大阪在住の女性Ｒ様から「会いたい」とご連絡をいただき、朝七時半に新大阪駅に行った。直前で八時に時間変更になり、場所も大阪駅に変えてくれと言われた。私は「新大阪に来てしまったので新大阪でお願いします」と言った。別に大阪に行ってもよかったのだが、言われ方が微妙で、なんだか自分と自分の時間を軽く扱われている気がして、頑固者になった。これは、悪い予兆である。

Ｒ様とは揉めに揉めた。ひたすら一問一答をしてくるＲ様に「お前はインタビュアーか」と思った私は、攻撃は最大の防御と言わんばかりの勢いで「あなたがやっていることは質問ではなく詰問であり、尋問と同じだ」と、返す刀で反撃をした。聞くと質問するは違う。相手が語り出すまで待てず、無理やり引き出そうとするのは拷問と同じ。Ｒ様も「せっかく会えたからいろいろ聞きたいだけ」と反論。私は「聞かれていると言うか、奪われていると感じる」と応戦。場がバチバチした。

誤解されると困るが、Ｒ様は失礼な女ではない。真面目で優しく行儀良いのだが、真面目さと優しさと行儀良さが裏目に出て、そこはかとなくよそよそしく、表面的には「人のため」と思っているのだが、行動の全部が「自分のため」「自分を守るため」になっているように見えたから、私はそこを突いた。コミュニケーションしたいと言いながら、コミュニケーションをするつもりがない。自分なんてそんなそんなと言いながら、リングにあがることを避けて、俺一人にシャドーボクシングをさせる。謙虚な振りしてクソ傲慢。リングにあがれ。綺麗な言葉で自分の気持ちをラッピングして、無難に終わらせようとすることをやめろ。

私は吠えた。お互いを知ることが大事だと言いながら、あなたの貴重な時間を奪うわけにはいかないとか謙虚ぶって、自分を隠して、俺にばかり語らせて、美味しいところだけ取ろうとするのは一番卑しい。今日はお時間ありがとうございましたとか言われても嬉しくない。お会いできて嬉しかったですとかなんだよ。お行儀良いけど気持ちがない。俺はお前にお湯をぶっかけられたんだよ。お湯をぶっかけられたら熱いんだよ。それなのに「火傷させて楽しかったです」ってなんだよ。お前はサイコパスか。こっちは怪我をしているんだよ。そこを無視して自分の満足ばかり語るなよ。

人と会うのは剣術の稽古に似ている。喧嘩の稽古と言ってもいい。言葉を磨き、剣術を磨く。言葉と言葉の真剣勝負である。道場破りの流れ者。油断すると火傷する。太陽は、温かいだけではないのだ。命のやり取りに勝る愛はない。俺たちは、抱き合う代わりに斬るのである。別れ際、Ｒ様から「ハグしてもいいですか」と聞かれた。私は、何かを曖昧にさせるハグは嫌いなので「ここは握手にしましょう」と言って、握手をした。俺もＲ様もボコボコになったが、悪くない時間だった。その後、別の女性と合流して昼から酒を飲み、ベロンベロンに酔っ払った私はその人の介護を受けながら北新地にあるホテルに運ばれて性的な展開を迎えることになるのだが、それはまた別の話。