カルチャー

2024.10.11 13:15

「SHOGUN 将軍」に出演、ハワイ在住俳優・平岳大「日本人俳優よ、いまこそ海外に出よ」

プロデューサー真田広之の存在は大きかった

話を「SHOGUN 将軍」に戻そう。実はこの作品をリメイクするにあたり、企画の段階で何度か潰れかけたそうだ。「最初の頃の企画は、いわゆる日本のトンデモ描写が多かったと聞いています。それをここまでの作品に仕上げたのは、ひとえに真田広之さんのプロデューサーとしての力量。これに尽きます」と平は語る。

例えば、不自然な日本語のセリフがあったとしても、俳優は相手役のセリフにまで口を出せないが、プロデューサーなら全編にわたって目を光らせることができる。真田は不自然なセリフを1つ1つ指摘して修正を交渉していったそうだ。

「元は英語の台本を日本語に訳し、その際に日本人の専門家が言い回しの時代考証をするのですが、それでも不自然な言い回しが出てきます。日本人の感覚でそれを修正できる真田さんというプロデューサーがいたのは、大きかった」

筆者が作品を観た印象でも、夜の室内はきちんと暗く、昼間でも屋敷の奥は暗い。足袋と草履で戦う様や、平が演じた石堂が官僚仕事で押す判子や朱肉といった小物にまで、専門家による時代考証が徹底していると感じた。

「ハリウッド製作の作品で、現場で何かを修正するのは、本当に大変なこと。セリフ1つ変えるのにも監督だけでなくプロデューサーや脚本家、時代考証の専門家など多くの人が関わります。予算も大きいと、それだけ関わる人も多いのです。

真田さんが、大げさな表現を嫌い徹底的に時代考証に即したからこそ、この作品が生まれたと言っていい。派手なシーンがあるわけではなく、極端な見せ場があるわけでもない。それでも何かを印象づける演技が役者に求められた。チャンバラはなかったけど、演技は常に”真剣勝負”でしたよ」

そんななかで、次第にスタッフの間でも日本という異文化をリスペクトする空気が生まれていったという。平が語る。

「撮影半ばを過ぎたあたり、プロデューサーのジャスティン・マークスが、自身が編集したトレーラー(予告編)を関係者に観せる席で、10分くらい日本語でスピーチしたのです。これはハリウッドのクリエーターとしてはあり得ないこと。日本とハリウッドが文化的に互いに対等になれたのかなと思えた瞬間でした」

エミー賞授賞式のパーティーでは、女優のナオミ・ワッツ(夫のビリー・クラダップは同賞の助演男優賞を受賞)が、平のもとに寄ってきて「あなたの演技がとても良かった」と言葉をかけたという。平はそのときの喜びを次のように語る。

「え? 本当に僕のこと? と疑ってしまったくらい。それくらい僕が演じた石堂には、目立つアクションシーンもないし、チャンバラも腹切りもない。ある意味で地味かもしれない演技が、彼女には響いていたのです。それは役者としてすごく嬉しいことだったし、これでいいのだと吹っ切れた瞬間でした」
次ページ > ハワイにいるから、俳優活動ができる

文=岩瀬英介

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経済・社会

2024.07.25 14:15

ハワイで112年の歴史を持つ日系新聞社「ハワイ報知」が突然の倒産

Shawn Azizi / Shutterstock.com

ハワイで112年の歴史を持つ日系企業「ハワイ報知社」が、7月8日、突然倒産することになった。「私的整理」という形だが、長年の歴史を持つ日系企業が倒産というニュースは一気にハワイを駆けめぐった。

ハワイのある関係者によれば、現地の社長に倒産が知らされたのは実に倒産の2営業日前だったそうで、まさにドタバタの倒産劇だった。それにもまして、ハワイ報知社の親会社である静岡新聞社の動きも、いささか急だったようだ。

2023年12月に廃刊となった新聞「ハワイ報知」。海外では最古の日本語日刊新聞だった

2023年12月に廃刊となった新聞「ハワイ報知」。海外では最古の日本語日刊新聞だった

何故「私的整理」に踏み切ったのか

実は、以前から経営危機は噂されており、昨年12月には、1912年から発行を続けていた日刊新聞「ハワイ報知」の発行を取りやめたばかり。その後は印刷会社として経営を続けていたものの、もう持ち堪えられないと私的整理に踏み切った形だ。

何故ここにきて私的整理に踏み切ったのだろうか。

「日系人読者の高齢化やコロナ禍の影響でホテルや航空会社などの契約先を失って部数減に悩んでいたのは事実。売上の多くは別の新聞やパンフレットなどの商業印刷業でまかなっていた。ただ、赤字経営はいまに始まったことではなく以前からの課題。再建に取り組んでいたなかで、日本の親会社が何故いま決断を下したのは不可解」(地元メディア関係者)

