【合作/二次創作】王子様と拷問官
まさかの正宗→一遍
ありがてぇありがてえ 髪の長い男は好きですか
まさむねととしぴろちゃん!!!! 私はこの人生に勝った(個人の感想)
ありがとうありがとう 美味しい おいしいおいしいヤミーヤミー!!
正 宗 だ い す き
天燃え作者と最澄担当の二次創作
この作者の書く男、いつも男に嫉妬している!
正宗以外に出てくるのは樋口兄弟↓+桐嶋大河 最近大河多いね
いつものメンツ……というか天燃えの作者だから樋口兄弟なのであろう
そして今回の作品にはあんま関係ありませんが、
原作終了後の未来正宗さんはこちら↓
こっちでも人の恋愛にウキウキしている……!!
なんでもいいのか
人の恋愛と嫉妬大好きマン!!
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//和室
……目を覚ますたびに、どっちなんだろうと思う。
饐えた臭いの充満する、地下牢か。
愛した少女の、柔らかな腕の中か。
一遍「あれ……? いない……」
くしゃくしゃになったままの、敷布団のシーツに手を泳がせながら
考えずにはいられない。
一遍(いいにおい)
ということは、とりあえず今日は俺はこの寺の中でも最も温かな場所。
封印されていたあの暗い地下牢ではない、彼女の近くにいられるということだろう。
……この幸福はいつまで続くのだろう?
毎日毎日考える。
俺よりもっと髪が長くて、俺よりずっと背が高くて、
俺よりきっと光に満ちている。
本物の王子様みたいな男がヒュッと目の前に現れたら。
あっという間に、ぜんぶ、もっていかれるのかもしれないと。
止める権利すらなく、なかったことになるんじゃないかと。
一遍(とりあえず、この寺の中にそういう人間はいないみたいだけど)
外の世界にはいるかもしれない。だから。
俺は、この寺に閉じ込められていた自分をそんなに悪い境遇だと思っていない。
それで、彼女が可哀想だと思ってくれるなら……あと何十年だって
悲しそうな顔で汚い捨て犬小屋みたいな、あの地下牢に座っていたっていい。
できるだけ憐れに見えるように、ドロドロの黒い血液をバケツいっぱい浴びていたっていい。
//青空
なんてことを、日課のように考えながら起きた。
起きた、んだけど。
//本堂
彼女を探して本堂に足を踏み入れた次の瞬間、俺のオレンジの目に飛び込んできたのは。
王子様となれなれしく、楽しそうにしゃべっている大事な少女の姿だった。
正宗「ありがとうございます。立ち止まってくださって……」
//正宗立ち絵
一遍(い、いたーっ! 王子様みたいなロンゲ、いたーっ!!)
優しさが今にもこぼれおちそうな、おだやかな両眼。
光を浴びて、とろとろと流れ落ちそうな紫の長い髪の毛。
漏れ聞こえる声すら甘くて、キラキラしてて透き通っている。
正宗「いやあ、あなたに出会えてよかったです」
一遍(はああああああああああ!?)
正宗「ここに来るのは、確か三回目くらいで。すぐに道に迷ってしまって。
はは、情けないですよね。こんな風にうろうろしていたなんて」
一遍(しょ、少女漫画みたいな話し方……するね)
性欲も征服欲も、男にありがちな見下しも。
威圧も他害も一切感じさせない。
ふわりサラサラとした、その物腰はどこからどう見ても
乙女ゲーに出てくる王子様みたいだ。
一遍(たぶん、それって「王子様とたった一人の私」とかいう
タイトルだろうね……! ベッタベタでどこにでもある、ありがちな)
ある日突然、王子様がつまらない、くだらない、クソみたいな日常から
南の島の素敵なコテージか何かに誘拐しにきてくれるようなゲームだろう。
こんな男が出てくるゲームは、この寺の男達にありがちな、冗長なバトルも、
余計な設定も、暗い過去も血糊もない。
ただただ砂糖菓子のケーキの上みたいな物語に決まっている。
一秒だって、女の子を不安にしたり……怖がらせたり驚かせることのない退屈な夢。
予定調和のハッピーハッピーエンド。
1から100まで、起伏のないスイートなエピソード集。
朝から晩まで、こういう。
こういう完璧な男が隣にいて、当たり前みたいに手を差しのべてくれる恋。
さざ波のように囁いてくれる、暑い季節の砂浜の匂い。
一遍「ぎゃああああああああああ!」
一遍(俺もそういう展開、好きだもの……!)
