「今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい」

「今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい」
「あれは“性被害”だったのか」
「子どもが下着を下ろされた」

いま、男性や男児の性被害の相談件数が全国各地の支援センターで増加していることが、NHKが行ったアンケート調査でわかりました。

回答があっただけでも昨年度は少なくとも2500件近くに。
なかには3倍や5倍に急増したセンターもありました。

一方で、男性の性被害への相談対応に「課題を感じる」と答えたセンターは9割近くに。
“男性の被害を軽視する風潮”など解消すべき課題も見えてきました。

(社会部記者 富田良/首都圏局記者 古賀さくら/千葉局記者 木原規衣)

“男性の性被害相談”3倍に 増加の現場も

「少しずつ増えていたんですけれども、特に昨年度はぐっと増えています」

そう語るのは、性被害に遭った人からの相談に対応している富山県の「性暴力被害ワンストップ支援センターとやま」の責任者。

昨年度寄せられた男性の性被害の相談は、前の年度ののべ56件から172件と、3倍以上に増加しました。
例えば「子どもが下着を下ろされた」とか「わいせつな画像を送るよう求められた」といった保護者や学校などからの相談のほか、「過去の被害を思い出してつらい」と訴える成人もいるといいます。
性暴力被害ワンストップ支援センターとやま 木村なぎセンター長
「男性の被害の相談が増えた要因として大きいのは、ジャニーズの性加害問題がありニュースになったことだと思います。男性も被害者がいると認知され、被害者が声をあげていいという意識が広がったことで、被害者本人の相談もありますが、その周りにいる大人や親御さん、学校からの相談も増えています」。

増える男性の性被害相談 全国で1.5倍の一方で…

こうした性暴力の被害者を支援する「ワンストップ支援センター」は、電話相談や面談からカウンセリング、病院での診察や警察への相談など必要な支援を1か所で受けられるよう、すべての都道府県に設置されています。

NHKは男性への性被害相談や支援の現状を把握するため、ことし8月から9月にかけて全国の「ワンストップ支援センター」52か所にアンケート調査を実施しました。
この中で、男性や男児の性被害の相談を受け付けていると回答したのは51のセンター。

昨年度寄せられた男性の被害の相談件数は、内訳を回答した35のセンターだけでもあわせて2467件と、前の年度より782件増加。

1.5倍近くに増えたことがわかりました。

中には5倍や7倍に増えたセンターもありました。

回答では、去年の春以降、ジャニー喜多川氏による性加害問題などで、男性の性被害について取り上げられるようになった影響もあり、相談件数が増えたという声が数多く寄せられました。
「男性被害の相談件数が前年比1.9倍となっている。これまでにない増加である」

「性加害問題の報道をきっかけに保護者が子どもに声かけをして被害がわかったケースもあった」

「過去に受けた被害について、『今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい』という相談が増加した」
一方で、男性の性被害への相談対応に課題を感じるか、すべてのセンターに聞いたところ、結果はこのようになりました。
「課題を感じる」が27か所、「やや課題を感じる」が18か所、あわせて45か所と全体の87%に上りました。
「課題を感じる」と答えた45のセンターに具体的な内容を複数回答で聞いたところ、
▼「経験・スキルの不足」が26か所と最も多く、
▼「相談員の態勢」が21か所、
▼「周知・広報の難しさ」が17か所などと続きました。

また「その他」の中では
▼泌尿器科などの医療機関との連携をあげる声が多くありました。

“女性想定”が背景に? 転換へ模索も

「課題を感じる」と回答したワンストップ支援センターの1つ、「千葉性暴力被害支援センターちさと」。
10年前に総合病院の中に設置された病院拠点型で、性被害の相談に24時間対応し産婦人科や精神科などの医師が連携して診療するなど、女性の被害者に対しては手厚い支援態勢を取ってきました。
男性についても数年前から相談を受け付けていますが、相談員は女性のみで医療支援の態勢なども十分ではないと感じています。
相談員
「男性から電話で被害の相談はありますが、面接や診療まで求められることがないことは、女性の相談員ということを気にしているのかもしれません。また、一度だけ証拠採取のため産婦人科医が男の子を診療しましたが、大人の男性だったら診療できただろうかと心配です」
このため現在、県や警察とともに次の点について検討を進めています。
男性支援のため検討中の対応策
▽泌尿器科や外科など複数の診療科の男性医師に協力を求め、被害者本人の要望に対応できるようにする。

