太陽面で大規模な爆発が発生、地球方向への高速コロナガスの噴出を確認

国立研究開発法人情報通信研究機構
電磁波研究所電磁波伝搬研究センター 宇宙環境研究室
2024年10月9日 16時00分 作成

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長:徳田 英幸)は、日本時間10月9日(水)10時56分に太陽面中央付近に位置する黒点群13848において大規模な太陽フレアの発生を確認しました。この現象に伴い、コロナガスが地球方向へ放出されており、日本時間10月10日(木)の深夜以降に到来することが予測されています。この影響で、地球周辺の宇宙環境が数日間乱れる可能性があり、地球周辺の人工衛星の障害やGPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害などが生じる恐れがあり、注意が必要です。

背景



NICTは太陽活動や宇宙環境変動の観測を行い、その現況と推移に関する情報提供を行っています。

今回観測した太陽面爆発現象



発生日(日本時間) 発生時刻(日本時間) 規模
2024年10月9日 10時56分 X1.8
人工衛星GOES(米国NOAA)によって観測された太陽X線強度。

太陽面の中央付近に位置していた黒点群13848で、10月9日10時56分(日本時間)に、X1.8クラスの大規模太陽フレアが発生しました。発生した太陽フレアの紫外線観測画像、及び黒点の画像を以下に示します。

人工衛星SDO(米国NASA)で観測された太陽画像(左:白色光、右:紫外線)

X1.8クラスの大規模太陽フレアの発生に伴って、デリンジャー現象が発生しました。NICTのイオノゾンデにより観測された10月9日のデリンジャー現象と、観測画像の例を以下に示します。

発生日(日本時間) 発生時刻(日本時間) 場所(規模)
2024年10月9日 10時45分から12時00分まで 日本各地(弱い)
イオノゾンデ(東京国分寺)による電離圏観測。白丸で示した部分の電離圏エコーの消失とともに、信号強度が弱くなっている様子が確認できます。

X1.8クラスの大規模太陽フレアの発生に伴って、電波ノイズの原因となる太陽電波バーストが観測されました。NICTの太陽電波望遠鏡によって観測された10月9日の太陽電波の観測データを以下に示します。

太陽電波望遠鏡(鹿児島山川)で観測された太陽電波観測データ。色は電波の強度を示します。太陽フレア発生後に広い周波数帯で電波強度が増大しています。

X1.8クラスの大規模太陽フレアに伴って、地球方向へのコロナガスの放出が観測されています。このコロナガスの放出の様子を以下に示します。

探査機SOHO(欧州ESA・米国NASA)によって観測されたコロナガス放出の様子。
中心部の白丸が太陽の位置を示します。

X1.8クラスの大規模太陽フレアに伴い、静止軌道(高度約36,000km)で高エネルギープロトン粒子の増加が観測されています。米国の静止軌道衛星GOESの観測によると、この太陽フレアの影響によりエネルギー10MeV以上のプロトン粒子フラックスが日本時間10月9日11時30分頃から上昇し、14時5分に10PFUを超えました。

人工衛星 GOES(米国 NOAA)によって観測された太陽高エネルギープロトン粒子フラックス。

今後の推移



太陽から放出されたコロナガスは、日本時間10月10日の深夜以降に地球に到来することが予想され、地磁気嵐が発生する可能性があります。この影響により、地球周辺の宇宙環境が乱れる可能性があります。そのため、地球周辺の人工衛星の障害やGPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害などが生じる恐れがあり、注意が必要です。

用語解説



・太陽フレア

太陽の黒点付近で生じる爆発現象。強い紫外線やX線、電波等が放射されるほか、コロナガスが放出されることもあります。発生したフレアのX線強度の最大値により、小規模なものから、A、B、C、M、Xの順にクラス分けされています。

・デリンジャー現象

大規模な太陽フレアに伴うX線や紫外線の急増により、高度60-90km程度の電離圏D領域が異常電離して電子密度が高くなり、通常はD領域を通過する短波帯の電波が吸収されてしまう現象。

・太陽電波バースト

太陽フレアに伴って、MHz~GHz帯の電波強度が急激に増加する現象。MHz帯の電波バーストは、太陽からプラズマの塊が飛び出したコロナガス放出のシグナルとなるため、地球への影響を判断するために利用されています。

・コロナガス放出(Coronal Mass Ejection(CME))

太陽の上層大気であるコロナのガスが惑星間空間に放出される現象。地球に到来すると大規模な宇宙環境変動を引き起こすことがあります。

・プロトン現象

太陽フレアやコロナガス放出に伴い、高エネルギーの粒子が放出され、静止軌道(高度約36,000km)上で観測されるエネルギーが10 MeV以上のプロトン粒子フラックスが10 PFU(Proton Flux Unit [particles/cm2 sr s])を超える場合を「プロトン現象」と呼ぶ。

その他、よくある質問もご参照ください。