だからわかる。
今、目の前で彼女に微笑みかけているその王子様がどれだけ王子様かくらい。
正宗「もし、叶うなら。教えていただきたいことがあるのですが」
腰を低く、軽く会釈をするその仕草で彼女の好きな長い髪が流れる。
一遍「ぐぎいいいいいいいいいい!!」
殺して、って思ってしまう。
いっそ殺してよ、こんなジャンルの異なりすぎる王子様なんか一体俺にどうしろっていうの?
一遍(俺なんか、俺なんか)
真正面から一つも勝負できることがないから、ひたすら凄惨な過去と
壮絶な血の匂いでようやく彼女の同情をひいているだけなのに。
どうしようもない男、私がいないと生きていけない男、
私しかない男、からっぽな男、救ってあげなきゃいけない男。
そんな風に思わせて、洗脳して、やっと隣にいてもらっているだけの男なのに。
一遍(そこにドストレート、ド王道な王子様を連れてくるなぁっ……!!)
やばい。呪うにも、道具がない。
一遍(彼女の好感度を気にして、仕事の道具は全部隠蔽しちゃってるんだよ!!)
そんな小狡い、小賢しい、小細工なんて……したことも、てがけたこともないだろう。
それって自分に自信があるからだ。
××「えーと……」
……王子様を彼女が見上げる。
その、なんでもない動作一つで心がバラバラになりそうになる。
それって自信がないからだ。
正宗「四天王の最澄がどこにいるかおわかりになりますか?」
××「え? 最澄さんですか? 今日はまだ見てないですね」
正宗「そうですか。あなたは、すごくこの寺のことにお詳しそうに見えましたので」
××「ふふふ、詳しい……? といえば詳しいかもしれませんが。
最澄さんは、すぐに姿をくらましてしまうので」
正宗「あー……わかります。アイツ、そういう無責任なところがありますから」
××「えぇ? あはははっ。なんだか仲が悪いんですね」
正宗「そうなんです。俺、嫌いなんですよ。ああいう軽薄などうでもいい男」
にこ、って笑うその顔一つでなんとか残したなけなしの魂まで強制浄化されそうになる。
一遍「……っ……」
ホント、溶けてるみたいに赤い飴玉みたいな目。
どっ、と嫌な汗が噴き出る。
なんて上品な生き物なんだろう。
同じ国に産まれた、同じ年ごろの男だなんて到底信じられない。
一遍(初めて見る顔だ。誰が寺の中に入れたの……?)
ドッドッドッドッ、と心臓の音がうるさくなって、
二人の会話が聞こえない。いや、聞きたくなくて音を消してるんだけど。
一遍「や、めて」
無意識に声が出ていた。
一遍「や……めて。やめて、やめて。触らないで。どっか行って」
声を震わせつつ、突然彼女との間に割って入ってきた俺を
紫色の髪の男は、怪訝そうな顔で見下ろしている。
正宗「触っていませんけど」
至極冷静な返答をする「王子様」と比べて、
自分はなんて浅はかで醜い顔をしているんだろうと思う。
一遍「お、お、お、女の子なんて、(男性器)がすごけりゃ手に入ると思ってるんでしょ!?」
××「うぇっ、ええええええっ?」
一遍「男の背の高さは(男性器)の大きさに比例している。
だから184cmの私より、192cmの君のことを女の子は好きに決まってる」
××「ひえええっ!? そんなこと一度も言ったことないですよね!?」
一遍「そうに決まっているんだよ。男の背の高さは(男性器)のでかさなんだ!
大きい方がいいよ、女の子はみんなそう思ってる!!」
××「なんで二回もエグいこと言ったんですか!?」
一遍「……違う。器の大きさって言いたかったんだ」
××「アレと器をどうやったらそんな簡単に間違えられるんですか!?」
正宗「……初対面のあなたに、器の大小を見定められる理由がわからないですね」
ものすごく淡々と、呆れた声で返されてしまった。
なるほど、これが世界基準(ワールドクラス)の器……器だよ?
器のでかさというわけだ……。
一遍「じゃあ(男性器)の話でいいよ」
××「何も良くないです! やめましょう、お客様の前で卑猥な話!」
一遍「…………私には何もないし」
髪だって、よく見えないけど王子様の方が長い気がする。
丁寧に、時間をかけて手入れされた綺麗な髪。
俺の髪なんか、長いのは誰にも切ってもらえないからであって。
誰かに伸ばして欲しいって言われたロンゲじゃないから。わかる。
一遍(全てにおいて俺の上位互換じゃない……!)