▽2次被害を防ぐ言葉づかいなど、勉強会を相談員や医師を対象に行う。

▽複数の相談室を確保し、女性の被害者と男性の被害者が接触しないよう工夫する。
千葉性暴力被害支援センターちさと 大川玲子理事長
「設立当初は女性の被害者ということしか想定していませんでしたが、男性の被害者に対応するシステムも必要だとは思ってきたので、きちんと構築していきたい。相談員や医師が女性だとだめということはないと思いますが、男性の方がいいという方もいると思います。相談に来て嫌な思いをしたということがないように努力していきたい」
アンケートでも「男性スタッフを配置」と回答したのは4割ほどで、そう答えたセンターからも「男性支援員が少ない」「対応日が限られている」と課題を訴える声がありました。

“男性専用窓口” 新たに開設の現場も

同じく「課題を感じる」と回答した徳島県では、県内3か所の「ワンストップ支援センター」で性別にかかわらず相談を受け付けてきました。

しかし、相談員の態勢や面談スペースの確保といった課題から、男性の相談については「電話相談」のみの対応にとどまっていたといいます。
そこで、ことし4月からセンターとは別に男性専用の相談窓口を新たに開設。

窓口では週に5日、常駐の男性スタッフが電話やメール、対面で相談に対応し、男性のための相談室も確保しています。
カウンセリングや性感染症の検査、弁護士による法律相談などが無料で活用でき、医療機関への付き添い支援も行います。

8月までに専用窓口に寄せられた相談は数件ほどと限られているそうですが、周知を図っていきたいとしています。
徳島県男女参画・人権課 森吉裕里さん
「ご相談の中で胸の内を明かしていただいて『気持ちが楽になった』という方もいて、被害に遭われた方の支えや助けになっているのではないか。一方で窓口の存在を知ってもらう方法は課題です。また、男性の被害者の方は非常にためらいがあるようで、ハードルが高いと感じる方もいると思う。週に5日設けているので困っている方はいつでも電話していただきたい」

男性の性被害軽視の傾向も… “弱音吐けない”意識も?

今回のアンケート調査では、相談や支援の態勢だけでなく、男性や男児の性被害を言いづらい風潮や軽視する傾向を課題として指摘する声も多くありました。
アンケートに寄せられた声
「男性・男児への性暴力被害は、被害者および相談を受けた側ともに、『たいしたことない、大丈夫だ』と考える傾向がいまだに強いように感じ、相談支援へのつながりにくさに影響している」

「学校での男児同士の被害の相談が増えたが、まだ学校現場の先生の意識は低く、『悪ふざけ』ですまされることが多い」

「男性特有の『弱音を吐かない文化』が多少残っているように感じ、相談へのハードルが高いのかもしれない。同性間の性被害は特に周囲からの理解が得られにくいと感じている方もいる」

「被害を家族に相談したところ『男の子だから』という理由で真剣に取り合ってもらえず誰にも相談できなくなったという人も」
こうした中、富山県では毎月街なかで行っている性に関する相談会の際に、駅などを通りかかった男性にも積極的に声をかけ、男性の性被害や相談窓口を周知しています。
配っているカードには具体的な被害例が記されています。
周知カードの被害例
▼からだをさわられる▼着替えやトイレをのぞかれる▼無理やりキスやセックスをされる▼性的な言葉をいわれる▼わいせつな写真を見せられる▼SNS上に性的な中傷を書かれたり画像をのせられたりする…など。
そして、次のように呼びかけています。

「性別問わず、あなたがイヤだと感じた性的行為はすべて性暴力です」

“振り絞った声” 次につなげる仕組みを

男性の性被害に詳しい臨床心理士の西岡真由美さんは、NHKのアンケート調査で見えた課題について、次のように指摘しています。
臨床心理士 西岡真由美さん
「助けを求めることは勇気のいる行動で、その“振り絞った声”を次につなげる仕組みが必要だ。今はセンター自体の運営体制が不安定なところもあるので、現場が困っていることややりたくてもできないこと、自治体だけではどうしようもないところを国も責任をもって受け止め取り組んでいくべきだ」
内閣府では「ワンストップ支援センター」を設置・運営する自治体が活用できる交付金を設けていますが、支援団体からは実態調査や予算の確保を要望する動きもあります。

