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ひだまりスケッチ5期を望むひだまらーへ、4期のBGMにメッセージが仕込まれていた話をします【卒業編10周年】

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初稿当時、せめてもの賑やかしにと描いた落描き

ひだまりスケッチという作品は、非常に熱心な「ひだまらー」と呼ばれるファンに愛好されている作品です。

アニメ4期(の円盤特別編)で初期メンバー4人のうち2人が卒業し、大半のアニメなら「一区切り」となる地点に至っても、Webラジオの展開は不定期に継続していたり、原作は主人公ゆのっちの卒業まで描かれそうな事もあって、10年~越しの「5期」を願っている方も多いです。

今回は、そんな「5期」を願うひだまらーさんに捧げる、10年越しのメッセージ。
アニメスタッフさんの過去からの声に、ぜひ耳を傾けてみてください。

※この考察記事は、10年前の武道館での超ひだまつり(2013年3月3日)当日朝、沙英・ヒロ卒業編の発表直前に公開した内容に、再編集・本編画像を追加したものです。



前置き(初稿当時の前文)

4期「×ハニカム」の「テーマ」に絡めてオマージュされていたのは、
宣伝担当ユマスが明かした9話サブタイ「ほほえみがえし」だけじゃなかった!?
さらにそこには、3年生の卒業を悲しむひだまらーへの隠されたメッセージが…!?
というお話です。


4期放送中は余裕がなく、きっちりした感想を書けなかったので、
BD&DVD3巻と超ひだまつりにかこつけて、これまで浮かんだ感想をひとまとめにしてケジメをつけよう…くらいに考えていたのですが、
思っていたより遥かに長いネタになりました。w

もしこの妄想が正しければ、ではありますが、
いったい何段階の仕込みがされてるんだ!?
ただただ「4期スゲー、ひだまりスゲー」の声を上げ続けております。


(※以下、4期全話把握済み前提で語りますので、当然ネタバレ注意。あと順を追うとどーーしても長文になりますスミマセン)


すべての始まりは感動の渦を巻き起こした第6話

ひだまりスケッチ×ハニカム第6話「おしゃべりスケッチ」/「ヒロさん」
ご多分に漏れず自分も大好きです。

Bパート・Aパートとも見所まみれ、30分全部が一本のテーマで繋がった鳥肌全開エピでした。

(一見無関係に思えるAパートも、これからまだまだお互いの知らないところを知っていけるゆの宮、という事で、別離のときが近づく?沙英ヒロとの対比構造になっています)


その中でも個人的に、沙英ヒロ抱擁シーンのBGMがめちゃくちゃ好きなんですよ。
「日常の終わり」を表すかのように寂しげで、でも全体はあくまでも明るくて。

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このシーンで涙腺完全崩壊しちゃったせいで、それ以降の山場で同じBGMが流れるたび、条件反射で涙が出てくるようになってしまい…w

(CD化されてないから曲名もわからないんですよね…4期サントラが出てくれなくて別の涙)


デジャヴを感じるメロディーがそこかしこに…

…あれ。そういえば、この曲のメロディー、どこかで聴いたことあるな?


10年以上経ってるので覚えてない方がほとんどかもですが、
提供クレジットの時のBGMと同じものです。

(今から手っ取り早く聴くなら、BD/DVDの最終6巻のチャプターセレクトに採用されてます。
ネットには原曲の公式なソースがないので、ニコニコで見つけた自作音源にリンク失礼します↓)



意識して聴いてみると、これと同じメロディー(フレーズ)を持つBGMが
作中いたるところで、色々なアレンジで使われていることに気付きます。


一覧をがっつり挙げてみますと…


・沙英さんとヒロさんの抱擁シーン(6話、上記参照)

・ヒロさんが吉野屋先生に進路決定を伝える(同6話)

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・ひだまり応援団のシーン(10話)

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最終回の初日の出シーン(12話)

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水泳大会にて、夏目が沙英にツンツンしたのち物別れ(背景には割れたハート型の雲)(4話)

