つつきの衝撃はまったく軽減されていなかった!
本研究では、「キツツキが脳を保護するために衝撃を吸収している」という大方の説を検証するため、高速度カメラを用いて、3種のキツツキのつつき行動を撮影しました。
対象としたのは、クマゲラ、エボシクマゲラ、アカゲラの3種で、木をつつく様子を1秒間に最大4000フレームで記録し、衝撃を受けた際のくちばしや頭の微妙な動きを分析しました。
その結果、つつきによる衝撃はまったく減衰しておらず、くちばしや頭へ衝撃をまともに受けていたのです。
動画上で、キツツキのくちばしとその付け根、それから脳の部分に色違いのマーカーを付してみると、すべての箇所が木をつついた瞬間に、まったく同じスピードで停止していました。
これは、くちばしから頭蓋骨に至るまで、衝撃を一切吸収していないことを意味します。
次にチームは、キツツキの身体測定値と、衝撃発生時の頭部の平均速度をコンピューターモデルに組み込み、「衝撃を吸収しないモデル」と「衝撃を吸収するモデル(くちばしと頭蓋骨の間に衝撃吸収材があると想定)」の2パターンを作成して比較。
その結果、衝撃を吸収するモデルの場合、木をつつく力が極端に弱まることがわかったのです。
研究主任のサム・ヴァン・ワッセンベルク(Sam Van Wassenbergh)氏は、こう説明します。
「もしキツツキが、衝撃を吸収しながら木をつつくとしたら、非常に余分なエネルギーコストがかかります。
脳への衝撃を軽減するクッションを内蔵していると考えた場合、木に穴を開けるためには、今よりもっと強い力が必要となるでしょう」
では、衝撃吸収材を備えていないのに、どうして脳へのダメージがないのでしょうか?