「昼夜を問わず研究開発に没頭できる人材はいないか」。台湾積体電路製造(TSMC)の幹部は2024年8月下旬、日本のある国立大学の大学院教授にこう尋ねたという。
具体像を確認しようとする教授に、TSMC幹部ははっきり答えた。「日本人は想定より働かないが、博士号を取得できる学生なら違うはずだ。積極的に受け入れるルートを広く築きたい」
■本連載のラインアップ予定
・TSMC、博士獲得へ全国行脚 「昼夜問わず仕事できる人材」(今回)
・キリンHD、博士専用の採用サイト 海外勢との争奪戦で巻き返しへ
・ポケモン・コニカミノルタ、専門外に探求のフィールド開く
・富士通・サイバー、探求心を刺激し専門能力を発揮させる
・三井住友信託銀行、将来性を見抜く「目利き力」に着目
・北大博士学生、ゴルフ場の集客を分析 育成へ大学も変わる
・筑波大博士、学生と企業がオンラインサロンに集う
・ジョブ型雇用で博士人材の才能を引き出す 負のイメージを払拭せよ
・AGCの平井氏「博士不足でイノベーション停滞」
・東大加藤教授「産官学で人材を送り合う仕組みを」
TSMCは24年2月、熊本県菊陽町に第1工場を開所。運営会社JASMはソニーグループやデンソーとの共同出資で誕生した。第2工場の建設も24年内に着工する予定で、トヨタ自動車も出資に加わり27年末の稼働を目指す。両工場は、日本の優秀な人材を集める窓口に近い役割も担う。
「顧客のためなら水火も辞せず、行き届いたサービスを全力で実践する」。創業者である張忠謀(モリス・チャン)氏の言葉が浸透したTSMCの研究開発は独特だ。その一端が見えたのが、14~16年に韓国サムスン電子や米インテルと繰り広げた激しい技術競争だった。
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