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夏休み最終日、宿題の絵日記が風に飛ばされて宙を舞う(3話)

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その日の終わり、「夏休み終わ郎」の絵日記を書くゆの(同3話)

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何かが終わったり、別れを暗示させるような話数、シーンばかりです。


3年生の卒業という一大イベントを控え、
われわれ視聴者は、このメロディーが流れるたびに
来たるべき別れを思ってしんみりさせられてしまうわけですね…。


明らかに異質なワンシーン…に隠された仕掛け

…などと考えていたのですが。
もうワンシーン、同じBGMのかかるシーンが見つかっちゃいました。
それも、他と比べて明らかに異質なシーン。



1話アバンです。

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※円盤6巻のチャプターセレクトでは、ここのバージョンのBGMが流れます



このシーン、原作では2巻の巻頭なので、当然、卒業の「そ」の字もありません。
ホームシックになりかけたゆのっちが、他メンバーの存在によって
「ここ(ひだまり荘)も私の帰る家なんだ」と安らぐシーン。

僕らも初見では、4期開始にあたっての、主要キャラのおさらいも兼ねた
「ひだまり荘にお帰り」という、スタッフからのメッセージ的な意味に(意識的にせよ、無意識的にせよ)受け取ったと思います。


でも、6話ほかを経由して、
このメロディー=「終わり」「お別れ」
…というイメージの刷り込みが完了しているので、

その状態で読み取れる、このシーンの意味は



「もうすぐこの日常ともお別れ」



同じシーンなのに、まるっきり別モノになってしまった。


なんじゃこりゃ!!スタッフさんあんたら鬼かっ!?

…と叫びました(ギリギリ心の中で)

ただただ癒しをくれるシーンだったものが、お別れの悲しみに追い討ちをかけてくるシーンになるなんて…


1・2話から修学旅行、3話で夏休み終わり…という流れで
リアルタイム視聴中に「終わり」「お別れ」の影を感じることは、不可能ではないでしょうが、
1話アバンのこの変貌に関しては、
後から見返してみて初めてハッキリわかる形になっていると思います。


前段落で一覧を挙げたように、同じフレーズや曲を、特定の人物・イメージを表す場面で
繰り返し使う手法は、ライトモチーフと呼ばれる、オペラ発祥の技法。

音楽レビューなどでは、省略して「モチーフ的に」などの言い回しで使われることも多いですね。
(冒頭に貼った『微笑がえし』のWikipediaでも…)

アニメ・ゲームでも、「○○のテーマ」と名付けられている楽曲は、たいていそのキャラの印象的な場面で多用されています。


それを踏まえて、このメロディーに便宜上勝手に仮タイトルをつけるなら
「終わりorお別れのモチーフ(テーマ)」といったところでしょうか?


ライトモチーフの手法自体は、いろんな作品で普通に使われているので、

(スター・ウォーズのダース・ベイダー、
サザエさんのコミカルなシーンで毎回流れるBGM、
うめ先生つながりで、まどか☆マギカの通称「マミさんのテーマ」「営業のテーマ」などなど?)

僕らも特に意識しないまま、当たり前に観ていることが多いはず。


ただ、ここまで凝ったことをやられると
「ハニカム」においては“ライトモチーフというもの”が演出上重要なのだ、と
用語知識のあるなしにかかわらず、強く印象づけられると思います。


「この仕掛けの正体は何だ!?」…と調べた先に

それで自分も興味がわいて、ざっと調べてみたのですが。
(クラシック素人なので、理解に間違いがあればご指摘もらえるとありがたいです(^-^;)


