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2024年10月 6日 (日)

世界滅亡国家史

世界滅亡国家史 消えた48か国で学ぶ世界史/ギデオン・デフォー;杉田真訳(サンマーク出版,2022)
 同じようなことを考える人はいるものである。
 本書は、本ブログで過去に紹介した吉田一郎『消滅した国々』(2015年11月8日のエントリー)、ベルゲ『世界から消えた50の国』(2018年11月23日のエントリー)と同じような趣旨で、過去に存在したものの何らかの事情により消滅した国をテーマにした歴史読みものである。。
 ただ、吉田の本が第二次大戦以降、ベルゲの本が1840-1975年と期間限定なのに対し、本書にはそのような制限はない。
 つまり歴史上消滅した何百、何千という国がすべて対象になるわけで、正直言ってかなりまとまりのない内容になっている。

 内容は大まかなテーマ別に5部構成になっており、それぞれに5~14の国を紹介する。
 共通のフォーマットが決まっていて、最初のページに、国名と概要、人口、首都、言語、通貨、滅亡原因、現在について。さらに本文の冒頭部分。次のページに国の地図と、現在の周辺地図。続いて国の成立と滅亡の事情を面白おかしく述べる5ページくらいの本文、という構成。
  原題はAn Atlas of Extinct Countries (2020)で、"Atlas"と題していることからわかるように、上記のフォーマットの中でも地図が重要なコンテンツになっているはずだが、その肝心な地図があまり目立たない。ただ、これは翻訳書の編集の問題で、ブログ主は本書の原著版を持っているのだが、そっちの方は地図が各国ごとに1ページをまるまる占めていて。"Atlas"にふさわしい構成になっている。
 ところで、本書で取り上げられている国は、必ずしも独立国(形式的にでも)とは限らない。自称国家はもちろん、植民地、国際管理地域、何かよくわからない地域などが含まれている。これについては、上記『世界から消えた50の国』もそうだったのだが、本書はさらに節操がない。第3部に出てくるグスト共和国とリバタリアは、多分最初から存在すらしていない。
 だから、まっとうな「国」について知りたい読者の役にはあまり立たないと思われる。また邦訳書のサブタイトルみたいに"世界史を学ぶ"というのも言い過ぎ。大半は知らなくてもいいようなマイナーな知識ばかりである。ただ、そういうマイナー知識こそを求める読者にとっては、歴史読みものとしては楽しめるかもしれないが。

 登場する「国」は以下のとおり。

第1部「命知らずと変わり者――「変人」のせいで滅亡した世界史」
 サラワク王国、バイエルン王国、リフレッシュメント諸島(トリスタン・ダ・クーニャ島)、コルシカ王国、マスコギー国

第2部「誤りと自称・独立国――「間違い」が元で国ができたり滅んだり」
 コスパイア共和国、ニューカレドニア(太平洋の島ではなく、パナマの一部にあった)、エルバ公国、フランスヴィル、ベメラナ共和国、ナイッサール兵士・要塞建設労働者ソビエト共和国、中立モレネ、ペルロヤ共和国、パルマーレスのキロンボ、ボトルネック自由国、タンジェ国際管理地域、オタワ市民病院産科病棟

第3部「嘘と失われた王国――国家は意外と「虚言」で始まり、終わる」
 グスト共和国、ポヤイス、ラフ・アンド・レディ大共和国、リバタリア、シッキム王国、アクスム王国、ダホメー王国、最も高貴な共和国ヴェネツィア、新羅黄金王国、ホラズム

第4部「傀儡と駆け引きの道具――「他国」に振り回された滅亡史」35~48
 台湾民主国、西フロリダ共和国、満州国、リオグランデンセ共和国、アフリカ・メリーランド、テキサス共和国、コンゴ自由国、ルテニア、タンヌ・トゥヴァ人民共和国、サロ共和国、ドイツ民主共和国、ボプタツワナ、クリミア共和国、ユーゴスラビア

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