elly_jjk5U
2024-10-06 15:31:47
3519文字
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呪術廻戦を読み終えて① (最終回について)

呪術廻戦 最終回後の感想です。備忘録的な。
長すぎるのでいくつかに分けます。
冗長ですが、お暇な方どうぞ。 

下々先生、六年半お疲れさまでした。
先生がいなければ呪術廻戦のみんなに会えませんでした。体調を崩しながらもよく駆け抜けてくださったと感謝しています。最終回を読めるというのは、それがたとえどんなものであっても読者にとっては幸運なことだと私は思っています。


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たくさんの謎と違和感を残して呪術廻戦は最終回を迎えましたが、読み終えた時の気持ちは案外静かでした。
残り話数が発表された時点で未回収の設定が多すぎること、また、270話が「五条の勝ちだ」と似たような引きだったので、最終回で全てが覆るのではないかと怯えていました。
236話以降の一年間、逆張りとグロテスクな展開が続いたため私はもう素直な気持ちで読むことができず、前代未聞の不愉快な終わり方になる覚悟をしていましたが(もっと言うと、そうなってしまえと呪う気持ちもありました)、実際は表面的には明るい穏やかな最終回でした。


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1年ズ揃っての任務は作者からの最後のサービスでしょう。もっと三人が一緒にいるところを見たかったですね。最終戦で恵が嵌合暗翳庭を完成させるところや悠仁との共闘も、待っていたけど見られませんでした。


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悠仁と悟の会話が見られたのは嬉しかったのですが、唐突すぎて二人とも喋らせられているように見え、違和感がありました。
以前「虎杖と五条はほどんど付き合いのない、薄い師弟関係」という感想を見かけたことがありますが、そう見えても仕方ない部分があるなと思います。
公式小説にある「反魂人形」に非常に重要なエピソード(悟がナナミンに悠仁を託す)がありますが、あれこそ原作の方に入れてほしい話でした。あの話を読めば、悟が悠仁をどう思っているかよく伝わるので

悟との会話では悠仁の出生が明かされると思っていましたが別の内容でした。
悠仁は主人公なのに最後まで謎が多すぎませんか。父親が宿儺の双子の生まれ変わり、母親が羂索という盛りに盛られたルーツを持っていますが、それ以上話は展開せず結局うやむやになりました。消化不良にもほどがあります。
赤血操術や御厨子・反転術式・領域展開を会得するまでの過程も不明です。せめて領域名は知りたかったし、もしはっきりさせないなら、0で悟が傑にかけた言葉が明かされなかったような余韻があれば良かったのですが。


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「五条悟とかどーでもよくない?」は、最終回だというのにキャラにこんなことを言わせるのかと
もし悟が言うなら、「僕のことなんてどーでもよくない?」だと思うんです。わざわざフルネームで「五条悟」なんて言わせているので完全に読者へ向けてですよね。

悟の「自分の強さとは違う強さを持ってほしい」という語りかけは、納得できるものでした。
悟は自分の跡を継ぐ者を育てたかったのではなく、自分とは違う力を持って自分の隣に並ぶ仲間を必要としていたのかなと。よって、261話の憂太には少なからず失望したのではないかと思っています。
ただしこういうのはストーリーが進んでいく上で「悠仁には悟にない強さがある」ことを少しずつ描写していくものだと思うんです。悠仁の善性は疑いようのないものだし、自分とは違う強さを持つことを早い段階で見抜いて「育てよう、託そう」と判断したのだと思いますが、積み重ねが足りな過ぎました。
下々先生は短い話数でキャラを立てるのは大変上手だと思いますが、長期間での人物の成長や変化を描くのは得意でないのでしょう。描きたい描写はあるのにそこに至るまでの納得できる過程が描けないというか


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そしてやはり、あまりにも236話がノイズ過ぎます。空港での悟の言葉については以前よりポジティブに受け止められるようになりましたが、今回の悟と空港の悟が繋がらないのです。
空港全部を「も〜悟ちゃんたら、戦闘ハイで変なこと口走ってダメじゃな〜い!今言ったことは全て忘れとくね!」っていうことにしちゃだめですかね

