2月1日に会期1日間の臨時会が開かれました。一般会計の歳入歳出に23 億 7,782 万4千円を追加する補正予算の1議案と、道路管理上の事故による損害賠償額を市長専決処分した報告1件です。すべての議案と議決の結果は長野市議会ホームページでご覧いただけます。
一般会計補正予算は、昨年 11 月に国が策定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」関連事業として、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、以下の事業を行うための予算です。
〇物価高騰の影響を受けた子育て世帯等に対する「住民税所得割非課税世帯等価格高騰重点支援給付金」の支給12 億 2,182 万9千円
〇道路貨物運送業及び道路旅客運送業に対し、運転手確保に係る取組等への補助金1億 3,500 万円
〇バス運転手等の人材確保に対する緊急支援及びトラック運送事業者等の業務効率化のための補助金2,000万円
〇飲食・小売業等が取り組む食券販売機や自動精算機、業務用ロボットなどの省力化のための機器や、キャッシュレス決済の導入のための補助金4,700万円
〇果樹等の凍霜害対策を行う農業者の防霜ファン設置に対する補助金1,500 万円
〇穀物等を出荷する農業者団体等に対し、乾燥調製施設に係る動力燃料購入等補助金1,500万円
〇子どもの体験・学び応援事業「みらいハッ!ケン」プロジェクトの継続と拡充9億 2,399 万5千円
これらの財源は国庫支出金 17 億 9,982 万6千円、一般財源5億7,799万8千円(地方交付税3億 1,198 万2千円、財政調整基金からの繰入金2億 2,061 万5千円、前年度からの繰越金 4,540 万1千円)です。
この補正予算案のうち、〇子どもの体験・学び応援事業「みらいハッ!ケン」プロジェクトの継続と拡充9億 2,399 万5千円について反対討論を行いました。録画中継はこちらからご覧いただけます。この事業は、「スポーツや文化芸術、民間の各種教室などの体験プログラム参加に利用できる電子ポイントを配布することにより、子どもたちが体験を通じて好きなことを見つけ自己肯定感を育みながら成長できる環境を提供する」ことを目的に、今年度のモデル事業から来年度も継続して実施するとのご説明でした。プログラムの充実と通年で利用可能とすること、ポイントを30,000円分に増額するなどの理由から、9億2,399万5千円が計上されています。
モデル事業実施にあたっての説明では、ポイントの利用状況や、利用者・事業者へのアンケート調査を基に実施する効果測定の結果を、翌年度以降の継続実施に向けた事業スキームや、市のさまざまな施策の検討に活用し、エビデンスに基づく戦略的な事業構築につなげるとのことでした。しかし、事業は昨日終了したところで、モデル事業の効果測定の検証が出来ていません。
昨日、こども政策課に問い合わせたところ、利用登録者数は対象者28,060人のうち17,426人、62.1%。実際にポイントを利用したのは12,732人で対象者の45.4%に留まります。ポイントを利用しなかった方は15,328人。対象者の54.6%の方が利用しなかったことになります。
利用しなかった方には、年末に郵送で利用を呼びかけつつ、利用しなかった理由についてアンケートへの回答を依頼しており、アンケート結果の集計や効果測定は2月中に完了する予定で、公表時期は決まっていないとのことでした。利用しなかった理由、その背景、子どもたちの生活実態などが全く分析できていない、この状況で、来年度もこの事業を継続し、9億2,399万5千円を投入すると決めてしまうのは、あまりにも乱暴なやり方ではないでしょうか。「子どもたちに様々な体験をさせてあげたい」という荻原市長の強い思いは素晴らしいと思いますが、子どもたちにとっての最善の方法を、もっと丁寧に考えてみる必要があります。
先日、子育ち支援調査研究特別委員会で、子どもの居場所について調査するため、大阪府門真市を視察させていただきました。門真市では、目指すまちの将来像として「子どもを真ん中に地域みんながつながる健康で幸せな地域共生のまちに」を掲げ、地域の店舗を活用した子どもの居場所や子ども食堂などを公民連携で運営しています。日々子どもや保護者と接しているこども政策課職員の方は「親は一生懸命生きている。稼いでいる。だから余裕がない。」とおっしゃられていました。
令和3年度に長野市が実施した「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」では、「11人に1人の子どもが、家庭が低所得であったり、経済的な理由で経験などが失われている状況である」、「『うつ・不安障害相当』の状態にあると考えられる保護者の割合は全体では8.5%、困窮家庭では32.6%」、「困窮家庭やひとり親家庭ほど、子どもの生活満足度や自己肯定感が低く、将来への期待も持ちにくい状況にある」などの分析結果が公表されています。
今回のモデル事業について、地域で子ども支援に取り組んでいる方にもお話を伺いました。
「保護者が、この事業の通知を開封し、内容を理解し、登録、申し込みの手続きをして、体験のために必要な物を準備して、体験の場まで連れていくことができる、そのような家庭で育つ子どもはすでに体験の機会に恵まれていることが多い。体験の機会に恵まれない家庭の子どもにはこの事業が届いていないのではないかと感じている。この事業の一人1万円の予算を仮に学校で使えるとしたら、子どもたちが平等に、体験する機会を得ることができるのではないか。また不登校の子どもにとって初めての場所にいくことはハードルが高く、クーポンを使うことができず虚しい思いをしているとの保護者の声を聴いているが、不登校の子どもが学校での特別なイベントには参加できることも多い。」とのことでした。
子どもの体験・学びを応援することはとても大切な公共の役割です。だからこそ、限られた財源の中で何を優先して、支援すべきことは何かを精査し見極める必要があると考えます。
その前提となるモデル事業の検証も行われていないのに、来年度、この事業に9億2,399万5千円の税金を使うと決めてしまうことは、子どもたちの最善の利益に反することだと思います。
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