不祥事まみれ…首相が起用した政府幹部が3人連続の辞任劇 任命責任「重く受け止める」だけでいいのか
2023年11月14日 06時00分
国民に納税を求める立場にもかかわらず、度重なる税金滞納で財務副大臣を事実上更迭された神田憲次衆院議員(愛知5区)。9月の内閣改造後、教育行政に携わる文科政務官が女性との不適切な関係で、法整備などをつかさどる法務副大臣は公選法違反事件への関与で辞任したばかり。3人ともそれぞれの役職には不適格の烙印 を押されて退場を余儀なくされる異常事態。「適材適所」と主張してきた岸田文雄首相の任命責任は極めて重い。(佐藤裕介、近藤統義)
◆官邸側は当初、神田憲次氏を擁護していた
「任命責任は重く受け止めている。国民におわびを申し上げなければならない」。首相は13日夕、官邸で記者団にそう釈明した。政務官、副大臣の辞任ドミノとなった先月来、首相は「任命責任を重く受け止める」と同様の言い回しを続けているが、またしても問題は繰り返された。
官邸側は当初、「法に触れることはないと理解している」(首相周辺)と神田氏を擁護する姿勢を示していた。内閣支持率が低迷する中で、3週連続の政務三役の辞任となれば、打撃が大きいためだ。
税務を担当する財務副大臣の職責にもかかわる重大事なのに「資金繰りの厳しい中小企業などなら結構ある話だ」(官邸幹部)と税金滞納に理解を示すような鈍い対応を続けた。それでも、神田氏の国会での説明は曖昧な内容に終始し、国民の理解を得るにはほど遠い状況だった。
野党側は法案の審議に応じない構えを示し、与党内からも「国会審議に影響する」と辞任を求める声が浮上。結果的に事実上の更迭を余儀なくされ、官邸の判断は後手に回った。松野博一官房長官は13日の記者会見で「今後も政治家として本人が説明責任を果たしていくことが重要だ」と最後まで人ごとのように語った。
首相は2カ月前の9月13日に発足した第2次岸田再改造内閣について「適材適所」と何度も発言。全員が男性だった計54人の副大臣・政務官の人選も「適材適所でご覧のような男女バランスとなった」と強調していた。
◆所管にかかわる不祥事のオンパレード
その人事は大きく崩れ、10月26日に教育や青少年の健全育成を担う文科省の政務官だった自民党の山田太郎参院議員が女性との不倫などの問題で辞任。その5日後の10月31日には、法律の順守を呼びかける立場である法務省の副大臣だった自民党の柿沢未途衆院議員が東京都江東区長選で有料のインターネット広告掲載を提案したとして辞任に追い込まれた。
今回の神田氏を含め、3人は所管にかかわるような問題で適性を欠く不祥事を起こして職を追われたことになり、国民の信頼を大きく損なうのは確実だ。
立憲民主党の泉健太代表は神田氏の辞任を「遅すぎる」と批判。相次ぐ政務三役の辞任については「異常事態だ。全く適材適所ではなかった。『身体検査』もせずに就任させた首相の罪は大きい」と述べ、首相の任命責任を追及する考えを示した。
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