ビジネス

2019.05.10 08:00

福岡で起業家を生み出すコミュニティは、いかにして生まれたのか?

サイノウCEO 村上純志

スタートアップの開業率は4年連続で7%台を維持するなど、ここ数年で「スタートアップの街」というイメージが根付いてきた福岡。なぜ、福岡はここ数年の間で急激な変化を遂げたのか。その背景には福岡市長の高島宗一郎が旗振り役となり、改革を推進していったこともあるが、重要な役割を果たしたのは「コミュニティ」の存在だ。

福岡県にはイノベーションを生み出すコミュニティ「明星和楽」や、官民共働型スタートアップ支援施設 「Fukuoka Growth Next」などがある。こうしたコミュニティから起業家が次々と生まれていっている。

まだ福岡県がスタートアップの街として知られていない頃から、コミュニティづくりに注力してきた一人がサイノウの村上純志だ。彼はなぜ、コミュニティづくりに取り組んできたのか。福岡県の歩みとともに、コミュニティづくりの意義を聞いた。

日本の「SXSW」を作りたい

僕は現在、福岡のスタートアップコミュニティを盛り上げるべく、NPO法人AIPの事務局長や、サイノウの代表取締役CEOを務めています。また、これまでは福岡からイノベーションを生み出すコミュニティ「明星和楽」や福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設 「Fukuoka Growth Next」の立ち上げにも参画してきました。

僕が福岡で活動を始めたのは2008年ごろ。プロジェクト管理ツール「Backlog」や、ビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」を開発する福岡のベンチャー企業、ヌーラボ代表取締役の橋本正徳さんに再会したことがきっかけになっています。

当時の福岡では、橋本さんの働きかけによって、起業家やエンジニア、デザイナーが混ざり合ってお互いに勉強し合う「コミュニティ」が醸成されつつありました。お金をもらえるわけでもないのに、自分のビジネスアイデアや技術を発表している人びとがたくさんおり、これまでに感じたことのない熱量を感じたんです。

そんなコミュニティの盛り上がりに賛同した仲間たちがひとつに集まったのが「明星和楽」誕生のきっかけでした。

当時はまだ音楽や映画、最先端のテクノロジーを融合させたフェス「サウス・バイ・サウス・ウエスト」が注目を集めておらず、ネット上にも少ない情報の中、僕らもカオスから生まれるセレンディピティによる「熱狂」を作りたいと思ったんです。ただ、誰も現地で見たことはなく、サイトやツイッターでの情報を見て、見よう見まねだったので、結局SXSWとは全然違うけど面白いと言ってもらえるフェスになったんですけど。記念すべき第一回は2011年11月11日から、起業家のピッチコンテストに始まり、クリエイティブに関するトークショー、夜はクラブイベント…3日間ぶっ通しでイベントを行いました。


毎年、テキサス・オースティンで開催されている「SXSW」
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構成=半蔵門太郎 写真=小田駿一

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2019.07.25 15:00

ビッグデータ活用で病気の再発を防ぐ。医療費削減に取り組む、名古屋大発スタートアップ

PREVENTの萩原悠太

「日本のヘルスケア産業は、ダイエットをはじめとした健康に関心の高い人をより健康にするサービスが主流です。たとえば、歩くとポイントが貯まったり、運動をたくさんするとクオカードをもらえるキャンペーンがありますが、上位の人たちは健康自慢な人ばかり。本当に必要な人たちに対してサービスを提供しなければ社会課題の解決にはならない」

こう語るのは、名古屋大学医学部発のスタートアップ、PREVENTの萩原悠太だ。経済産業省の推計値によれば、ヘルスケア産業は2016年の約25兆円から2025年には33兆円にまで成長すると予測される注目産業。

萩原は、予防医学の研究者になることを夢見て、理学療法士として病院で働いていた。そこで直面したのは、いくら優れた研究や医療従事者が揃っていても病気が重症化した場合、再発を防ぐことが難しい現実だ。

たとえば、脳梗塞を発症した患者は、5年以内に30%も再発する。原因のひとつが生活習慣。脳梗塞などの動脈硬化が原因で起こる病気は、生活習慣により全身の動脈硬化が進み、一度発症した後も、生活習慣が改善されず再発する。

心筋梗塞が発症し、生活習慣を改善するために、フィットネスクラブへ入会しようと思っても、心疾患のため断られることもあるという。

ビッグデータで疾病を予測シミュレーション



萩原らは、企業の健康保険組合と提携し、これまで眠っていた組合員の健康診断などのビックデータを有効活用している。

「ビッグデータを利用し、将来の医療費や発症予測のデータ解析をしています。現在、我々のクライアントである健康保険組合には過去数年分の健康診断データやレセプトのビッグデータがあります。名古屋大学と共同で開発したアルゴリズムを用いて、予測シミュレーションを行っています。そのなかで病気の発症リスクが高い組合員に対し重症化予防の健康づくりプログラムを提供している」(萩原)

具体的には、「Mystar」と名付けられたスマートフォンのアプリやウエアラブル端末などを使い、脈拍や歩数、塩分摂取量などのライフログを記録する。アプリを通じて医療従事者とチャットや電話での面談を行い、プログラムの効果を高くしている。また、医学的な研究結果やデータに基づいた教材を提供し、正しい知識を得ることもできる。

実際にPREVENTの前身である名古屋大学大学院医学系研究科(保健学)山田研究室では、生活習慣改善プログラムを実施した脳梗塞患者の3年以内の再発率は3%と、通常の10分の1まで抑えられたという。Mystarではこの研究成果を応用した生活習慣改善サポートを提供している。
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文=本多カツヒロ、写真=小田駿一

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