食&酒

2024.03.13 15:15

ハワイと広島、ブームの「おまかせ寿司」が繋ぐ意外な「絆」

松田氏は、小原夫妻の出身地である広島県に本拠を置く「ヒロマツホールディングス」の会長。自動車の「マツダ」創業家の1人でもある。ヒロマツホールディングスはマツダ車のディーラーである「広島マツダ」を中核としたコングロマリットで、傘下に33社の企業を抱える。松田氏は與平寿司について次のように語る。

「カリヒというハワイの下町で長年営業してきた與平寿司には、親子から孫まで3世代で通うファンもいて、地元日系人の憩いの場という印象でした。私自身も2008年に弊社75周年の社員旅行で初めて同店を訪れて以来、まるで親戚の家にでもいるかのような居心地の良さと大将の寿司の味に惚れて、ハワイに来るたびに家族で訪れる店になりました。

この店の繁盛ぶりを見ていると、長い歴史を生きてきた日系移民と、それを受け入れてくれたハワイローカルの姿をすごく身近に感じました。この店がなくなったら、常連客だけでなく、ハワイにとって損失ではないか。そう直感したのです」

店内は10席のカウンター席に、テーブルエリア、2つの個室がある。店内に2カ所化粧室があるのも日本人らしい心配りだ

店内は10席のカウンター席に、テーブルエリア、2つの個室がある。店内に2カ所化粧室があるのも日本人らしい心配りだ

最初は後継者探しを頼まれたという松田氏。実際に後継者となる寿司職人を広島で見つけてきたが、ちょうど松田氏の会社も事業の多角化を推進しており、海外事業や飲食事業の実績も積んでいた。與平寿司という事業自体も継承するのは、自然な流れだったという。

「何より事業展開の場所が憧れのハワイですからね。このプロジェクトに選ばれた社員は喜んでいると思いますよ。実際、関わるスタッフは皆ワクワクしながら取り組んでいました。私が何よりも大切にしたのは、與平寿司を受け入れ、育て、愛していただいたすべての皆さまに、いま私たちにできる最高の恩返しをしたいという想いでした。それは関わるスタッフ全員にも徹底しました」

そのとき、松田氏の目に浮かんだのは、原爆で焼け野原になった広島の光景だった。松田氏の祖父や会社の社員なども多くの人たちが犠牲となった。戦後、「未来」という1点だけを見据えて復興に取り組んだ広島の歴史と、同じく「未来」に向け必死で生き抜いたハワイ日系移民に、共通するスピリットを感じたのだそうだ。

小原夫妻の寿司から生まれた、広島とハワイの絆を絶やしてはならない。そんな使命感も松田氏を後押ししたという。

富裕層が多いカハラ地区で新趣向での挑戦を

当初は、本店を閉じて、他の地区に移転する予定だったそうだが、カリヒの本店はしばらく存続したまま新店舗をつくることになった。そのときちょうど、ワイキキからも近い富裕層が多く住むカハラ地区に、新たなショッピングモールをつくる計画を聞いたのだという。それが現在「與平寿司カハラ」があるクオノ・マーケットプレイスだった。松田氏が続ける。

「駐車スペースが豊富にある物件を探していたので、最適な場所でした。ただ、同じ店をつくっても仕方がない。本店の伝統はしっかりと残したまま、新たな挑戦をしようと決めました。カハラは富裕層が多く住む地区なのに、これまで高級寿司というジャンルの店がなかった。そこで、私たちがいまできる最高のお寿司屋をつくろうということになったのです」

しかし、店の工事に着手したのが、ちょうどコロナ禍に突入する頃。凝りに凝ったせいか、内装工事にはかなり時間がかかった。それだけに、地元の著名なインテリアデザイナーが手がけた内装は、これまでのハワイの寿司店にはないユニークでモダンなコンセプトとなっている。
次ページ > 細部にわたって魂を込める

文=岩瀬英介

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ホノルルで「日本人の生徒が語学学校を買収」話題の主に話を聞いた

ハワイの観光市場はだいぶ復活してきたようだ。

2023年9月末時点のデータによると、観光客数全体で言えば、コロナ禍前の2019年対比6.5パーセント減とほぼ回復している。ただ、日本人観光客に限ると、まだコロナ禍前の半分にも到達していない。

ハワイ在住の筆者からすると、ワイキキやアラモアナ、カカアコなどで日本人カップルやファミリーの姿をよく目にするようになったなぁと微笑ましく見ていたが、実態はまだまだ、とても微笑ましいと言えるレベルではないようだ。

一方で、ビジネスでのハワイ進出や、インターンシップ、留学などの問い合わせや視察は確実に増えている。留学マーケットに関わる、ある会社の人間は次のように語る。

「ビジネスでの移住前にとりあえず語学学校に入学してF1ビザ(留学ビザ)を取得し長期滞在しながら現地を視察するなど、留学やインターンシップはハワイ進出やハワイ移住のゲートウェイになってきている。円安の影響で、語学留学は物価の安いカナダやオーストラリア、フィリピンに流れる傾向があったが、やはり米国、そしてハワイのブランドは強い。ここへきて着実に戻ってきている」

