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論語(顔淵) 子貢問政。子曰、足食、足兵 書き下し文と現代語訳

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 今回は、論語(顔淵第十二) 【子貢問。子曰ハク、足ラシ、足ラシ】の白文(原文)、訓読文、書き下し文、現代語訳(口語訳・意味)、読み方(ひらがな)、語句・文法・句法解説、おすすめ書籍などについて紹介します。



「孔子(こうし)」
春秋時代の思想家。魯(ろ)の人。儒家思想(じゅかしそう)の祖。 
名は「丘(きゅう)」、字(あざな)は「仲尼(ちゅうじ)」、「子(し)」は先生を意味する尊称。

「論語(ろんご)」
10巻20編約500章からなり、孔子や門人たちの言行などを、孔子の死後に、門人たちがまとめたもの。


《論語》 顔淵(がんえん)第12-7
【子貢問。子曰ハク、足ラシ、足ラシ(子貢政を問ふ。子曰はく、食を足らし、兵を足らし)】


<要旨>

政治の要点は、食料と軍備と人民の信義の心の3つであるが、最も重要なのは人民が信義の心を持てるような政治を行うことである。


<原文>

子貢問政。子曰、「足食、足兵、民信之矣。」子貢曰、「必不得已而去、於斯三者何先。」曰、「去兵。」子貢曰、「必不得已而去、於斯二者何先。」曰、「去食。自古皆有死。民無信不立。」



◇送り仮名や句読点などは本によって若干違う場合があるので、あなたのテキストに従ってください。

◇書き下し文のルールについては、このページ下段に記載しています。

◇返り点の読み方、置き字などについて知りたい場合は、「漢文の基礎知識」を読んでね。

◇現代仮名遣いのルールについて知りたい場合は、「現代仮名遣いの基礎知識」をどうぞ。



《白》 白文
《訓》 訓読文(返り点・送り仮名・句読点など) ※返り点送り仮名 ※置き字
《書》 書き下し文(歴史的仮名遣い)
《仮》 読み方・現代仮名遣い(ひらがな)
《訳》 現代語訳(口語訳)
※《別の訓読および読みなどがある場合は、その主なものを訳の下に記載》


《白》 子貢問政
《訓》 子貢問
《書》 子貢政を問ふ。
《仮》 しこう まつりごとを とう。
《訳》 子貢が政治の要点についてお尋ねした。

《白》 子曰足食足兵民信之矣
《訓》 子曰ハク、「足ラシ、足ラシ、民ニスト。」
《書》 子曰はく、「食を足らし、兵を足らし、民は之を信にす。」と。
《仮》 し いわく、 「しょくを たらし、 へいを たらし、 たみは これを しんにす。」と。
《訳》 先生(=孔子)がおっしゃった、「食糧を十分にし、軍備を十分にし、人民に信義の心を持たせるようにすることである。」と。
※《足らし → 足し:たし》 
※《民は之を信にす → 民をして之を信ぜしむ:訳=人民に政治(または為政者)を信頼させることである。》
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《白》 子貢曰必不得已而去於斯三者何先
《訓》 子貢曰ハク、「必シテムヲラバ、於イテ三者ヲカニセント。」
《書》 子貢曰はく、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」と。
《仮》 しこう いわく、 「かならず やむを えずして さらば、 この さんしゃに おいて なにをか さきにせん。」と。
《訳》 子貢は(さらに)お尋ねした、「どうしてもやむを得ない事情によって捨て去るとしたら、この3つのうちでどれを先にすべきでしょうか。」と。

《白》 曰去兵
《訓》 曰ハク、「去ラント。」
《書》 曰はく、「兵を去らん。」と。
《仮》 いわく、 「へいを さらん。」と。
《訳》 (先生は)おっしゃった、「軍備を捨て去ろう。」と。

《白》 子貢曰必不得已而去於斯二者何先
《訓》 子貢曰ハク、「必シテムヲラバ、於イテ二者ヲカニセント。」
《書》 子貢曰はく、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」と。
《仮》 しこう いわく、 「かならず やむを えずして さらば、 この にしゃに おいて なにをか さきにせん。」と。
《訳》 子貢は(重ねて)お尋ねした、「(さらに)どうしてもやむを得ない事情によって捨て去るとしたら、残った二つのうちでどれを先にすべきでしょうか。」と。

《白》 曰去食自古皆有死
《訓》 曰ハク、「去ラン。自古皆有死。
《書》 曰はく、「食を去らん。古より皆死有り。
《仮》 いわく、 「しょくを さらん。 いにしえより みな し あり。
《訳》 (先生は)おっしゃった、「食糧を捨て去ろう。(食糧があったとしても)昔から誰にでも死は訪れる。

《白》 民無信不立
《訓》 民クンバ信不。」
《書》 民に信無くんば立たず。」と。
《仮》 たみに しん なくんば たたず。」と。
《訳》 (しかし)人民は信義の心がなければ、人として成り立っていけないのである。」と。
※《無くんば → 無ければ》
※《上で「民をして之を信ぜしむ」と訓読した場合は、ここを「人民の信頼がなければ、政治(または為政者)は成り立たないのである。」のように解釈する。》

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<語句・文法・句法解説>

子貢 :孔子の門人。弁舌に優れ、経済の才能があった。

子 :先生。 ※孔子のこと。

曰 :言う。言うことには。
※このブログでは、孔子など目上の者の発言には「言う」の尊敬語「おっしゃる」を訳語として使っている。

足 :十分にする。充足させる。

兵 :武器。軍備。

民信之 :民に信義の心を持たせる。 信ニスを強めた表現で、「之」=「民」のこと。
※「民をして之を信ぜしむ」と訓読した場合は、「之」=「政治(または為政者)」で、「人民に政治(または為政者)を信じさせる」と解釈する。

矣 :置き字。断定の意を表す。

必 :どうしても。

而 :置き字。この章では「~シテ」の送り仮名になっている。

去 :捨て去る。切り捨てる。

斯三者 :「食・兵・信」のこと。

何 :何を~か(疑問)。

斯二者 :「食・信」のこと。

自 :~から。

古 :昔。

無A不B :Aがなければ、Bしない。

不立 :成り立たない。
※人としての社会生活などが成り立たないということ。

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<書き下し文のルール>

◇書き下し文(かきくだしぶん)とは、訓点(返り点・送り仮名・句読点など)に従って、漢字仮名交じりで書いた歴史的仮名遣いの日本文のこと。

①漢文に付いているカタカナの送り仮名は歴史的仮名遣いのまま平仮名で書く。

②日本語の助詞や助動詞にあたる漢字は平仮名に直す。

③再読文字は最初の読みの部分は漢字+送り仮名、二度目の読みの部分は平仮名で書く。
・例:未。(未だ知らず。) 

④訓読しない漢字(置き字)は書き下し文に書かない。

⑤会話文・引用文の終わりの送り仮名「~」は、「と」を「」の外に出し、「~。」と。と書く。
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