『バンドやろうぜ!』制作チームが8年間の思いを語る“10,000字インタビュー”③
2024.10.13
アニプレックス(以下、ANX)が主体となって企画、運営されたスマートフォン向けリズムゲーム『バンドやろうぜ!』(以下、バンやろ)。サービス終了から既に5年以上が経過しているにも関わらず、そのファンダムは衰え知らず。なぜ、このような状況がつづいているのか? チームスタッフ3人が8月に開催したイベントを振り返りながら、その背景と『バンやろ』を支えつづけるファンへの想いを語る。中編では、ゲーム開発の経緯と『バンやろ』の魅力を紐解いていく。
足立和紀
Adachi Kazuki
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』プロデューサー/ダチピー
安谷屋光生
Adaniya Mitsuo
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』音楽ディレクター/アダニー
齋藤亜希子
Saito Akiko
アニプレックス
『バンドやろうぜ!』国内ライセンス担当
記事の前編はこちら:『バンドやろうぜ!』制作チームが8年間の思いを語る“10,000字インタビュー”①
記事の後編はこちら:『バンドやろうぜ!』制作チームが8年間の思いを語る“10,000字インタビュー”③
――2016年にローンチされたスマートフォン向けリズムゲーム『バンやろ』は、そもそもどのような経緯で生まれたタイトルだったのか、改めて教えてください。
足立:2014年ごろだったと記憶していますが、当時、私は岩上敦宏(現、ANX代表取締役執行役員社長)のもとでスマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)の立ち上げに携わっていたんです。
まだ『FGO』が開発中だったころ、その開発を手がけていたディライトワークスにお声がけをして、『FGO』とは別でオリジナルの企画を立てたんです。それが『バンやろ』の始まりでした。
――スマートフォン向けのリズムゲームはそのころ既にいくつか人気タイトルがあったと思いますが、ダチピーさんがバンドもの、音楽ものを選んだのはなぜですか?
足立:自分は高校、大学でバンドを組んでいたこともあって、いつかはバンドもの作品をやりたいとずっと思ってたんです。また、ソニーミュージックグループという会社の強味を考えると、音楽を題材にすればグループ内のシナジーもいかせるのではないかという考えもありました。
――オリジナルゲームを作った経験はあったのでしょうか。
足立:初めてです。当時はまだANX内でゲーム事業が始まっておらず、完全に手探りの状態でした。アニメ『ペルソナ』シリーズでご一緒したシナリオライターの方やキャラクターデザイナーの方にお声がけして、ゼロから『バンやろ』の世界観や物語、キャラクターを作っていきました。
安谷屋:それが10年前くらいですよね。そのときにダチピーさんと、「出てくるのは、どんなバンドがいいか」という話をしました。まだちゃんとした企画書もなくて、ゲームの内容は口頭で説明してもらったような気がします。
例えばBLASTだったら、ストレートなロックバンドが良いとか。OSIRISはヴィジュアル系の要素を入れたいとか。ああだこうだ言いながら、一緒にキャラクターのイメージを組み立てていきました。
――齋藤さんはそんな『バンやろ』のキャラクターイメージを聞いて、どんな印象を持ちましたか?
齋藤:私が『バンやろ』の企画に本格的に参加したときには、キャラクターイラストの原案は既に上がってきていて、その原案をもとに4つのバンドのプロフィールを考えるというタイミングだったんです。
それぞれのキャラクターが好きなバンドには、実在するバンドをあてはめていったんですよね。それを考えるときが本当に楽しくて、このキャラクターだったら絶対にこのアーティストを聴いているだろうというように、キャラクターのイメージをふくらませていきました。
足立:今でも『バンやろ』のホームページに、キャラクターのプロフィールが載っているんですが、好きなバンドはちゃんと実在するバンド名にしているんです。伏字とか、名前を変えたりしないで、ここはやっぱりちゃんと書こうって思ったんですよね。あれで作品の世界観と現実との地続き感や、キャラクターに興味を持ってもらうことができたんじゃないかなと思います。
齋藤:そうですね。実在するバンド名が並んでいたから、共感してくれるファンの方も多かったんだと思います。
安谷屋:ただ……このキャラクターを設定した我々の世代がバレますよね(笑)。
齋藤:あとは、キャラクターの身長、体重、血液型、誕生日、キャラクターのイメージカラーも決めましたね。生年月日はとても大事なんですよ。そこからキャラクターの性格も見えてくるので、いろんな偉人の誕生日やできごとを調べました。最後まで本当にこれで良いのか……と迷った記憶があります。
安谷屋:すごく細やかなところまでこだわるなって感心したんですよね。
足立:そうそう。キャラクターも基本の設定は自分で考えていたんですが、誕生日とか血液型までは考えてなかったんです。自分が足りてないところを女性の目線で埋めてくれて、年齢や性別問わず、幅広い方が好きになってくれるキャラクターが完成したなと思っています。
――ローンチした当時の手ごたえはいかがでしたか?
