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Conversation

もう30年も昔のことになりますが、岩下食品に入社したばかりの20代の私は、商品を広げたい一心で、電話帳に載っている料理学校に、岩下の新生姜を無償で1ケースずつ送りつけるという、無謀極まる商品紹介を行ったのです。数少ない反応して下さった先に、服部幸應先生がいらっしゃった。先生の味への好奇心の強さゆえだったかもしれません。そして、他にない生姜漬けだと大変気に入って下さって、わざわざ連絡を下さって、その年から先生の季節の挨拶の品は岩下の新生姜となったのです。 当時、先代社長(父)からは、タダで片っ端から送りつけるなんて、全部無駄になるだろうなんて言われていましたが、それが服部先生に評価頂くきっかけになった。今も岩下の新生姜ミュージアムを入館無料にしている原点に、この体験があるような気もします。 白すりごまとみじんにした岩下の新生姜をご飯にのせ、刻み海苔をぱらりとした後に、混ぜつつ頂くのが最高と、よく仰っていました。(近年、かまいたち濱家さんが、岩下の新生姜に白すりごまをかけるのが好みと発信されるのを伺う度、服部先生のお顔が浮かびました。) ある年の服部料理専門学校の発表会で思いがけず頂いた、岩下の新生姜をブツ切りにして加えたうなぎ茶漬けの美味しかったこと、今も忘れられません。そうして評価頂いたことは、更に「うなぎに岩下の新生姜」を力強くPRしていこうという気概にもつながりました。 あまりに突然の訃報に、寂しさでいっぱいですが、先生への感謝の気持ちから思い出を探ると、それが未来へとつながっているのを感じます。岩下の新生姜ひとつを取ってもそうなのですから、食にまつわる様々な分野で、服部先生の残されたものは、これからも、食文化として、生き続けていくのだと確信いたします。 心よりご冥福をお祈りいたします。 どうか安らかにお休みください。