働かなくても食べていけるだけの遺産を親から引き継いだが、仕事をやめられないと悩む女性Ｎ様から電話をもらった。アルコール依存みたいな感じで、やりたくない仕事に依存をしている。働かなくてもいいはずなのに、働く先がなくなると不安になる。親の影響なのか、私の体は依存するように作られている。自分一人だけで悩みを抱え持っていると辛くなってしまうから、誰かに聞いて欲しかった。Ｎ様は、そのようなことを話した。

ひとしきり話を聞いた後に「行きたい場所はありますか？」と尋ねた。Ｎ様は「高知のむろと廃校水族館に行きたい」と言った。車がないと行けない場所にあるのだが、車の運転はできないと言った。私は「ここに時間だけはたらふくある男がいるので、運転手が必要な時は言ってください」と言った。Ｎ様は「なんだか仕事をやめてもいいような気がして来ました。前を向くことが大事ですね。希望が必要と言うか、今日はありがとうございました。高知に行く時は、お声をかけさせてもらうかもしれません」と言って、電話を切った。

父親から虐待を受けて育った女性Ｃ様から電話が来た。最初、Ｃ様は「うわ！本当に繋がった！笑える〜！」と言いながら、ずっと笑っていた。私は「冷やかしはお断りだぜ」と思った。笑顔には二種類ある。真に楽しい時の笑顔と、何かをごまかしている時の笑顔。Ｃ様よ、あなたは何かをごまかしていないかと聞いたら、雰囲気が一転して「実は」となって、虐待を受けた過去を話した。父親が母親を殴る。それを止めに入ると、今度は自分が殴られる。だけど、妹が止めに来た時だけは絶対に殴られない。父親が母親を殴る理由は、私のしつけがなっていないから。私のしつけを失敗した母が、目の前で、自分の父親に殴られる。

自分なんかいなければいいと思い、自分に運はないと思って生きていた。だから、電話が繋がった時は本当に驚いた。Ｃ様は、そのようなことを言った。私は「あなたは絶対運がいい」と言った。私と話せるのは結構レアだ。それが出来たＣ様は運がいい。運が悪い人はいない。運が悪いと思っている人がいるだけだ。可愛くない人はいない。可愛くないと思っている人がいるだけだ。あなたは運がいいし、絶対に可愛い。誤解されると困るが、私はＣ様を励ました訳ではない。ただ、事実を伝えただけだ。私は安易に励まさない。Ｃ様は「言いづらいことを言ってくれてありがとうございます。以後気をつけます。リアルに会えるのを楽しみにしています」と言って、電話を切った。

真面目な話だけではなく「生活保護を受けているのだが、生活保護生活は最高！」と言う人や「旦那に女性用アダルトグッズが見つかって大変！」みたいな電話も来た。いろいろな人がいる。不思議なことに、いろいろな人の話を聞くほど、自分の体が軽くなる。面白いし、笑えるし、愉快だ。今後も自分の体と自分の連絡先を開放する。会いたい人や、会うのは怖いけど電話で話したい人はご連絡ください。悩む人は、勝手に悩む。清く正しく生きている人は、勝手に清く正しく生きている。勝手じゃない人間が一人でもいるのか。いない。全員勝手で、全員がやりたい放題に生きている。自分を縛るのは自分。自分を解放するのも、自分。自分一人では、自分がやっていることに気づけない。選択肢の候補の一つに「坂爪圭吾に会う」「坂爪圭吾と話してみる」を加えて欲しい。