西岡さんは、
▼相談員を増やすための人件費や相談しやすい環境の整備の費用などに、国の交付金をより柔軟に活用できるようにすることや、
▼相談や支援の事例を蓄積し、知識やノウハウを共有していくこと
を必要な取り組みとして挙げていました。

その上で、社会全体で意識を変えていくことが重要だと話していました。
臨床心理士 西岡真由美さん
「“男の子は強くあるべき”とか“男の子だったから抵抗できたんじゃないか”といった社会の思い込みがある。男性の被害も女性の被害と変わりなく、誰の身に起こっても命に関わるような深刻な影響を及ぼし得るものだと共有されていないことが、声のあげにくさや援助へのつながりにくさに関係しているのではないか。社会の意識を変えていくためにも幼稚園や小学校から男の子も被害に遭うということを教えることは必要な取り組みだ。そこから親に伝わり意識が変わることもあり、近道ではないかもしれないが、種をまいていくことが大事だ」
「性被害」と言うと、これまでは「加害者が男性、被害者は女性」というイメージを持つ人も少なくなかったかもしれません。

しかし性別にかかわらず、学校や職場などいろんな場面で性被害は起きています。

誰もが被害者になりえます。

性別にかかわらず、被害にあった人たちが声をあげやすい社会にしていくために、意識を変えていくことが大切だと感じます。
全国の「ワンストップ支援センター」は内閣府のホームページで紹介されています。全国共通の電話番号「#8891」から最寄りのセンターにつながります。
(9月25日 ニュースウオッチ9で放送)
社会部記者
富田良
2013年入局
長崎局で原爆を中心に戦争関連の課題や文化財をめぐる問題点などを取材
科学文化部を経て現所属
首都圏局記者
古賀さくら
前橋局、横浜局などを経て、2023年から首都圏局
千葉放送局記者
木原 規衣
2018年入局
甲府局を経て2023年から千葉局
「今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい」

WEB
特集
「今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい」

「あれは“性被害”だったのか」
「子どもが下着を下ろされた」

いま、男性や男児の性被害の相談件数が全国各地の支援センターで増加していることが、NHKが行ったアンケート調査でわかりました。

回答があっただけでも昨年度は少なくとも2500件近くに。
なかには3倍や5倍に急増したセンターもありました。

一方で、男性の性被害への相談対応に「課題を感じる」と答えたセンターは9割近くに。
“男性の被害を軽視する風潮”など解消すべき課題も見えてきました。

(社会部記者 富田良/首都圏局記者 古賀さくら/千葉局記者 木原規衣)

“男性の性被害相談”3倍に 増加の現場も

「少しずつ増えていたんですけれども、特に昨年度はぐっと増えています」

そう語るのは、性被害に遭った人からの相談に対応している富山県の「性暴力被害ワンストップ支援センターとやま」の責任者。

昨年度寄せられた男性の性被害の相談は、前の年度ののべ56件から172件と、3倍以上に増加しました。
例えば「子どもが下着を下ろされた」とか「わいせつな画像を送るよう求められた」といった保護者や学校などからの相談のほか、「過去の被害を思い出してつらい」と訴える成人もいるといいます。
性暴力被害ワンストップ支援センターとやま 木村なぎセンター長
「男性の被害の相談が増えた要因として大きいのは、ジャニーズの性加害問題がありニュースになったことだと思います。男性も被害者がいると認知され、被害者が声をあげていいという意識が広がったことで、被害者本人の相談もありますが、その周りにいる大人や親御さん、学校からの相談も増えています」。

増える男性の性被害相談 全国で1.5倍の一方で…

こうした性暴力の被害者を支援する「ワンストップ支援センター」は、電話相談や面談からカウンセリング、病院での診察や警察への相談など必要な支援を1か所で受けられるよう、すべての都道府県に設置されています。

NHKは男性への性被害相談や支援の現状を把握するため、ことし8月から9月にかけて全国の「ワンストップ支援センター」52か所にアンケート調査を実施しました。
この中で、男性や男児の性被害の相談を受け付けていると回答したのは51のセンター。