歴史上、ライトモチーフを効果的に使い、推し進めたのは、19世紀ドイツの作曲家ワーグナー

ワーグナーの経歴の中で、ライトモチーフの手法がはっきりと現れだした作品が

オペラ「ローエングリン」


このオペラ、主要人物全員がラストで死亡したり、失意のどん底に突き落とされてしまう、
他のワーグナー作品には見られないような悲劇なのですが、

物語の主人公ローエングリンにワーグナーが
「理解されない芸術家
すなわち自分を投影している、という説があるそうです。

しかも「ローエングリン」は、ワーグナーのオペラ第6作目だったり。

(4期サブタイトルの『ハニカム』=蜂の巣=六角形 →『6人で形作る巣』、『6人一緒の日常』
物語全体のキーになったのは第6話
『6』は今期におけるめちゃくちゃ重要な数字


…ちょっとだんだん、偶然の一致とは思えなくなってきました…。


もうひとつのオマージュ、発見さる

そうして、さらに調べていったところ、ひとつの記事を発見。

「ハニカム」制作まっただ中と思われる、TV放送年(2012年)6月からの「ローエングリン」公演において
演出を担当した、マティアス・フォン・シュテークマン氏が
同公演前のトーク・セッション中に語った、氏が考える「ローエングリン」への解釈。
(一部こちらで文字強調)


『ローエングリン』には他のワーグナー作品に見られる救済の結末がなく、それは変化することを受け入れられない登場人物全員がそれぞれなんらかの失敗を犯してしまうことに起因します。

https://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000042.html


6話の吉野屋先生とモロに被ることを言っている。


同じ場所にずっと留まるのではなく、変わっていくこと、前に進んでいくことを選ぶ。
(そしてそれでも、変わらない関係はある。)

6話のテーマであり、ハニカム全体のテーマだと思います。

それと完全一致するものが、ハニカムで多用されている「ライトモチーフ」を端緒にネットで検索していたら、あっさりヒットした。

これは、「微笑がえし」と同じ、公式の意図的なオマージュではないかと思わざるを得ません。


視聴者に宛てた「卒業後」のためのメッセージ

そして、そのオマージュの意図とは
作品テーマをさらに強化するのと同時に、
視聴者へのメッセージでもあるのではないかと。

それも、1話アバンを見返して「終わりのモチーフ」のトリックに気づいた視聴者、イコール
ヒロさんと同じく「後ろを見た人」へのメッセージです。

(当時、沙英さんヒロさんとの別れが近づく中でのひだまり荘メンバーたちの描写がせつなくてせつなくて、ハニカムをただただリピートしまくっていた=後ろを見まくっていたからこそ、気付けたオマージュなのです)


視聴者が過去回を見返すシチュエーションとしては、録画分を二度観する場合もありますが
より熱心なファンを想定するなら、「円盤を購入した場合」というのがしっくり来ます。

「ハニカム」のBD/DVDの発売スケジュールは、2012年末から当記事初稿執筆時の2013年にかけてでした。
そして、その2013年

ワーグナー生誕200年の「ワーグナーイヤー」。


記念の年ということで、ワーグナー関連の催しや、メディアでの露出が増える。
そうすれば、日頃クラシックにあまり関心のないひだまらーの目にも留まりやすくなり
「ライトモチーフ」という技法について知るチャンスが増え、
メッセージに気づいてもらえる可能性が高まる。

(実際、自分がそのパターンだったわけです)


ここまで全部、スタッフさんの計算ずくに思えて仕方ないのです。


その線で考えると、1~3期エピソードを振り返る、総集編的構成だった9話「ほほえみがえし」に、同じようなオマージュが仕込まれていて、
しかも宣伝担当ユマスがわざわざそれを明かした(※参照:ひだまりラジオ×ハニカム 第5回)というのは
このもう一つのオマージュ、「真の」メッセージに気づかせるための
「振り返ってみ?」というフリ、ヒントだった可能性さえあるんじゃないかと。


こんなこと、果たしてスタッフのうち誰がメインで仕掛けたのか?
新房監督?シリーズ構成さん?音楽?それともアニプレサイド?
そこまで推測できるほどのリテラシー、参考情報を持ってないことが口惜しいんですが、
とにかく、ひとたび調べ始めたら全部のピースがあまりにカッチリ嵌まっちゃう、
ここまで綺麗にレールが敷かれてる(と妄想できる)ことに驚愕です。

