野党第1党、立憲民主党の今後は? 他の野党との結集は? 中堅・若手の中心人物、重徳和彦氏に聞いた

2023年11月10日 06時00分
 岸田政権が経済対策の迷走や副大臣・政務官の相次ぐ不祥事などで失速する一方、野党への期待も高まっていない。そんな中、野党第1党の立憲民主党の中堅・若手議員でつくるグループ「直諫ちょっかんの会」の動きが注目を集めている。会の代表で「党を根本からたたき直す」と訴える重徳和彦衆院議員(愛知12区)に、旗印とする政策や、政権交代への展望などを聞いた。(大野暢子)

 直諫の会 2019年、重徳和彦氏を中心に結成。当初のメンバーは立憲民主党、国民民主党、無所属に分かれていたが、現在は全員立民所属で、衆参の国会議員計18人が参加する。メンバー15人が政権奪取への思いや政策論をまとめた共著「どうする、野党!?」の出版を記念して10月5日に東京都内で開いたパーティーには、立民の泉健太代表や菅直人、野田佳彦両元首相をはじめ、国民や野党系無所属の国会議員を含む1000人以上が参加した。

◆「政権批判だけでは有権者の期待を集められない」

 ―政権交代への道筋は。
 「政権を批判しているだけでは、有権者の期待を集めることはできない。現政権では実現できない政策を具体的に提案し、有権者に『こちらの方が良さそうだぞ』と思わせる戦略だ」

インタビューに答える「直諫の会」代表の重徳和彦衆院議員

 ―直諫の会は、かかりつけ医による予防医療を制度化する「日本版家庭医制度」を提唱している。
 「高齢化が進む中、社会保障費の増大を抑えるためにも、予防中心の医療に切り替えるべきだ。今でもかかりつけ医という言葉はあるが、定義や役割が必ずしも明確ではない。それが、新型コロナ禍で医療にかかれない人が相次ぐ事態につながった。あらかじめ自分のかかりつけ医を登録できるようにし、日常的な健康相談や初期医療を保障するべきだ。『患者が増えるほど医師がもうかる』と言われている現行制度を大転換させる。かかりつけ医の制度化に否定的な日本医師会と密接な関係にある自民党では、実現は不可能だ」

◆少子化対策、担当相は「首相に次ぐ重要ポストに」

 ―「増子化ぞうしか社会」に向けた取り組みも掲げている。現政権の少子化対策とはどう違うのか。
 「私たちが目指すのは単に出生率を上げることではなく、誰もが子を産み、育てたいと思う温かい地域社会。最重要政策なのに、歴代政権の少子化担当相は十分な権限や財源を与えられていない。私たちは増子化社会づくり担当相を首相に次ぐ重要ポストとし、全省庁ににらみを利かせながら大胆な施策が打てるようにする。政策の優先順位をつけるのが政治の役割だ」

インタビューに答える「直諫の会」代表の重徳和彦衆院議員

 ―「国立農業公社」の設立も目指すと。
 「農林水産省の推計では、今後20年で日本の基幹的農業従事者は120万人から30万人に減るとされる。島国の日本が食料の大半を輸入に頼る現状は安全保障上も極めて危うい。私たちの構想では、農業をしたい人を国が一括採用して技術指導し、農地と安定した所得や社会保険を保障する。中山間地の荒廃にも歯止めがかけられる。補助金に偏る古い農政を続ける自民党にはない発想だ」
 ―安全保障や外交、憲法ではどう独自性を出すか。
 「憲法は天皇制の1~8条と平和主義の9条は大切にし、それ以外は国民とともに柔軟に議論するべきだ。個人的には、国土と食の安全保障を政府の責務として書き込むべきだと思う。(私の地元の)三河地方の海側にも山がたくさんあるが、中山間地の過疎化で国土の3分の2を占める森林が荒れ、災害が甚大となり、農地や水源地が外国資本に買収されている。与野党で行われている9条への自衛隊明記、緊急事態の際の国会議員の任期延長の是非といった矮小わいしょう化された議論を国民は求めておらず、国民投票に付する価値はない。より大きな視点で改正論議をするべきだ」

◆国民民主とは「明日にでも一つになれる」

 ―会の目標は。
 「将来、党代表を輩出する。さらに、政権交代をへて『直諫の会内閣』をつくり、こうした改革を実現する」
 ―どの党となら組めるか。
「立民と国民民主党には政策的には何の違いもなく、明日にでも一つの党になれる。日本維新の会も大阪では無視できない存在。私たちが志す改革は維新から出てきてもおかしくない内容だ。わが会も結成時は無所属、立民、国民の議員からなる集団だった。特定の党を排除することはない」
 ―野党結集の結節点になれるか。
 「直諫の会は一人一人の知名度は低いが、地域に根差した活動を重ね、逆風下の選挙を勝ち抜いてきた若手・中堅ばかりだ。彼らを率いる者として、政権奪取を目指す先頭に立つとの気概で、党を超えた人間関係の構築に努めていきたい」

 重徳和彦(しげとく・かずひこ) 1970年、愛知県豊田市生まれ。県立岡崎高校、東京大法学部卒業後、総務省入省。在職中の2009年、地域活性化やボランティアに取り組む国家・地方公務員をつなぐ「地域に飛び出す公務員ネットワーク」を設立した。総務省を退職し、11年の愛知県知事選に出馬(次点で落選)。12年衆院選で初当選し、現在4期目。党代表政務室長代理。

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