『バンドやろうぜ!』制作チームが8年間の思いを語る“10,000字インタビュー”②
2024.10.13
アニプレックス(以下、ANX)が主体となって企画、運営されたスマートフォン向けリズムゲーム『バンドやろうぜ!』(以下、バンやろ)。サービス終了から既に5年以上が経過しているにも関わらず、そのファンダムは衰え知らず。なぜ、このような状況がつづいているのか? チームスタッフ3人が8月に開催したイベントを振り返りながら、その背景と『バンやろ』を支えつづけるファンへの想いを語る。後編では、『バンやろ』のサービス終了までの経緯と今後の展望、それぞれのファンへの想いを聞いた。
足立和紀
Adachi Kazuki
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』プロデューサー/ダチピー
安谷屋光生
Adaniya Mitsuo
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』音楽ディレクター/アダニー
齋藤亜希子
Saito Akiko
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』国内ライセンス担当
記事の前編はこちら:『バンドやろうぜ!』制作チームが8年間の思いを語る“10,000字インタビュー”①
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――残念ながら『バンやろ』は2019年3月にサービスを終了することになります。この決断はどのように受け止めたのでしょうか。
足立:ビジネスの面で見たときにローンチから多少回復はしたものの、そもそもの運営費を賄ってつづけていけるだけの収益は見込めず、よく使われる言葉ですが「お客様の満足行くサービスを続けていくのは困難」という状況でした。「ここまできて終了はもったいない」という声もあったんですけどね。
――今回も含めて、サービス終了後にもイベントは実施されています。これはカタチが違ってもIPとして『バンやろ』をつづけるという意思表明だったのですか。
足立:実は“つづける”という判断をしているわけではないんです……。サービス終了が決定した段階でクリスマスライブの企画は既に動いていたんですね。だから、運営として最後の打ち上げ花火のつもりで2019年にライブイベント『バンドやろうぜ!Christmas Duel Carnival』を開催しました。
それがひとつの節目としてあって、普通の展開ならばあとはイベントのパッケージを発売して終了……のはずだったんですが、ちょうどライブ直後からコロナ禍に入ってしまったんですね。
2020年からしばらくいろいろな活動が完全にロックされてしまって、クリスマスライブのパッケージもしばらくは発売を見送ることにしたんです。個人的にはクリスマスライブのパッケージを発売したら「『バンやろ』は本当に終わるんだな」という気持ちもあって、ためらう気持ちも正直ありました。
そのいっぽうでファンの皆さんからは「クリスマスライブのパッケージを早く出してほしい」という要望も強くあって……。SNSのハッシュタグなどで、しきりに『バンやろ』についてつぶやいてくれている方々の思いも見ていました。
そしてコロナ禍が終わるか終わらないかギリギリのタイミングで意を決してクリスマスライブのパッケージの発売と、その宣伝施策として、クリスマス・デュエルカーニバルBlu-ray&DVD発売記念上映イベント『Re:Carnival~また聖夜に会いましょう~』を実施したんです。
その時点でサービス終了から3年くらい経っていたので、ファンの皆さんがどれくらい残ってくださっているのかわからなかったのですが、開けてみたらすごい盛り上がりで。そこでライブイベント『バンドやろうぜ!ドリームマッチ デュエル・ギグ 2023 RAVEN/ADVENT』を発表したんです。
そのときにファンの皆さんに「次が本当に最後になるかもしれない」とお話して、出し惜しみせずにできる限りのことをやろうと。『バンやろ』は毎回、過去のライブを超えることを目指していて、それをファンの皆さんに評価していただいた。その結果の連続として『バンやろ』はたまたまつづけられているという感じなんですよね。
齋藤:私としては、そういうファンの熱量をさらに高めているのは、ダチピーさんの人柄もひとつの理由としてあると思っています。例えば『バンやろ』のSNSでの情報発信は、プロデューサー自らが担当しているんです。
普通は宣伝スタッフなどが担当するものですが、大事なことを伝えるときはダチピーとして本人が発信しています。ほかにも、ライブハウスでトラブルがあったときも、ダチピーさんがマイクを持ってお客さんの前で説明するんですよ。そうやってプロデューサーが表に立ってくれるから、ファンの皆さんが作品にも親近感を持ってくださるんだと思います。
足立:ライブの発表とか良いお知らせだけでなく、ゲーム運営中のさまざまな悪いお知らせ含めて全ての責任に対してファンに向き合うのが自分の役割だと思っていたのと、それが可能だったのは、『バンやろ』がオリジナル作品だったということも大きかったですね。
――ダチピーさんとファンの距離感が、作品の盛り上げにもつながっていたんですね。
齋藤:はい。ファンの皆さんの熱意や親近感は確実に作品を後押ししてくれていて、『バンやろ』がさまざまな企業とお取組みさせていただいた際、コラボ先の企業にファンの皆さんがお手紙を書いてくださるんです。先方のご担当者からは、「こんなIPないですよ!(笑)」とご報告いただくのですが、それを聞くと私もうれしくなります。おかげで「カラオケの鉄人」や「ばくだん焼本舗」の皆さんと、それぞれ複数回コラボをさせてもらっています。
また、アニプレックスプラス(現、アニプレックスオンライン)の5周年記念の際にはユーザーの皆さまから商品企画を募集する「#アニプレ商品開発部」という企画があったのですが、『バンやろ』関連の商品化希望がダントツだったんです。
実は今でもこのハッシュタグは動いていて、ファンの皆さんからの『バンやろ』を終わらせないぞという熱い思いを感じていますし、皆さんの愛のおかげで『バンやろ』は今も生きているんです。
――今回のライブイベント「Dream Match Cover GIG 2024 Ragna-Rock」には、『バンやろ』を支えてきた多くの作曲家、クリエイター、声優が参加されています。スタッフの皆さんの『バンやろ』にかける愛情の強さも感じますね。
安谷屋:今回のライブイベントに参加してくれた演者の皆さんは『バンやろ』に特別な思いを持って挑んでくださっているので、本当にありがたいです。だからこそ、私たちも『バンやろ』のイベントをやりたいなって思うんですよね。
――そういったファンとクリエイターの熱い思いはANX社内にも伝わっているんでしょうか?