4期スゲー。ひだまりスゲー。


「巣立ちのテーマ」

ライトモチーフによって仕込まれたメッセージの意味は
「変化することを受け入れ、ポジティブに捉えて、前進する」こと。

さっき自分が勝手につけた、例のメロディーの仮タイトルは「終わりのモチーフ(テーマ)でしたが、
「終わり」「別れ」というのはネガティブな表現です。
受け取ったメッセージ通り、ポジティブな言い回しに変えてみます。


「巣立ちのモチーフ(テーマ)」に。


「6人で形作られた蜂の巣」から、前を向いて「外の世界へ発っていく」

「巣立ち」という言葉、恐らく多くのひだまらーさんがさまざまな文脈で使われていたと思うのですが、
「ハニカム」の作品テーマを一言で表すのに一番しっくり来る単語のように、自分には思えます。

(卒業編を待たずとも、TVシリーズの時点でしっかりと表現されていたということです)


「もうちょっとだけ続けたいんじゃ」

そして、繰り返しにはなりますが、「ハニカム」という作品を通して
ゆの達6人と同様、我々ひだまらーも
「変化に前向きであれ」と激励されていたのかもな…と感じています。 


どんなに寂しくても、否定したくても、3年生が卒業していく事実は変えられない。必ずその時は来ます(来ました)。
そして、従来の6人のひだまり荘だけを望み続け、卒業後の新しい展開を拒んでしまえば
話数ストックほか諸々の理由で、
ひだまりアニメは今度こそ打ち止めになってしまう…のかもしれません。
それはひだまらーにとっての悲劇。


でも、ゆのや宮子たちは寂しさを抱えながらも、変化すること、巣立ちを受け入れ、前に進む決意をした。
だから、彼女たちの物語は悲劇にはならない。


だから、僕らも同じように、沙英さん・ヒロさん卒業後のひだまり荘、彼女たちを前向きに受け入れ、
応援し続けさえすれば…


きっともうちょっとだけ続くんじゃ。

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へちょ絵とともに「もうちょっとだけ続けたいんじゃ」と某DBよろしく書かれた絵馬


余談

(※初稿UP翌日、2013/3/4追記)
卒業編製作決定おめでとーー!!
ずっとメインだった二人とのお別れシーンを目の当たりにするのは本当に寂しいことですが、
その先の日々も、うめ先生とシャフトならきっと魅力たっぷりに見せてくれる…!
と、自分は信じきってます。


(※その後の追記)
卒業編の内容は、正直「ハニカム」への筆者の解釈からは後退していたようにも映りました。

「ひだまり応援団」の時点で他メンバー同様吹っ切れていたように見え、最終話の「現メンバーでの最後の初日の出」の時も、切なげな表情は一切浮かべていなかったゆのっち↓が
また思い悩んでしまう姿に、なんだかなぁ…と。

それも最後には解消できたから良かったんですが。

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初日の出の時のゆのっち
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卒業編(1話)でのゆのっち

まぁ、自分に知名度がなく、かつ勢い任せな文章だったのもあり
この元記事をUPしても反響があんまりなかったのを見るに、
「ハニカム」時点では前向きにはなれず、嘆き悲しんでいたひだまらーさんがほとんどで、その感情にゆのっちが寄り添った結果なのだと思います。

原作単行本表紙を見ても、全キャラからゆのっちを包み込む矢印が向いている相関図がある印象なので、いちばん等身大に揺れてしまうキャラなのでしょうね。
marbleさんの「無限story」の歌詞を思い出す…


超ひだまつり当日に公開した筆者の当記事での主張は、結局ひだまらーさんに浸透することはなく、「3年生が卒業する=ひだまりの終わり」かのように捉える、諦めの空気が支配的だったイメージがあります。

そんな中で松来さんの事もありましたし、5期のハードルは上がる一方のように見えますが、ラジオの展開が終わっていないことが救いです。

原作のストックが溜まったら、ワンチャンあるのではないか…!?と、今でも期待しています。
動いて喋る茉里ちゃんが見たいんじゃ~!

