わかさん

情緒、障害、移住。 忘れそうで忘れない記憶。

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最近の記事

ふたつの名前を持つことへの限界

その名前を呼ばれただけの物語があり、その物語は人生を支える血肉となる。 私が下の名前で呼ばれるのを好むのは、人生を包括してくれる名前が「和香」しかないからである。これまで名乗ってきた苗字が複数あって、どの苗字で呼ばれても「あぁ、私だぁ」という感覚が持てなくて居心地が悪い。 現状、社会活動(という言葉が全く好きではないので口にしたくないが)をするときの名前が「竹口和香」という。この名前を使って書いた文章で賞を取り、名前を検索すると記事がずらりと並ぶようになった。プロフィール

    • ひとり休息旅、尾道「LOG」に身を預けた一夜

      尾道旅記録、第一弾はこちら。 「LOG」おひとりさまプラン今回のお目当ては「LOG」での宿泊でした。観光目的ではなく逃避目的だったので、できるだけ自分の心身の速度をゆるめられる場所選び。 「LOG」は、千光寺にあがる階段の途中にあります。電話をしたら階段の下まで荷物のピッキングに来てくださります。 繭に守られる306号室 案内されたのは、306号室。扉を開けると柔らかな白に包まれた空間が。 全て和紙職人さんの手で作られた空間なのだそう。テーマは「繭(まゆ)」。 繭の

      • 「愛」を知らない私が涙を許す場所

        孤独を知っているから海は美しいものだと思えるし、言葉の温度を感じることができる。 散々「愛」を履修する機会を得てきたはずなのに、私の中にはまだその概念を説明する機能が備わっていない。二人称の関係性を孤独の越境とするなら、孤独と生き、それを原動力とする私にとって、愛は自己の喪失になる。 海は見返りを求めない。幼いころからずっとそこにいて、いつだってひとりだ。海は私と繋がることはできないけど、私の孤独を、孤独のまま肯定してくれる。海も限りなく広い孤独。その佇まいに、私は何度も

        • 赤いちょうちんが照らす「湯村温泉」、職権濫用と忘れたくない笑顔たち #ちょうちんまつり

          ひとり○○に、ひとり祭り歩きは入ります?めちゃめちゃ楽しめたんやけど。 私が住む町、新温泉町にある湯村温泉では7月20日〜9月28日までの2ヶ月間、毎週土曜日に「ちょうちんまつり」をやっていたそうで、最終日に遊びに行ってきました。 誰よりも職権濫用をして遊んできたので、ここに当日の愛おしい風景を残しておきます。(全ての方に取材、撮影、掲載許可をもらっています) どどん! 16:00 お祭り開始、まずは杜氏館へ 夕方にお祭り開始。ぷらぷらと温泉街を歩いていると「日本酒

        ふたつの名前を持つことへの限界

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        • 情緒
          11本
        • 移住日記
          9本
        • 摂食障害
          7本

        記事

          【イベント告知と思い】11/3(日)13:00〜 #食べるとアート2024

          Xでお知らせしたイベントですが、ようやく詳細が決まりつつあるので告知です💛いつもこの時期に年イチのリアルイベントをしている気がする。 このイベントへの思い自分の心がどんな声をあげたいか、言葉にならないときがありませんか?それを五感を使ってアートで表現してみませんか。本物の植物を手にとって自由に表現できるボタニーペインティングの講座を行います 摂食障害について誰かと共通言語を使ってお話しする機会は持てていますか?自分一人で抱えるには大きすぎる荷物、私の話を通じて少し心を休め

          【イベント告知と思い】11/3(日)13:00〜 #食べるとアート2024

          気づいたら、花嫁になってた

          気づいたら花嫁姿で高校生と結婚した日があったので記録しておきます。 その日もいつも通り町役場で仕事していた。お手洗いから帰ってくるとなんだかデスクががやがやしており、急に「ねぇ、やります?」と聞かれた。 「なんのことですか」 「いや、それはあれなんだけど、やる?」 「いつの話ですか」 「9月22日」 「いけますね」 「ほな決まりで!ありがとう!」 「ちなみになんの話ですか?」 「但馬牛まつりの花嫁役」 なにそれめっちゃおもろいやん。 但馬牛にまつわる昔からの風習で、

          気づいたら、花嫁になってた

          心の休息に「尾道」という選択肢。私の旅ルールと町との触れ合い。

          日常を懸命に生きるには逃避が必要だ。 夏休みにひとりで尾道へ行った。数ヶ月前から計画をしていた旅。充分すぎる事前調べをもとに期待いっぱいに訪れたけど、実際の尾道には想像の何倍も柔らかに満ちた時間が流れていた。今回は心の休息を目的とした旅のマイルールと私が見た尾道の姿をご紹介します。(具体的なスポットは別noteでまとめます) 休息旅のマイルールまず休息旅のマイルールについて。これがなかったら逃避にはなりません。 平日に休みを取って行くこと スマホをサイレントモードもし

          心の休息に「尾道」という選択肢。私の旅ルールと町との触れ合い。

          好きな人とごはんを食べられること

          それがどれだけ難しいことで、どれだけ変えがたい幸福か。 3連休もあってか、人と食事をする機会が増えた。朝ふらっとモーニングをしにパン屋さんに行って、その場でパンを選んで食べる。19時半からカフェでごはん会をして、21時ごろに〆の炭水化物まで食べる。家に帰ってお酒を飲みながら夜更かしをする。 私にとってはどれもが特別で、こんなことができる今の自分を誇らしく思いたいとすら感じる。うん、誇らしく思っていいと思う。 誰といても、相手との会話よりも目の前のごはんのことで頭がいっぱ