齋藤:実は『バンやろ』を社内の人たちが思い出す、年に2回の節目があるんです。ひとつは周年である10月13日のゲームのローンチ日です。その日にはファンの皆さんからお祝いが届きます。
そしてもうひとつがバレンタインデー。キャラクター宛にたくさんの贈り物や手紙が届きます。「今年もすごいね! 『バンやろ』」と社内で盛り上がるので、社内でのプロモーション効果はすごく大きいです(笑)。
――『バンやろ』を愛する人たちの気持ちが伝播していって、サービスが終了してもその熱が冷めないんですね。
足立:こういうところもやはりオリジナルIPであることが大きかったと思います。原作があるIPを違うメディアで展開するときに、クリエイター全員が同じ高い熱量を持つっていうのはなかなか難しいと思うんですが、『バンやろ!』はオリジナルIPだから、クリエイターのみんながオリジナルの根幹の部分を作っている感覚、当事者感覚を共有できているのかなと。
だから、スタッフもファンもみんなが親の目線で『バンやろ』を見ている感じがあって、我が子に対する愛情のようなものを、作品に抱いているんだと思います。『バンやろ』のこの部分は自分が作った、この部分は私が育てた、この部分は自分だけが知っている魅力だ……って。特にファンの皆さんは、『バンやろ』をいまだに生きつづけさせてくれている原動力でもあるので……本当にありがたいです。ライブイベントは保護者会の気分ですよ。
――1年後には10周年イヤーにも突入しますが、今後の『バンやろ』の展望はどのように考えていますか?
足立:もう運営していた時間よりも、サービスが終了してからの時間のほうが長くなっているんですよね……(苦笑)。
齋藤:10周年を迎えるまで、あと2年。私のミッションはそれまでに企業の皆さんとのタイアップなどをつなげて、『バンやろ』を微力ながら支えていくことです!
安谷屋:またライブイベントをやるとなると、新しいものも考えていかないといけないですしね。
足立:ANXの数々のヒット作品に比べるべくはないのですが、ただ、まだファンの皆さんが期待してくれているというならば、『バンやろ』なりにではありますが、これからも検討していきたいとは思っています。
――最後に、それぞれから『バンやろ』をずっと応援しているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
安谷屋:『バンやろ』に関しては、いまだに当事者感覚というか、自分が何かをしたという感覚は正直あんまりなくて……それよりも企画の立ち上げを含めた10年間で、一緒に成長させてもらったなという感覚がすごく強いんです。
初めてO-EASTのような大きなステージに立って、ファンの皆さんの顔を見たら、笑顔がすごく素敵で……見ていると泣きそうになってしまって、ごまかしごまかしギターを演奏していました。皆さんの思いがあったから、ここまでつづけられてきたのだと改めて思いましたね。自分のこれからの成長のためにも、ファンの皆さんのためにも『バンやろ』は欠かせないコンテンツだなと感じています。引きつづき応援よろしくお願いします。
齋藤:そういうの泣きそうになるのでやめてください!(笑) ファンの皆さんもスタッフも、『バンやろ』にストレートに愛をぶつけてきてくれるんですね。『バンやろ』は本当に皆さんの愛によって支えられているコンテンツだなと感じています。
毎回、ライブイベントに来てくださるお客さんの顔を見ていると、イベントが平日であったとしても、お仕事や学校を終えられてから会場に駆け込んでくださって、終わったあとは全力で楽しんくれたことがひと目でわかる方や、なかには感動して泣きながら帰られる方もいます。
皆さんのそういう表情が見られるだけで、やって良かったと思いますし、またやりたいなと思うんですよね。ゲーム自体はサービスが終了していますが、引きつづきライセンス担当として、さまざまな施策や社内でのアピールもつづけていきますので、今後も応援をお願いいたします!
足立:ここまでいろいろと作品への思いを語らせていただきましたが、重ね重ね、『バンやろ』がここまで展開できているのはファンの皆さんのおかげです。バンドが好きで、『バンやろ』が好きという気持ちは、皆さんと同じで全員と共有できていると思っています。
ただ、ひとつだけみんなとは違って、これは今後も自分だけが持ちつづけていかなければいけないものがあって……。それは“贖罪”です。
『バンやろ』をゲームとしてつづけることができなかった責任は、すべてプロデューサーである自分にあります。こんなに素敵な作品を素敵な人たちと作っていて、素敵なファンの皆さんに支えてもらっていたのに、サービスをつづけていくことができなかった。
今でも作品のことを褒めてもらえるたびに、うれしい気持ちの半面、じゃあなんでゲームはつづけていけなかったのか? あのとき、もっとできることはなかったのか? という反省の思いはずっとあって、それが恐らく自分だけが『バンやろ』に対して今でも常に抱いている思いです。
だからこそ今でも『バンやろ』を好きでいてくれる方たちには報いたいなと思っています。
今、自分たちがやっていることは好きじゃなければ絶対にできないことだと思います。だからこそ二度と悔いを残すことなく、一つひとつ全身全霊で思いっきり楽しませてもらっていますし、バンやろを好きになってくれたファンの人たちにも、これからも楽しんでもらえたらなと思っています!
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文・取材:志田英邦
撮影:干川 修(インタビュー/ライブ)
©BANYARO PROJECT
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