足立:今では考えられないようなトラブルが続出して、とにかく対応に追われていたということと、ユーザーの皆さんにご迷惑をおかけしてしまったという記憶が一番ですね。そもそも『バンやろ』は予定よりも1年間ローンチを延期しましたし。1年後にようやくリリースできたと思ったら、今度はトラブルの連続で……。運営ゲームの難しさを痛感しましたね。
そこから『バンやろ』がまともに運営できるようになるまで半年くらいはかかったと思います。だから、そこからサービス終了までだいたい2年弱、なんとかファンの方々に支えられて運営できたという感じでした。スタートから終了まで、一度も順風満帆とはいかなかったですね。
齋藤:当時はまだゲームアプリ界隈も黎明期で『バンやろ』に限らず色々な作品でトラブルもあったように思います。近年では開発もしっかりしていて、昔ほどこういうことは少ないかもしれないですね。
足立:ただ、運営が正常になって、そこからの半年ぐらいは売り上げが徐々に改善していったんです。通常ゲームのKPI(業績評価指標)は一度落ちると、なかなか元には戻らなくて、落ちていくいっぽうというのが業界の通例なのですが、『バンやろ』は一度落ち込んでから回復したんですよね。ちゃんとしたゲームになればIPとしてのポテンシャルは高いものになっているんだなと、そのときに感じました。
――それにしてもサービスは5年以上前に終了していながら、これだけ熱狂的なファンに支えられているIPは珍しいですよね。皆さんは『バンやろ』の魅力はどんなところにあると考えていますか?
足立:キャラクターやシナリオ、リズムゲームの根幹となる音楽は、どれもすごく良いものになっているという確信は当時からありました。『バンやろ』でしか味わえない楽しさがあって、それがファンの皆さんにちゃんと届いていて、ライブに行きたい、キャラクターたちに会いたいという思いにつながったのかなと思います。
齋藤:インターネットで『バンやろ』をエゴサすると、ビジュアルはもちろんですが、ほかのゲームにはない独自のシナリオを評価してくださっている声が多いのが特長だと思っています。『バンやろ』が唯一無二のものになっていて、そこをファンの皆さんが支持してくださったのかなと。
あとはやっぱり楽曲のカッコ良さ。今でもファンの方々が『バンやろ』の音楽の魅力を拡散してくださっているんです。そうすると、「サービスは終了していてゲームはプレイできないけど、音楽が好きでファンになった」と言ってくださる方も現われました。まさにファンがファンを呼ぶという最高の流れができあがっていったんです。
安谷屋:音楽やシナリオはもちろんのこと、バンドの成長を身近に感じられるという点も『バンやろ』の魅力であり、愛される理由だと自分は感じています。実はゲームがローンチする前に、我々音楽制作チームからの提案で、登場するバンドをリアルに稼働させるという企画を立てたんです。
まずは来場者ゼロからメジャーに上がっていくプロセスをリアルなバンドでやってみようということで、OSIRISの活動を100人くらいで満員になるような規模の小さなライブハウスで開始させました。
当然ゲームがローンチする前なので誰もOSIRISのことなんて知らず、最初のライブはお客さんが数人……ライブハウスの知り合いとか、音楽のスタッフも呼んで、最終的に13人でしたね。もちろん楽曲だってオリジナルが1曲ぐらいしかできていなかったので、カバー曲を中心にライブをしたんです。
その後も月1~2回ぐらいライブをつづけていったのですが、だんだん楽曲も増えていって、本当のバンドが成長していくような感じがありました。
その後ゲームがローンチするとお客さんがあっという間に増えていって、ライブにも1,000人以上のファンの方が入るようになりました。そういった実際のバンドの成長があったからこそ、ファンの皆さんのなかにも“自分が一緒に育てた”という感覚が生まれたのかもしれないですね。
珍しい企画でもあったし、信じてついてきてくれた1,000人、2,000人のファンの皆さんが、さらに多くの方々を呼んでくれて、今も応援してくれているのかなと思っています。
足立:自分もその企画を聞いたときには、かなり燃えました。最初はお客さんが少ない状態だったけれど、ライブが終わったあとにみんなで反省会をして。その熱量は間違いなくファンの皆さんにも伝わっていたと思います。
後編では、『バンやろ』のサービス終了までの経緯と今後の展望、それぞれのファンへの想いを聞く。
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文・取材:志田英邦
撮影:干川 修(インタビュー/ライブ)
©BANYARO PROJECT
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