          好きな人とごはんを食べられること

          夏の終わり、クモの巣とゴミ当番とディオール好きの彼氏

          移住記録です。先月の記録はこちら。 移住記録がまだ3回目であることに驚いている。まだ3ヶ月なの? 最近、周りの人が何を言ってるのかようやく理解できるようになった。「こないだ芦屋でな」と聞いたときに、高級住宅街を思い浮かべることはなくなり「あ、その海の前ね」と返せるようになったし、「居組の案件やけど」と言われて「どこの団体の話ですか?」と聞くこともなくなった。 昼はクーラーがないと溶けてしまいそうなのに、夜の海は半袖じゃ寒い。さすがの寒暖差に寝込む日が数日続いた。コンビニ

          夏の終わり、クモの巣とゴミ当番とディオール好きの彼氏

          フォロワちゃんが北海道から会いに来た

          尊い時間に出会ってしまった。 数年前、私は摂食障害のピアサポート(おふたりトーク覚えてる人がいたら古参ファンです)をしていた。毎週のように摂食障害を抱えた子とお話しをして、きっと200人くらいの子と知り合ったと思う。 彼女は当時高校3年生だった。オンラインでお話ししてたときよりも随分と髪は伸びていて、印象が変わっていた。 今何年生だっけ?と聞くと、「大学4年生になりました」と。そりゃ髪も伸びるよ。そんなに経ってたの?驚いた。 その子は手一杯のおみやげを持ってきてくれて

          フォロワちゃんが北海道から会いに来た

          父という人

          父がうちに泊まった。 30歳になる年。同じ屋根の下で眠るのは20年ぶりだった。 3ヶ月前に私が越した町に父が遊びにくると言う。「待ってるわ」と軽く流したら、本当に会いにきた。 「純米吟醸持っていくからコップ冷やしといて」と連絡が入り、私は家にある透明のグラスを冷凍庫に入れて、しばらく紙コップで暮らした。 父は阪大の医学部を卒業して心臓内科医としてめきめき働いている。たくさんお金を稼いで、本を書いたりアテネに出張に行ったりしていた。 初めて父と母が目の前で喧嘩したのを見

          父という人

          「彼女たち」

           初めて顔を合わせたその6人は本名を名乗り、一夜を共にした。  匿名のアカウントで呟かれる「彼女たち」の混沌とした日常。「彼女たち」は、食べることに困難さを抱えている。その病を摂食障害という。  私は5年前に実名で摂食障害を公言した。摂食障害を症状としての身体ではなく、言語で表現していく。言語は他人に拓けることができ、手を繋ぐことができる。共に闘うことができるのだ。  食べられなくなる人もいれば、自分で止められない食欲に襲われる人もいる。食べるとは生きることであり、生き

          「彼女たち」

          体型の話

          銭湯へ行った。 花火大会の前日だからか、いつも数人のおばあさんと風呂に入るのだが、その日は親子連れや私と同じくらいの歳の友人同士もたくさんいた。 よく他人の体を観察してしまう。 人工的な(無理の効いたともいう)体がずっと好きだった。骨々しかったり、脂肪のない直線だったり、横から見た体の薄さだったり。その体から滲み出る、孤独とか、冷たさとかが、自分に共鳴するようだった。 自分の興味が痩せから、自分自身とか人生の豊かさ、みたいなものに移り変わってきたのは最近のこと。十何年も痩

          2ヶ月目、ウソをつけない海

          最近、「こんにちは」のように「慣れた?」と聞かれる。 移住して2ヶ月が経った。「まだ2ヶ月か」という気持ちが強いが、慣れたかと聞かれたら「生きてはいるが」という感じだ。とはいっても、そんな回答では気を遣わせてしまうので「ぼちぼちです」と答えるようにしている。 移住と言ったが大阪にも家を置いてる身なので、私は月に1週間ほど大阪に帰る。1日に2本、片道3時間半。朝5時半に起きれたら昼前に大阪に着くのだが、荷造りすら当日までできないタチなのでいつも昼前の便に乗る。 先日大阪に

          2ヶ月目、ウソをつけない海

          らっこと、嫉妬

          「昨日さ、友達とらっこの話しててんけど」 梅ソーダを吸いながら彼女が言った。 「らっこ?なんなんそれ」 「いや、その子がらっこめっちゃ好きみたいで2時間くらい話した」 いやごめん、どういうこと? 試しにどんな話だったのかと聞いてみる。そしたら、らっこの進化がめっちゃ可愛くて、貝殻を割る石のためにポッケができたらしい、らっこって漂流せんためにみんなで手繋いで寝るらしい、みたいな話を楽しそうに話した。昨日の夜11時までらっこの話してたんだよねと言った。ね、らっこ可愛くない?

          らっこと、嫉妬

          オンナとして見られるということ

          29歳になって思うのは「楽になったなぁ」ということだ。 この歳になってようやく「オンナとして見られる」とか「男からは好かれるが女から酷く嫌われるポジション」みたいな機会が減った。 特に学生の頃は、自分の女性性や容姿が人生を困難にさせた。 女からは対等に見られることはなく、大抵ファンクラブができるくらい崇められるか、イジメや噂の標的になった。そんなで私も女を全く信用していなかったように思う。お互いが、自分の地位を保つための道具のようだった。 男からは漏れなく性的対象とし

          オンナとして見られるということ

        わかさん|note
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