そして、この記事のスクショを撮るために円盤を観返して、各所で「巣立ちのテーマ」が流れてくるだけで、いまだにグッと来てしまいます(T_T)
たのむ…「終わりのテーマ」のままにしないでくれ…!


ひだまりに「考察」なんて…と思っている方へ

ひだまりスケッチという作品のファン=ひだまらーは、ラジオで採用されるお便りを聴くかぎりでは、
作品に対して考察するというよりも、公式からの供給を頭を空っぽにして全力で堪能し、キャストさんやうめ先生を全力で讃えることが正義、という考えの方が多いように見受けられます。
そんな方には、この記事の小難しい内容は、「何いってんだこいつ」かもしれません。

ですが、そんな方には今一度、当時のアニメ「ひだまり」を取り巻く状況を思い返していただきたいと思います。


そもそも、ひだまりアニメは当初、ひとつ前の3期「×☆☆☆」と特別編、「×SP」までで「一区切り」という空気が、制作サイドにはあったのです。

それを覆したのが、勝者の願い事を叶えてくれるとの触れ込みで行われた「ひだまり王決定戦」での王の願い、
「ひだまりアニメ4期を作ってください!」の一言でした。
(なので、後追いでラジオ~4期から入って心底魅せられた筆者は、初代ひだまり王京助さんには感謝してもし切れません。ご本人にはその想いは伝わらなかったようですが…;)

そんなこんなで作られた4期は、それまでのような積極的なキャラソン展開もなく、サントラも出ない。(ひだま~ぶるは出ましたが)
「ほほえみがえし」でこれまでのエピソードを思い返させて、ベストアルバムと卒業編を出して、「これで本当に総まとめ」という雰囲気でした。

それはつまり、アニプレ&ランティスさんのビジネス的にはそうとう厳しい中での制作だったのだと思うのです。


ちょうど本作の1年と少し前、うめ先生がキャラデザとして関わった作品が、話題になっていましたね。
そう、言わずと知れた「まどマギ」です。

まどマギは、メインストーリーのハードさもさることながら、世界観・デザインの各所に散りばめられた考察要素を、熱心なファンが読み解き、ネットで共有することで、話題性をさらに高めていき、一大ヒット作となりました。


そんな成功例がすぐ側にあるのならば、同じアニプレックスさんが、同じうめ先生の作品の「窮状」に、この手法を取り入れない手はないだろう、と思うのです。

(本文中で、『マミさんのテーマ』『営業のテーマ』という俗称について言及したのは、本作の『ライトモチーフを駆使した仕掛け』は、本来違う曲名のBGMがそう呼ばれたところからも着想を得ているのでは…?という意味があったのです)


思えば、アニメ「ひだまり」は、初期においては実写取り込みや時系列シャッフル、奇抜な演出など、原作と比べてかなり異彩を放つ前衛的な作品でした。

そして、Webラジオはといえば、これも言わずと知れたパロネタの嵐です。

期を追うごとに、絵柄はうめ先生の原作に寄せられていき、時系列も通常のものになりましたが、
深読みを要する演出やオマージュが(こっそりと)行われる下地は、じゅうぶんにあったと考えます。


当記事の初稿(ブログ)がネットの海の底に埋もれた後年になって、「ハニカム」のBD-BOXが発売されましたが、それと同時に「ひだまりスケッチアプリ」なるものがリリースされました。
それは、購入した円盤の本編映像を、合法的にスマホに取り込んで、いつでもどこでも繰り返し観られるようにするというものだったのです。

つまり、繰り返し「後ろを観る」ことで、一人でも多くのひだまらーに
「もう一つのオマージュ」と、そこから導かれる「真のメッセージ」に気付いて欲しい、との意図があった…というのは、筆者の考え過ぎでしょうか?