確かにホノルルで学校見学する日本人の親子の姿もちらほら見かけるようになった。

そんなハワイの留学マーケットで、この年末に気になるニュースが流れた。「長い歴史を持つ語学学校が廃校を決めたところ、通っていた生徒が買収して復活させた」というものだ。

学校を生徒が買う!? そんな劇的な展開がハワイで起こったことにまずは耳を疑った。しかし、取材を進めるとまさに真実らしく、さらに筆者の身近なところに当事者がいることがわかってきた。そこで今回は事実を確かめるべく本人に話を聞き、いち早くこのニュースの裏側をお届けしたい。

舞台はハワイ最古の語学学校

舞台となった語学学校は、アラモアナにある「アカデミア・ランゲージ・スクール(Academia Language School )」。開校は1969年で、実は「ハワイ初の語学学校」という顔を持つ歴史ある学校だ。

「アカデミア・ランゲージ・スクール」が入るホノルルのパンナムビル

「アカデミア・ランゲージ・スクール」が入るホノルルのパンナムビル

以前から立地の便利さに加えて学費が比較的安く、かつ留学ビザでも週4日通学のコースがあるなど柔軟なカリキュラムも魅力で、現地では「ハワイ好きが集まる」という評判で留学マーケットでは不動の人気を誇っていた。
次ページ > M&Aを実行したのはハワイ在住の山口博道さん

文=岩瀬英介

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ライフスタイル

2023.12.09 12:00

ラリー・エリソンの理想を追求した「先生」という名のハワイ・ラナイ島のリゾート

米国の大手旅行誌『コンデナスト・トラベラー』が実施した読者投票ランキング「2023年リーダーズ・チョイス・アワード」が発表された。同アワードは、旅行業界で最も歴史が古く、権威のある読者投票として知られており、今年は52万人以上の読者が投票を行い、世界各地の旅行先が選ばれた。

このアワードのなかには「ハワイのベストリゾート部門」というものがあり、その内容を覗くと、ハワイに住む筆者としてはたいへん興味深い結果があった。

ハワイのベストリゾートとして堂々第1位に選ばれたのは、ラナイ島にある「センセイ ラナイ、ア フォーシーズンズ リゾート(Sensei Lanai, A Four Seasons Resort)」だった。ハワイのホテルとしては馴染みが薄いかもかもしれないが、実はここは知る人ぞ知る隠れ家リゾート。同アワードの「世界のベストリゾート部門」でも第5位にランクインされており、総合的にも評価が高い。

面白いのは、このリゾートのオーナーはオラクル・コーポレーション共同設立者のラリー・エリソンだということだ。リゾート名にある「センセイ」とは、日本語の「先生」という言葉に由来する。大の日本文化好きだというエリソンらしいネーミングである。

ロッジを貸し切るプライベートスパには、日本風の湯船も完備。敷地内には温泉もある

ロッジを貸し切るプライベートスパには、日本風の湯船も完備。敷地内には緑に囲まれた露天風呂もある

リゾート名は日本語の「先生」から

では、このリゾートの「センセイ」とはいったい何の先生なのか? それは「ウェルネス=健康」というテーマに特化した内容を教えてくれるのだ。

筆者からすると、資産家になればなるほど健康に関心が高くなるように思っていたが、実はテック界の有名ビリオネアに関して言えば、食生活には無関心な人たちが多い。

ビル・ゲイツはコーラやハンバーガーを好むことで有名だし、ジャック・ドーシーは1日の食事が夕食だけだったり断食を度々実践したりすることで知られている。マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクはビジネスタイムの食事には時間をかけず、こだわりもないと公言している。スティーブ・ジョブズも変わった食生活がたびたび報道されている。

安らぎの空間を提供している客室

安らぎの空間を提供している客室

ただ逆に、投資先としては健康や食の分野は活発だ。投資家としての顔も持つ俳優のレオナルド・ディカプリオは、培養肉を開発する2社のスタートアップ、オランダの「Mosa Meat(モサ・ミート)」、イスラエルの「Aleph Farms(アレフ・ファームズ)」、そして代替肉開発の「Beyond Meat」に出資している。さらに、バイオデータ分析をするヘルスケアソリューソン開発の会社やエナジードリンクやコールドプレスジュース販売会社にも出資している。彼自身も食へのこだわりが強いことでも知られている。

前述の食へのこだわりの薄いビル・ゲイツもBeyond Meatに出資している。ちなみに、ビル・ゲイツはエリソンとも交遊があり、結婚式をラナイ島で開催したのは有名な話。

さて、ラナイ島の話だ。ラリー・エリソンは2012年にラナイ島の土地の98パーセントを取得した際に、この島をサスティナブルな島にすることを公言した。その第一歩として、彼は人間のからだにとってもサスティナブルな島にしようと考えた。そのテーマが健康だったわけだ。

ロビーは開放的で、光に溢れている

ロビーは開放的で、光に溢れている

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文・写真=岩瀬英介

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