赤坂水戸幸 読み込まれました

因陀羅「蕭王問答図」楚石梵琦賛

2024/9/11

 因陀羅は元時代中・後期の画僧。伝記は不詳だが、『君台観左右帳記』等は「梵僧(インド僧)」と伝える。賛者の楚石梵琦(1296~1370)ら江南禅僧ネットワークを中心に活動したとされる。画中人物は南宋時代以来定着した罔両画の技法に拠りつつ、「乾いた笑い」と評されるような、一目でわかるキャラクターで表される。代表作とされるのが国宝に指定された、いわゆる「禅機図断簡」5点だが、本図もそれらと一連のものと見なされる。

 本図は、唐時代の禅僧、仰山慧寂(804~890)が蕭大分・隆(七郎)の兄弟と対話する場面を画く。蕭兄弟は実は仰山(いまの江西省宜春市)に住む山神として祀られた孚恵廟の二龍神で、慧寂が仰山に至った契機、先師の潙山霊祐(771~853)の忌辰のために宜春台に僧斎を設けた経緯を示している。慧寂は禅宗五家の潙仰宗の派祖であることから祖師図に分類され、画題・画風は共に、国宝5点の中では「智常禅師図」(静嘉堂文庫美術館)・「丹霞焼仏図」(アーティゾン美術館)に近い。

 閑楽庵旧蔵。古筆了音(1674~1725)・了延(1704~1782)の極札、了意(1751~1834)の折紙が付属する。

(『國華』1549号(2024年11月)掲載予定)