顔面蒼白になったまま、視線を地面からあげられないでいる俺に
廊下の向こうから実弟が罵声を投げつけてくる。
道元「男の身長は別に、そっちに直結なんかしていませんからねッ!!」
うるさい150cm。まだ毛も生えてない14歳は黙っていてほしい。
正宗「どうか顔をあげてください。俺にはあなたと敵対する理由がありません」
一遍「私にはあるんだよ……」
じっとりとした空気を放出しつつ、××ちゃんに手を伸ばす。
そして服の袖をぐいーっと引っ張り、むりくりこっちに寄せながら
俺は心底憎たらしげな声で忠告した。
一遍「髪切って。できれば死んで。二度と彼女に近づかないで」
正宗「……この寺の坊主ってもしかして、全員こういう感じなんですか?」
××「はいっ!」
正宗「嬉しそうに言うんですね……」
××「可愛い人しかいないんですよ」
××「……うんと、うんと可愛い人しか……」
正宗「あー……」
王子様が片方だけ眉をひそめて、苦笑いする。
正宗「あなたの正体がわかりましたよ。ここって、そういう組織なんですね」
一遍「だから話しかけないでって」
××「ふふ……」
正宗「本当の意味で、正しく寺なんですね」
××「そうよ。だから、あなた目立つの」
シンと沈黙が広がり、俺の腕の中で××ちゃんがすっと指を上げた。
××「出口はあっち」
正宗「安心してください。俺に他意はありませんよ。
ここをどうにかしようとなんて思いません」
正宗「マジにあのチャラ男に用があって来ただけです。
心をざわめかせてしまったのであれば、……すみません」
道元「いえいえ。こちらこそすみません、兄と姉が」
いつの間にか、足音も立てずに八尋が王子様の隣に立っていた。
正宗「道元さん! お久しぶりです!」
道元「あんまり見ないであげてください。この二人、うちの寺の恥部なので」
最澄さまのところには僕が案内しましょう。
ぺこりと頭を軽くさげ、しずしずと見知らぬ男を連れていく弟。
その後ろ姿を見送っていると、どさっ、と××ちゃんが
背中から俺の身体にぶつかってきた。
一遍「……いたっ」
××「やきもちやき」
一遍「~……だってぇ」
××「かわいい。だいすき」
一遍「184cmだよ……?」
××「192cmもあったら、こうやって。
ぎゅーって髪をつかんで、キスできないじゃないですか」
言いながら、10本の指で俺の髪を鷲掴みにして、真下に引き下ろす。
白い髪のカーテンの中で、女の子はいたずらにクスクス笑っている。
一遍(俺だけを見ている)
××「やきもちやき♡」
一遍「いぎぎぎぎ、痛い」
××「痛いのが一番好きでしょう?」
一遍「そう、だね。痛くされないとわからないのかも」
//廊下
正宗「……ぷっ、くくくっ……ふふふふ……!」
一遍の姿が見えなくなったところで、突然
シュムンクル・サンクス・正宗が笑い出した。
道元「ど、どうしたんですか。怒りで我を忘れているんですか?」
正宗「ふふ、そうじゃないんです。すごくいいものが見られたなぁと思って」
正宗「あの人、すごくきれいな人でしたね」
道元「あの人……?」
正宗「はじめは女の人かと思いましたけど、背が高かったから。
ああ、男なんだ。すごいなーって。さすがこの寺はレベルが違う」
道元「……あー……。兄ですか。そうですね。顔だけは。はい……それなりに」
正宗「道元さんもそうですけど、ちょっとこの国ってカンジがしない外見ですよね?
