VIEW: 26212

「スマップ裁判」からプライバシーを守る権利について考える

「スマップ追っかけタレント本事件」という実際にあった事件から、「プライバシーを守る権利」や「表現の自由・報道の自由」について考える授業。(TOSS広島ML推薦)

※スマップ追っかけタレント本事件は、1996年、鹿砦社(ろくさいしゃ)という出版社がスマップを含むタレントの住所・電話を掲載した本を出版しようとしたことを契機としている。プライバシーの侵害を訴えるスマップ側と、表現の自由を訴える出版社側。結果は、スマップ側の勝訴となり、出版社側は、この本の出版を禁止されることになった。

コンテンツを希望される場合は、メールをください。
masa0910@hi.enjoy.ne.jp

タレント本の画像をスクリーンに提示する。

発問 . 1

何という題名の本ですか。

韓流追っかけマニュアル。

発問 . 2

何という題名の本ですか。

カトゥーン追っかけ写真館。

発問 . 3

何という本ですか。

ジャニーズ追っかけマップ2007

発問 . 4

3冊の本の題名に共通する言葉は何ですか。

追っかけ

説明 . 1

そう、追っかけです。追っかけとは、タレント・芸能人など、特別な存在の人物を対象としてつきまとうこと。また、そのような行為を行う人のことです。追っかけをされる、超有名な5人組のグループがあります。

発問 . 5

(写真を拡大して提示)
何というグループですか。さんハイ。

スマップ

説明 . 2

スマップです。スマップの追っかけ本を作ろうとした会社がありました。
今から15年前、1997年のことです。(実践する時に合わせて、〇年前は変更してください)
鹿砦社(ろくさいしゃ)という本を出版する会社が、スマップを中心としたアイドルグループの追っかけ本を出そうとしました。

発問 . 6

しかし、その本には、スマップのメンバーのある情報までもが載せられる予定になりました。
どういった情報だと思いますか。

列指名で発表させる。

説明 . 3

スマップのメンバーの自宅の住所や電話番号までも載せられることになったのです。
もちろん、スマップのメンバーには、知らせずに、無断で。

発問 . 7

そのことを知ったスマップは、どうしたと思いますか。ノートに書きなさい。

列指名で考えを発表させる。

発問 . 8

スマップのメンバーは、自宅の住所や電話番号を載せる追っかけ本は、あることの侵害にあたるとして、本の出版を止めるように求めました。
何の侵害でしょうか。分かった人。(挙手が少数の場合、ヒントを画面に出す)

プライバシーの侵害

説明 . 4

プライバシーとは、辞書を引くと、「個人や家庭内の私事・私生活。個人の秘密。また、それが他人から干渉・侵害を受けない権利」とあります。そして、この後、出版社側と争うことになりました。

発問 . 9

こういう場合、どこで争うことになるのですか。

裁判所

説明 . 5

その通り。東京地方裁判所で争われることになりました。
裁判では、訴える側を原告。訴えられる側を被告といいます。

発問 . 10

この事件では、原告側はどちらですか。(スマップ)
被告側はどちらですか。(出版社)

説明 . 6

みなさんは、ケンカをした後、「お前が、蹴った。いや、先に悪口を言ったお前の方が悪い」などと、自分の言い分を主張して争いますね。

発問 . 11

では、スマップと、出版社は、どういうことを言い分にして、争ったのでしょうか。
まず、スマップ側の意見を予想して、ノートに書きなさい。

指示 . 1

次に、出版社側の意見を予想して、ノートに書きなさい。

発表させ、出た意見を黒板に整理する.

説明 . 7

実際にみんなから出たのと同じ意見もありました。
それ以外では、~という意見がありました。(子どもから出なかった意見を示す)

スマップ側の意見 
○プライバシーの侵害 ○私生活で多大なる迷惑をうける

出版社側の意見 
○住所や電話番号を載せること自体は違法ではない。
○芸能人だから、私生活や住所を公表されても仕方がない。
○迷惑をかけるのは一部の心無いファン
○「表現の自由」を認められなければならない。

発問 . 12

さて、みなさんは、スマップ側と出版社側、どちらの意見に賛成ですか。
どちらか立場を決めて、ノートに書いてごらんなさい。そう考えた理由も書きます。

討論のテーマを板書する。
====================
スマップ側と出版社側、どちらの意見に賛成か。
====================
挙手で人数分布を確認をする。
実践した時は、スマップ側17人、出版社側18人と意見が分かれた。

発問 . 13

スマップ裁判の結果は、どうだったのでしょうか。
勝ったのは、どちらだと思いますか。
スマップ側と思う人。出版社側と思う人。

説明 . 8

結果は、スマップ側の勝訴でした。裁判長は、表現・出版の自由を考慮しても、タレントの人格的利益を侵害する違法な行為」として、発行元の鹿砦社に出版・販売の禁止を求める判決を言い渡しました。

発問 . 14

出版社側はこの判決を聞いてどうしたと思いますか。
納得したと思う人?納得しなかったと思う人?

説明 . 9

出版社側は、出版しようとしている本の内容も直接証拠として提出を求めず、このような重大な決定をしたのは、出版の自由の抑制に道を開くものであり、不満だ、納得できない、控訴しました。そして、最高裁までいって争われます。
最終的には、出版社側に、この本の出版・禁止に加えて、将来に渡って、同じ種類の本を出版・販売しないように命じました。

このスマップ裁判を通して、憲法が定める国民の権利と義務とは何か、を考えることができます。具体的には、次の2つです。

日本国憲法 第13条 
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

日本国憲法 第21条
 「集会、結社及び言論、出版、その他一切の表現の自由は、これを保障する。」
②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

指示 . 2

表現の自由・言論の自由とは、プライバシーを守る権利とは、何なのか。
スマップ裁判から学んだこと、考えたことを書きなさい。