あえて省いた、もう一つの「巣立ちのテーマ」案件

記事本文では、同じメロディー(『巣立ちのモチーフ/テーマ』)が使われている場面一覧をずらっと並べ、その中の「最後の1つ」である1話アバンの異質さと、そこに隠された仕掛けについて言及しましたが、

実はもうワンシーン、「終わり」「お別れ」とはまったく無関係なシーンがあります。

それは、
修学旅行で沙英さん・ヒロさんが温泉からあがろうとするシーン(2話)
です。

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「ヒロ、のぼせる前に出よっか」「そうね」

この後に続くやり取りも、同部屋の生徒から枕投げに誘われ、
「どうする?」「負けないわよ」、といった程度のもので、後半の話数のような、お別れの切なさは全く感じられません。

ただ、ここも、1話アバンの「仕掛け」に気付いた後だと、
「温泉=あたたかい場所から外に出る」→「ひだまり荘から外の世界に巣立つ」
ことを暗示していて、後半話数視聴後に意味が変化するシーンだと解釈することができます。

元記事を書いた時点では、このシーンに気付いていなかったのか、それとも1話アバンの唯一性が薄れるのであえて省いたのかは、もはや記憶が定かではありませんが、
今回も、あえて余談に留めておきたいと思います。


この仕掛けを仕込んだ張本人は、いったい誰なのか?

初稿を書いた時点では、いったい誰がこの仕掛けを思いつき実行したのかについては、まったく見当もつかず、ただただ「凄い!伝えたい!」の一念で書き上げてしまいましたが、
その後、複数の媒体に触れて、ある程度の情報は得られました。
ただし、確信を持てるほどのものは、やはりありません…。


まず、新房監督については、「ハニカム」完結の約3ヶ月後に出たこちら↓のムック内の「新房昭之3万文字インタビュー」にて、興味深い発言があります。

小黒(祐一郎編集長) 最近は、音周りについてはあまり口を出さないんですか。

新房(監督) そうですね。

アニメスタイル003「新房昭之3万文字インタビュー」

この発言を信じる限り、直近の「ハニカム」でも、監督自らが発案者である可能性はあまり高くなく、スタッフの誰かの案ではないか?と思われます。


筆者が個人的に注目しているのは、音響監督の亀山俊樹さんです。
他作品のWebラジオに、偶然ゲストとして出演されていらして、その中で「音響監督ってどんなお仕事?」という質問メールに対し、以下のように答えておられました。

(前略)アフレコの演出をして、えー、ダビングに入るんですが、その時は効果音、まぁSEと、音楽と、セリフの3つの要素をミックスする作業があるわけですけどね、それをまた演出するわけですけど、

たとえば音楽なんかだと、今流れてた、劇伴っていいます、BGMなんかも、メニュー書いて「こんな曲が欲しいのだ」って作曲家に言うと、作ってくれるわけですよ。
(そういうのも)やるんです。

で、発注しとくと、毎話できるわけじゃないので、まとめてダーッと50曲ぐらい、バカテスの場合あるんですけれども、それをシーンに合わせて貼っ付けていく作業。
音楽編集も私、自分でやっているんで、選んで編集して、やってますよ。


(中略)

(音楽の発注も)やります。OP・EDは関係ないですけどね。中のものについてをやる係ですね。

バカとテストと召喚獣 文月学園放送部 第38回

すべての音響監督さんが同じ内容の仕事をされているとは限りませんが、少なくともひだまり(ハニカム含む)では上記手順が踏まれている可能性が高いと思います。

つまり、作曲家が菊谷知樹さんだからといって本人の独断では曲は作れず、一連の「巣立ちのモチーフ」を含んだBGMを菊谷さんに発注したのは、亀山さんという事になります。


ただ、ご本人と思しきTwitter(X)アカウントにも、Wikipediaにも、オペラはおろかクラシック関連の話題は一切書かれていないため、発案者であるとは限りません。