ハワイ報知は、1912年12月に故牧野金三郎氏によって創刊。日系移民の人権擁護と人種の垣根を越えた言論活動を展開し、ハワイの日系移民の歴史とともに歩んできた。

1941年12月8日、真珠湾攻撃翌日に発行されたハワイ報知の紙面

1941年12月8日、真珠湾攻撃翌日に発行されたハワイ報知の紙面

1941年12月の真珠湾攻撃も一面で伝えた。1960年代に、静岡新聞社の当時の大石光之助社長の援助を受けて経営存続を図り、海外では最古の日本語日刊新聞となっていた。今回、会社が倒産したことで、現社長が推し進めていた新聞の歴史をアーカイブとして閲覧する取り組みも頓挫してしまった。筆者の実感としても、ハワイの歴史の貴重な記録が失われた観がある。

ちなみに、私的整理の決断を下したのは、静岡新聞社の現会長の大石剛氏。ハワイ報知の支援を決めた大石光之助氏の孫にあたる。年に3〜4回はハワイに出張し、ハワイ報知社の経営にも積極的に関わってきた。今回の私的整理劇でも、自らハワイを訪れて陣頭指揮を取っていた。

ハワイ報知社の旧社屋は、丹下健三氏の設計で1972年に建立。建築マニアが見学に訪れる建物だった(写真は現在の様子)

ハワイ報知社の旧社屋は、丹下健三氏の設計で1972年に建立。建築マニアが見学に訪れる建物だった(写真は現在の様子)


倒産前のハワイ報知社社屋のエントランス。左が同社創業者の牧野金三郎氏、右が静岡新聞社初代社長の大石光之助氏の銅像

倒産前のハワイ報知社社屋のエントランス。左が同社創業者の牧野金三郎氏、右が静岡新聞社初代社長の大石光之助氏の銅像

ハワイ報知社の社屋には2つの銅像が飾ってある。一つは同社創業者の牧野金三郎氏、もう一つはハワイ報知を救った静岡新聞社初代社長の大石光之助氏。その銅像を見て、大石剛氏は、どのように思ったのだろうか。

次ページ > 実は多い日本企業がオーナーの会社

文・写真=岩瀬英介

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ライフスタイル

2024.05.01 15:45

大谷選手はなぜ「ハワイ島」を選んだか 楽園の島のプライベートリゾート事情

Getty Images

大谷翔平が動くと、メディアも動く。その一挙手一投足が話題を生むあたり、プレー以上にメディアへの影響力はパワフルだ。

よくハワイのホテルを、Wi-Fiやパーキング、有料の水など「何か動くたびにチャリンチャリンと課金される」と揶揄する観光客がいたが、何かするたびに世界中が騒ぐのも大変なことだろう。

大谷選手の話題でいま真っ盛りなのが、ハワイ島のリゾートに別荘を購入したこと。場所はハワイ島の西側、マウナケアリゾート内に新たに開発されるハプナエステーツというエリアだ。

マウナケア(maunakealiving.comより)

大谷選手が購入したハプナエステーツを含むマウナケアリゾートの全景(maunakealiving.comより)

別荘自体は米ドルで1700万ドル(日本円で約26億円)とのことで、ドジャースと10年で約1000億円の契約をした大谷選手からすると、ごくごく一部の出費なのかもしれないが、その価格と併せて連日報道が喧しい。

米メディア「ウォール・ストリート・ジャーナル」が不動産購入を報じたのが皮切りとなったようだが、それによれば大谷選手は開発を手がけるカリフォルニア州の不動産会社と、宣伝・販売の際には名前と肖像を使用できる契約を締結したそうだ。また購入したハプナエステーツでは最初の契約者だったために、一等地を占有できたとも報じられている。

ハワイの現地でもそこそこ地元メディアで報道されてはいるが、その反応はやや冷ややか。というのも、ハワイでは「派手な別荘購入話」はあふれていて、マーク・ザッカーバーグがカウアイ島に1億ドル(約156億円)以上を投じて広大な土地を購入した、ジェフ・ベゾスがマウイ島に7800万ドル(約122億円)の豪邸を購入した、などなど枚挙にいとまがない。

オラクル創業者のラリー・エリソンに至っては、ラナイ島の98パーセントを所有している。世界中のセレブたちが巨額なハワイの不動産を購入して、プライベートジェットで乗りつけるのが日常茶飯事となったいまでは、それほど驚くような話題ではないのだろう。

プライバシーが守られる「ゲーテッド」

大谷選手によれば、2つの完璧なビーチ、2つの素晴らしいゴルフコースがあるこのマウナケアリゾートは、冬の間を過ごす自宅になるとのこと。

マウナケア(maunakealiving.comより)

マウナケアリゾート内にあるゴルフコース(maunakealiving.comより)

公式ウェブサイトによれば、「パラダイスを見つけました」とまるで使い古された宣伝文句のような感想を大谷選手は漏らしているが、雪を頂くマウナケア山の頂上から、ハプナビーチの綿のように柔らかい砂浜、コバルトブルーの太平洋まで、遮るもののない眺望と、多彩なアメニティを楽しめる。

テニスやウォータースポーツを楽しめる施設に、オーシャンビューのレストランが8つ。 プールやフィットネス施設、スパなども完備され、会員しか立ち入ることができない。

空港への送迎、自動車のバレーパーキングサービス(鍵を預けるとポーターが車を運んでくれるサービス)、到着前に冷蔵庫に食料品を買い揃えておいてくれるサービスなどもあり、全ては専門のコンシェルジュチームが対応する。
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文=岩瀬英介

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