271話の悟の言葉はまるで遺言のようで、この後自分がこの世を去ることを知っているような口ぶりでしたが、この辺もなんだか236話とはずれがありますね。
ただ、悟は自分の去り方は決めていたんじゃないかとは思っています。
「自分と違う強さで自分に並ぶ仲間を育て、呪術界の頂点である自分が去る」ことを改革の最終目標と決めていたそんな気はしました。
「僕のことを忘れて」は「僕と同じ種類の強さを求める必要はない」という意味だと思いますが、あまりにも寂しく聞こえます。彼がいない世界で、あと10年も経てば五条悟を知らない世代が呪術師になっていくんです。そのことがすごく寂しい

悟の思う「勝ち」が「生徒たちの生存」なら、私が望む勝ちではないけれど確かに悟は勝ちました。
これは都合の良い妄想ですが、たとえ自分が倒されたとしても悠仁が、生徒たちが勝つことが分かっていたんじゃないか、悟には何か先が見えてたのではないかとだからあんな穏やかに笑っていたのではないかと、そんな気さえするんです。
(こう書くと自死みたいに聞こえますが、ここで死ぬつもりはなかったと思っています)
多くの人、特に悟より年上の人は29歳がまだ若いことを知っています。悠仁たちよりは年長ですが、悟だって次世代側に入る人間なんです。まだまだみんなを支えてほしいし、そばで笑っていてほしいです。


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宿儺はなんだかよく分かりませんが改心したみたいですね。最後の最後で「復讐」なんて言葉が出ましたが、それはもっと早く分かるようにしてほしかったです。
236話以降の主人公は明らかに宿儺でした。
宿儺の内面は悠仁に比べれば描かれた方だと思いますが、肝心な「時を越えて甦り何がしたかったか」が分からないため、呪術廻戦自体がぼんやりしたものになりました。
せっかく「共振」を出したのだから宿儺の過去を描けたと思うのですが、憂太に「(宿儺と悠仁の共振は)情報や思考までは共有できない」と言わせてしまったので、この設定は無駄になった気がします。

宿儺は裏梅を引き取って育てていたと推測しますが、悟は恵と津美紀を、傑は美々子と菜々子を、宿儺は裏梅を、それぞれ子どもの面倒を見ていたのかと思うと、違う人生を歩んでいるのに似たようなことをしている三人の共通点を感じて面白いなと思いました。
なお28巻で裏梅の性別に関する言及があったようですが、それは単行本の幕間ではなく本誌で見たい内容でした。それによって見えてくる裏梅の心情や宿儺との関係もあるのと思います。

真人と宿儺のやり取りは、宿儺はもう誰も呪わないそれは人を恐れ憎む負の感情から生まれる呪霊の真人の負けだと、めぐりめぐって悠仁が真人に勝ったのだと、そういうことでしょうか。
真人はいい敵でしたね、最後まで面白い奴です。


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これは完全に意見が分かれるところだと思いますが、もし亡くなっているのなら、私は最終回で悟を悼む場面が欲しかったです。
「先生は強かった、かっこよかった、めちゃくちゃがんばってくれた、ありがとう」
と、みんなからねぎらいの言葉をかけてあげて欲しかったです。
「236話でしっかり死んだじゃん、生きてるわけないじゃんw」と笑う方もいるでしょう。でも死の瞬間は描かれず、残酷に斬られた身体だけが描かれ、魂は夢と現実の間のような空間にいて、現世では身体が修復され利用され、誰も悟に言及せず、死が悼まれることもない

生か死かどちらか分からないけれどいつか納得できる描写があるはずと思って待ち続けましたが、最終回でも決定的な表現はありませんでした。
これを下々先生の優しさだと言う方もいるでしょうが、どちらかと言うと商業的なこととの兼ね合いで曖昧にしたような、私はそんなずるさを感じてしまいました。
そして「ずるい」と思いつつ、きっとどこかで生きてくれているに違いないと、それに縋ってしまう自分がいることも確かです。


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呪術廻戦は271話で最終回を迎えました。
でもこれは「最終回」であって「最終話」は別にあるように思います。
最終巻に何らかの加筆があるでしょうが、それが272話、物語の本当の終わりであるのなら、一縷の望みを持ちつつ私はそこまで見届けたいと思っています。
いきなりジャンプ+で外伝が始まったりして。その時は「もう下々先生は困ったしょうもないお人だな〜」って笑うことにします。



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