音楽に関しては、菊谷さんの方が造詣が深い可能性も高いですし、そもそも物語全体の展開とも密接に絡んでいる演出なので、シリーズ構成はじめシナリオ担当者さんまで含めて相談した上でなければ発注もかけられないでしょう。

なので、亀山さん・菊谷さん含むスタッフの誰かが「ローエングリン」公演を観て、件のコメントからオマージュを思いつき、全体で相談した上で決定、その後亀山さんが菊谷さんに発注、というところまでしか想像できません。
真相は完全に闇の中です。

そもそも、この考察自体が非公式であり超マイナーなので、このままでは公式から答えが開示されることも永遠にないのでしょう…。


ユマスはヒントまでは出してくれるという事は、これまた他作品で(筆者の主観ですが)経験済みなので、
もし万が一にもこの考察がひだまらーの共通認識になるくらい大バズりし、ラジオにお便りが殺到したりしたら、残りご飯で新情報が出るかもしれませんね…。

微粒子レベルの希望は捨てずに、5期を待ち続けたいと思います。

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コメント

shinmei
興味深く読ませていただきました。6話は本当に両エピソードともずば抜けて良かったですね。もともと随所の仕込みが面白い作品ですが、ここまで広げて考えることができるのか、と新鮮に感じました。そして記事の公開日時を見たら23年11月で驚いてしまいました......。ほんとうに色あせない名作なんですが、どうしても時代の流れに忘れられてしまっていくのを見るのがとてつもなく悲しくて、最近のこういう記事を見ると嬉しくなってしまいます。感動のあまり長文失礼いたしました。大学に入っても、いや入ったからこそ、開ける沙英ヒロの新たな一ページを探していきたいものです。
popo/功夫
コメントありがとうございます!最近noteを始めて、具体的なリアクションは初めてなので本当に嬉しいです。

本文にもありますが、TV放送リアタイ~半年程で少しずつ「気づき」が積み重なって考えがまとまったものを当時別所で公開したものの、大して反響もなかったので、noteの記事作成の実験がてら、今リメイクしてみた形です。
つまり初稿から11年で初めて頂けた感想でもあり、重ね重ね感謝しかありません!

ハニカムは本当に、6話で物語の見え方がまるっきり変わりますよね。
そして自分は印象的なシーンはBGMも深く心に刻まれるタチで、なおかつクラシック好きの家族が関連番組を観ていた際、たまたま「ローエングリン」の手法が紹介され、「これ、ハニカムでやってたやつだ!」となり…という、偶然の産物(スタッフさんの計算通り?)だったりします。

原作が続いていても話題にならないのがもどかしいですが、沙英さんヒロさんは卒業後も何だかんだ一緒にいるようですし、本当に変わらず温かい世界だなと。
ラジオが終わる終わる言いつつ続いてるので、「完結合わせの5期」でもうひと花…とかワンチャンあるのでは?と思ったりしますね。
shinmei
こちらこそ記事を書いてくださってありがとうございます。
自分が書いたものに感想をもらうことの嬉しさは私もわかります......

ともすれば聞き流されてしまうBGMへの着目、クラシックへの造詣という前提知識がないと気づけないこういう部分を解説してくださるのは、私みたいな芸術の教養がない人間にはとてもありがたいのです。

重ねてありがとうございました。私もがんばって、できる範囲で、SSでも書いていきたいと思います。
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同人活動しつつ、作品や製品の考察。デレ/学マス・音ゲー・ミニ四駆・格ゲー/STG・漫画/アニメなど雑食。元来狭く深い気質なのに推しが増えすぎ右往左往。基本Twitter(X)でつぶやいてますが、まとまった文が書ける場所が欲しくて実験的に始めてみました。よろしくお願いします。
ひだまりスケッチ5期を望むひだまらーへ、4期のBGMにメッセージが仕込まれていた話をします【卒業編10周年】|popo/功夫
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