どちらかというと、牧師や神父……? 違うな。天使長みたいな雰囲気?」
道元「そうですね。俺も聖歌隊みたいな顔だって言われることが多いので」
法衣が似合わなくて。全然。
……どこか哀切を含んだ口調で、道元はため息をつくみたいに言い捨てる。
道元「産みの母親? が、おそらくカトリックなんですよね。だからかな……」
正宗「ああ。十字架系。なるほど」
うんうん、と正宗は短い時間だけ目にした男の顔を脳裏に思い浮かべているようだった。
それを見て、道元はへらっとなんとか笑おうとしてみた。
道元「イヤじゃないですか? ああいう顔」
正宗「いえ。むしろだいぶ好きですね」
道元「へえ?」
正宗「俺の実の父親が……。あ、以前、日蓮に村ごと滅ぼされたんですけど。
生きている時、ああいうタイプの顔の人だったんですよ」
正宗「生まれついての淫蕩な……いやらしい感じの、顔立ちで。
で、俺は素朴な母親に似た顔なんですが」
正宗「……惚れていたのは親父の方でした。
いつもねぇ。本当に好きで、だからたまに母は……」
正宗「親父にヤキモチをやかせるんですよ。
そうするとすごくその日は燃え上がって、
子が授かりやすくなるとかなんとかで」
道元「ぶっ……!」
そうしてできたたくさんの姉たちも、また日蓮に皆殺しにされてしまった。
明るく話す正宗に、道元は微妙な表情で付き合うしかない。
正宗「男が、本気で好きな女に必ずやる事って何か知ってますか?」
道元「いえ……知りません」
正宗「ああやって、間に入ってくるんですよ。
他の男に触られそうになると」
道元「……ああ……なるほど」
正宗「ある種の威嚇、縄張り主張ですよね。
ああなるってことは本気の証、犬としての飼い主への独占欲」
正宗「同じ犬系の男として、やりたいことが手に取るようにわかります。
俺は……犬は犬でも狼ですが……」
正宗「しかし笑ってしまいますよね。俺みたいな、野良で毛並みも
ボサボサな狼相手に……。あそこまでの美犬がワンワンと」
正宗「俺なんか相手になんかならないでしょうに。
やめろ! ご主人さまにさわるな! なんて……。ふふふふ」
あんなにされたら、女の人もメロメロですよね。
自分だけになつく大きな犬なんて、嫌いな人はそうそういませんから。
……うっとりとした声で語る正宗に対し、
道元はものすごく居心地が悪そうな声になる。
道元「……うちの兄は、その……恋愛至上主義なので」
正宗「あなたもですよ」
道元「……えっ?」
虚を突かれ、道元は一瞬動きを止めてしまった。
正宗「あなたも割って入ってきたでしょう?
相手が兄か姉か、そこまではわかりませんが……」
正宗「とてもとても、難しいことになっているのだけはわかりました」
道元「なっ……。ち、違いますよ!」
正宗「すっ、て自然に来ましたもんね。当たり前のような顔をして。
あっ! って思って。もう、真面目な顔するの大変でしたよ」
声をあげそうになりました、感動して。
すごい! 愛憎絵巻だ、すごいものがこの目で見られたなぁ! って!
正宗「……いやー。困りましたね。
お寺なんて、節制と禁欲のメッカだと思い込んでいましたが」
正宗「こんな面白いことになっているのなら、定期的に遊びに来ます」
道元「ま、正宗さま! あなた完全に楽しんでるじゃないですか!」
声を荒げる道元が、はっと後ろを向く。
するとそこには、仏頂面の最澄こと桐嶋大河が仁王立ちで立ちふさがっていた。
最澄「オマエな! 正宗、何この寺に勝手に入ってきやがってんだ!
俺が呼ぶまでおとなしくしてろっつってんだろ!!」
正宗「あんたの言うことに従う義理はありませんから」
最澄「……結界があっただろ!? 美形しか入れねぇ結界が!
どうやって侵入してきたんだよ!」
正宗「俺は、結界を張っている栄西さんと仲がいいんですよ。
ですので、普通に頼んで入れてもらいました」
最澄「はぁ!?」
正宗「それに……いざとなったら力づくで。
ふん! って割りますよ。あまり俺を舐めないでいただきたい」
最澄「お、おぉ? それは、お前を侮ってるっつうか……栄西を下げてるんじゃ?」
正宗「俺の力が強すぎるということにしておいてください」
美形しか通過できない、あやしい結界。
その、目に見えない壁の中で……自分なんかに吠える一匹の犬のことを
正宗は改めて思い返す。
正宗「……美形じゃない俺にあんなに嫉妬して……あはははは!」
最澄「……?」
正宗「いえ。恋愛って本当に素晴らしいなあって」
笑い過ぎて、目じりに浮かんだ涙を人差し指ではらう。
すると正宗は実にすっきりした顔になった。
正宗「最澄。あんたの用事なんてとんでもないと思っていましたが、
これからは定期的に俺を寺に呼んでください」
最澄「……?」
正宗「ちょっとね。見たいものがあるんです。
……んー、そろそろ髪を切ろうかと思っていたんですが」
正宗「もう少し伸ばして、あの女の人にちょっかいかけてみます。
俺がそうすることで、燃え上がる恋がいくつかありそうな気がしますので」
最澄「やめろよ! そいつは俺たちの仏さんなんだぞ!?」
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