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ドラ新監督就任 ファンの「熱」に報いよ

2024年10月12日 05時05分 (10月12日 05時05分更新)

 プロ野球、中日ドラゴンズの新監督に井上一樹氏が就任した。今季、主催試合の総観客動員数は16年ぶりに230万人を超えたものの、チームは球団初の3年連続最下位。ファンの「熱」や「愛」にまるで報いられなかったシーズンというほかない。その無念さをこそ、新監督の下で再出発するチームの原点としてほしい。
 ドラゴンズの本拠地の1試合平均は3万3533人で前年より1割近く増えた。球団の営業努力もあろうが、プロ野球全体の観客動員数が約2670万人と史上最多を記録したことを考えると、国内の「野球熱」の高まりが根本にあることがうかがえる。
 影響が大きいのは、昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の劇的優勝であり、その立役者だった米大リーグ・大谷翔平選手の以後も続く歴史的な活躍だろう。ファン層が広がり、バンテリンドームナゴヤでも若い客層が目立つようになった。
 球団によると、特に増えたのが女性。お目当ての選手を追う「推し活」が定着し、音楽ライブさながらペンライトを振ったり、試合を楽しむ様子を交流サイト(SNS)で発信したりする、新しい観戦スタイルが好まれている。
 新指揮官の井上氏は、今季を含め2軍監督で実績を残し、阪神でもヘッドコーチを務めるなど若手育成の経験を買われた。中日の選手会長時代には、ドーム近くの地下連絡通路を大型ポスターで彩る「ドラゴンズロード」誕生に携わるなど、ファンサービスにも理解が深い。来季は、グラウンド上での「最大のファンサービス」に期待がかかる。
 2026年には球団創設90周年を迎えるが、セ・リーグを制したのは11年が最後。クライマックスシリーズ(CS)の出場さえ12年間もない。低空飛行の間、監督は5人交代したが、その都度、ドラフトの力点は変わり、監督頼みの場当たり的改革しか行われてこなかった印象が強い。球団として中長期的なチーム強化のビジョンを持つことが肝要だ。その上で指揮官のカラーを出していけばよい。
 投の高橋宏斗、打の細川成也両選手ら、前任の立浪和義監督の下で芽吹いた才能も少なくない。それを伸ばし、かつ、井上氏の力で新たな戦力も育てる。それがうまくいくなら、次のシーズンは「竜の季節」になるかもしれない。

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