昨年度寄せられた男性の被害の相談件数は、内訳を回答した35のセンターだけでもあわせて2467件と、前の年度より782件増加。

1.5倍近くに増えたことがわかりました。

中には5倍や7倍に増えたセンターもありました。

回答では、去年の春以降、ジャニー喜多川氏による性加害問題などで、男性の性被害について取り上げられるようになった影響もあり、相談件数が増えたという声が数多く寄せられました。
「男性被害の相談件数が前年比1.9倍となっている。これまでにない増加である」

「性加害問題の報道をきっかけに保護者が子どもに声かけをして被害がわかったケースもあった」

「過去に受けた被害について、『今まで誰にも打ち明けられなかったが、話したい』という相談が増加した」
一方で、男性の性被害への相談対応に課題を感じるか、すべてのセンターに聞いたところ、結果はこのようになりました。
「課題を感じる」が27か所、「やや課題を感じる」が18か所、あわせて45か所と全体の87%に上りました。
「課題を感じる」と答えた45のセンターに具体的な内容を複数回答で聞いたところ、
▼「経験・スキルの不足」が26か所と最も多く、
▼「相談員の態勢」が21か所、
▼「周知・広報の難しさ」が17か所などと続きました。

また「その他」の中では
▼泌尿器科などの医療機関との連携をあげる声が多くありました。

“女性想定”が背景に? 転換へ模索も

「課題を感じる」と回答したワンストップ支援センターの1つ、「千葉性暴力被害支援センターちさと」。
10年前に総合病院の中に設置された病院拠点型で、性被害の相談に24時間対応し産婦人科や精神科などの医師が連携して診療するなど、女性の被害者に対しては手厚い支援態勢を取ってきました。
男性についても数年前から相談を受け付けていますが、相談員は女性のみで医療支援の態勢なども十分ではないと感じています。
相談員
「男性から電話で被害の相談はありますが、面接や診療まで求められることがないことは、女性の相談員ということを気にしているのかもしれません。また、一度だけ証拠採取のため産婦人科医が男の子を診療しましたが、大人の男性だったら診療できただろうかと心配です」
このため現在、県や警察とともに次の点について検討を進めています。
男性支援のため検討中の対応策
▽泌尿器科や外科など複数の診療科の男性医師に協力を求め、被害者本人の要望に対応できるようにする。

▽2次被害を防ぐ言葉づかいなど、勉強会を相談員や医師を対象に行う。

▽複数の相談室を確保し、女性の被害者と男性の被害者が接触しないよう工夫する。
千葉性暴力被害支援センターちさと 大川玲子理事長
「設立当初は女性の被害者ということしか想定していませんでしたが、男性の被害者に対応するシステムも必要だとは思ってきたので、きちんと構築していきたい。相談員や医師が女性だとだめということはないと思いますが、男性の方がいいという方もいると思います。相談に来て嫌な思いをしたということがないように努力していきたい」
アンケートでも「男性スタッフを配置」と回答したのは4割ほどで、そう答えたセンターからも「男性支援員が少ない」「対応日が限られている」と課題を訴える声がありました。

“男性専用窓口” 新たに開設の現場も

同じく「課題を感じる」と回答した徳島県では、県内3か所の「ワンストップ支援センター」で性別にかかわらず相談を受け付けてきました。

しかし、相談員の態勢や面談スペースの確保といった課題から、男性の相談については「電話相談」のみの対応にとどまっていたといいます。
そこで、ことし4月からセンターとは別に男性専用の相談窓口を新たに開設。

窓口では週に5日、常駐の男性スタッフが電話やメール、対面で相談に対応し、男性のための相談室も確保しています。
カウンセリングや性感染症の検査、弁護士による法律相談などが無料で活用でき、医療機関への付き添い支援も行います。

8月までに専用窓口に寄せられた相談は数件ほどと限られているそうですが、周知を図っていきたいとしています。
徳島県男女参画・人権課 森吉裕里さん
「ご相談の中で胸の内を明かしていただいて『気持ちが楽になった』という方もいて、被害に遭われた方の支えや助けになっているのではないか。一方で窓口の存在を知ってもらう方法は課題です。また、男性の被害者の方は非常にためらいがあるようで、ハードルが高いと感じる方もいると思う。週に5日設けているので困っている方はいつでも電話していただきたい」

男性の性被害軽視の傾向も… “弱音吐けない”意識も?

