感覚的にもショウビジネスの世界への道を用意したのだろう。
ジャニーズ時代はこのまま続くのか
ジャニー喜多川の才能とは何か。「発想力」、光GENJIにローラースケートをはいて歌わせた。「人脈」、ジャニーズのデビュー曲『若い涙』は作詞永六輔、作曲中村八大、編曲服部克久であった。「勉強家」、ジャニー作ミュージカルではアングラ的要素を引用することもある。それらすべてが、ジャニーの才能であり、武器であることは確かだ。
しかし、ジャニーをジャニーたらしめている最大の特殊技能がもうひとつある。それは、少年たちの潜在的なスター性を見抜く眼力だ。
「男性アーチストは本当に難しい。たとえばバンドだと、ボーカルがいいとか、音がいいとか、分かるでしょう。でも、まだ中学生ぐらいの男の子にスターとしての将来性があるかどうかなんて、普通分からないですよ」と、SMAPを担当するビクターエンタテインメント常務取締役、飯田久彦は話す。
フォーリーブスの頃からジャニーと面識のあるソニーミュージックエンタテインメント取締役の加藤哲夫も「小学生の子供を見ると、それなりに皆可愛いじゃないですか。でも、成人した頃、この子はきれいになるとか、生意気になるとか僕なんかはわからない、それが、ジャニーさんは長年小学校の先生をやっている人のように、どう変わるか分かるんだろうね」と、同じ見方をしている。
たしかに少年隊の東山にしても、SMAPの木村にしても、結成当時の彼らの顔や印象から、今の輝きを想像することは難しい。
「僕はオーディションの時は好きな子しか選ばないんです。才能以前に、どこか可愛いなと思える子ですね。いくら才能があっても、嫌いな子をいくら仕込んで、スターにすることはできないですよ。ジャニーさんも同じじゃないですか」とTBSの柳井プロデューサーは分析する。
取材の過程で見た、どうしても忘れられない光景がある。ジュニアのレッスン場を訪れたときのことだ。一人の少年が持っていたポテトチップスを口にしたジャニーは「おいしいな、これ。何味なの」と少年に尋ねると、少年は「ワサビ味だよ。ジャニーさん知らないの」と答えた。ジャニーは袋の底に少し残ったポテトチップスを「知ってました? おいしいですよ」と私にも差し出した。