緊急提言 新型コロナワクチンとは何か、を改めて問う 10月から高齢者の定期接種スタート
「その改変されたmRNAは人工脂質の皮膜で覆われています。それが細胞内に入ると細胞の中でmRNAから大量のスパイクタンパクが作られます。それを人間の体の免疫が見つけて、抗体ができるという仕組みとされています」(福島氏) スパイクタンパクとは、自然界に存在する新型コロナウイルスの表面にもある、棘(とげ)のような突起物だ。その部分が人間の細胞表面にあるACE2という受容体タンパク質に結合することにより、細胞内に入り込み、感染が起こる。そのACE2がたくさんあるのが鼻や喉などの気道、腸管や血管内皮といった器官だ。またACE2をどれだけ持つかは個人差があり、加齢によっても変わってくる。mRNAワクチンは、このスパイクタンパクに対する抗体をあらかじめ体に作らせることで、自然感染や重症化を防ごうと設計されたものといえる。 ◇レプリコンワクチン そして今回から新たに投与が始まるのが「次世代型mRNAワクチン」といわれる、レプリコンワクチンだ。これは米バイオ企業アークトゥルス・セラピューティクスが開発したワクチンであり、Meiji Seika ファルマが日本における供給・販売提携に関する契約を結んでいる。9月19日に開催されたワクチン分科会で厚生労働省により薬事承認されたばかりという名実ともに、新しいワクチンだ。このレプリコンワクチンが正式に承認されたのは世界初であり、日本人が「世界に先駆けて」初めて定期接種することになる。 創薬科学や免疫医学の専門家であり、東京理科大名誉教授の村上康文氏はこう話す。 「レプリコンワクチンは、いままでのmRNAのいわば改変型ということができます。注射でmRNAを投与する量は従来型より少なくして、その代わり人間の細胞の中に到達した後に、mRNAを増殖させるという仕組みにしています」 レプリコンワクチンは注射による接種量は既存のmRNAワクチンの6分の1から12分の1ほどに抑えられる。その代わり、細胞内に到達するとmRNAが増えることから「自己増殖型ワクチン」とも呼ばれている。