今回のアンケート調査では、相談や支援の態勢だけでなく、男性や男児の性被害を言いづらい風潮や軽視する傾向を課題として指摘する声も多くありました。
アンケートに寄せられた声
「男性・男児への性暴力被害は、被害者および相談を受けた側ともに、『たいしたことない、大丈夫だ』と考える傾向がいまだに強いように感じ、相談支援へのつながりにくさに影響している」

「学校での男児同士の被害の相談が増えたが、まだ学校現場の先生の意識は低く、『悪ふざけ』ですまされることが多い」

「男性特有の『弱音を吐かない文化』が多少残っているように感じ、相談へのハードルが高いのかもしれない。同性間の性被害は特に周囲からの理解が得られにくいと感じている方もいる」

「被害を家族に相談したところ『男の子だから』という理由で真剣に取り合ってもらえず誰にも相談できなくなったという人も」
こうした中、富山県では毎月街なかで行っている性に関する相談会の際に、駅などを通りかかった男性にも積極的に声をかけ、男性の性被害や相談窓口を周知しています。
配っているカードには具体的な被害例が記されています。
周知カードの被害例
▼からだをさわられる▼着替えやトイレをのぞかれる▼無理やりキスやセックスをされる▼性的な言葉をいわれる▼わいせつな写真を見せられる▼SNS上に性的な中傷を書かれたり画像をのせられたりする…など。
そして、次のように呼びかけています。

「性別問わず、あなたがイヤだと感じた性的行為はすべて性暴力です」

“振り絞った声” 次につなげる仕組みを

男性の性被害に詳しい臨床心理士の西岡真由美さんは、NHKのアンケート調査で見えた課題について、次のように指摘しています。
臨床心理士 西岡真由美さん
「助けを求めることは勇気のいる行動で、その“振り絞った声”を次につなげる仕組みが必要だ。今はセンター自体の運営体制が不安定なところもあるので、現場が困っていることややりたくてもできないこと、自治体だけではどうしようもないところを国も責任をもって受け止め取り組んでいくべきだ」
内閣府では「ワンストップ支援センター」を設置・運営する自治体が活用できる交付金を設けていますが、支援団体からは実態調査や予算の確保を要望する動きもあります。

西岡さんは、
▼相談員を増やすための人件費や相談しやすい環境の整備の費用などに、国の交付金をより柔軟に活用できるようにすることや、
▼相談や支援の事例を蓄積し、知識やノウハウを共有していくこと
を必要な取り組みとして挙げていました。

その上で、社会全体で意識を変えていくことが重要だと話していました。
臨床心理士 西岡真由美さん
「“男の子は強くあるべき”とか“男の子だったから抵抗できたんじゃないか”といった社会の思い込みがある。男性の被害も女性の被害と変わりなく、誰の身に起こっても命に関わるような深刻な影響を及ぼし得るものだと共有されていないことが、声のあげにくさや援助へのつながりにくさに関係しているのではないか。社会の意識を変えていくためにも幼稚園や小学校から男の子も被害に遭うということを教えることは必要な取り組みだ。そこから親に伝わり意識が変わることもあり、近道ではないかもしれないが、種をまいていくことが大事だ」
「性被害」と言うと、これまでは「加害者が男性、被害者は女性」というイメージを持つ人も少なくなかったかもしれません。

しかし性別にかかわらず、学校や職場などいろんな場面で性被害は起きています。

誰もが被害者になりえます。

性別にかかわらず、被害にあった人たちが声をあげやすい社会にしていくために、意識を変えていくことが大切だと感じます。
全国の「ワンストップ支援センター」は内閣府のホームページで紹介されています。全国共通の電話番号「#8891」から最寄りのセンターにつながります。
(9月25日 ニュースウオッチ9で放送)
社会部記者
富田良
2013年入局
長崎局で原爆を中心に戦争関連の課題や文化財をめぐる問題点などを取材
科学文化部を経て現所属
首都圏局記者
古賀さくら
前橋局、横浜局などを経て、2023年から首都圏局
千葉放送局記者
木原 規衣
2018年入局
甲府局を経て2023年から千葉局

あわせて読みたい

スペシャルコンテンツ