「スマップ裁判」からプライバシーを守る権利について考える
「スマップ追っかけタレント本事件」という実際にあった事件から、「プライバシーを守る権利」や「表現の自由・報道の自由」について考える授業。(TOSS広島ML推薦)
※スマップ追っかけタレント本事件は、1996年、鹿砦社(ろくさいしゃ)という出版社がスマップを含むタレントの住所・電話を掲載した本を出版しようとしたことを契機としている。プライバシーの侵害を訴えるスマップ側と、表現の自由を訴える出版社側。結果は、スマップ側の勝訴となり、出版社側は、この本の出版を禁止されることになった。
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masa0910@hi.enjoy.ne.jp
タレント本の画像をスクリーンに提示する。
何という題名の本ですか。
韓流追っかけマニュアル。
何という題名の本ですか。
カトゥーン追っかけ写真館。
何という本ですか。
ジャニーズ追っかけマップ2007
3冊の本の題名に共通する言葉は何ですか。
追っかけ
そう、追っかけです。追っかけとは、タレント・芸能人など、特別な存在の人物を対象としてつきまとうこと。また、そのような行為を行う人のことです。追っかけをされる、超有名な5人組のグループがあります。
(写真を拡大して提示)
何というグループですか。さんハイ。
スマップ
スマップです。スマップの追っかけ本を作ろうとした会社がありました。
今から15年前、1997年のことです。(実践する時に合わせて、〇年前は変更してください)
鹿砦社(ろくさいしゃ)という本を出版する会社が、スマップを中心としたアイドルグループの追っかけ本を出そうとしました。
しかし、その本には、スマップのメンバーのある情報までもが載せられる予定になりました。
どういった情報だと思いますか。
列指名で発表させる。
スマップのメンバーの自宅の住所や電話番号までも載せられることになったのです。
もちろん、スマップのメンバーには、知らせずに、無断で。
そのことを知ったスマップは、どうしたと思いますか。ノートに書きなさい。
列指名で考えを発表させる。
スマップのメンバーは、自宅の住所や電話番号を載せる追っかけ本は、あることの侵害にあたるとして、本の出版を止めるように求めました。
何の侵害でしょうか。分かった人。(挙手が少数の場合、ヒントを画面に出す)
プライバシーの侵害
プライバシーとは、辞書を引くと、「個人や家庭内の私事・私生活。個人の秘密。また、それが他人から干渉・侵害を受けない権利」とあります。そして、この後、出版社側と争うことになりました。
こういう場合、どこで争うことになるのですか。
裁判所
その通り。東京地方裁判所で争われることになりました。
裁判では、訴える側を原告。訴えられる側を被告といいます。
この事件では、原告側はどちらですか。(スマップ)
被告側はどちらですか。(出版社)
みなさんは、ケンカをした後、「お前が、蹴った。いや、先に悪口を言ったお前の方が悪い」などと、自分の言い分を主張して争いますね。
では、スマップと、出版社は、どういうことを言い分にして、争ったのでしょうか。
まず、スマップ側の意見を予想して、ノートに書きなさい。
次に、出版社側の意見を予想して、ノートに書きなさい。
発表させ、出た意見を黒板に整理する.
実際にみんなから出たのと同じ意見もありました。
それ以外では、~という意見がありました。(子どもから出なかった意見を示す)
スマップ側の意見
○プライバシーの侵害 ○私生活で多大なる迷惑をうける
出版社側の意見
○住所や電話番号を載せること自体は違法ではない。
○芸能人だから、私生活や住所を公表されても仕方がない。
○迷惑をかけるのは一部の心無いファン
○「表現の自由」を認められなければならない。
さて、みなさんは、スマップ側と出版社側、どちらの意見に賛成ですか。
どちらか立場を決めて、ノートに書いてごらんなさい。そう考えた理由も書きます。
討論のテーマを板書する。
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スマップ側と出版社側、どちらの意見に賛成か。
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挙手で人数分布を確認をする。
実践した時は、スマップ側17人、出版社側18人と意見が分かれた。
スマップ裁判の結果は、どうだったのでしょうか。
勝ったのは、どちらだと思いますか。
スマップ側と思う人。出版社側と思う人。
結果は、スマップ側の勝訴でした。裁判長は、表現・出版の自由を考慮しても、タレントの人格的利益を侵害する違法な行為」として、発行元の鹿砦社に出版・販売の禁止を求める判決を言い渡しました。
出版社側はこの判決を聞いてどうしたと思いますか。
納得したと思う人?納得しなかったと思う人?
出版社側は、出版しようとしている本の内容も直接証拠として提出を求めず、このような重大な決定をしたのは、出版の自由の抑制に道を開くものであり、不満だ、納得できない、控訴しました。そして、最高裁までいって争われます。
最終的には、出版社側に、この本の出版・禁止に加えて、将来に渡って、同じ種類の本を出版・販売しないように命じました。
このスマップ裁判を通して、憲法が定める国民の権利と義務とは何か、を考えることができます。具体的には、次の2つです。
日本国憲法 第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法 第21条
「集会、結社及び言論、出版、その他一切の表現の自由は、これを保障する。」
②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
表現の自由・言論の自由とは、プライバシーを守る権利とは、何なのか。
スマップ裁判から学んだこと、考えたことを書きなさい。