格差解消へクーポンで教育支援 鎌倉市とSMBCグループなど連携

井石栄司
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 家庭の経済状況による教育格差の解消をめざす取り組みが神奈川県鎌倉市で始まる。貧困家庭の子どもが学習支援を受けられるよう、民間団体がクーポンを発行し、企業が経費を負担。行政が事業のPRや対象者の確認などを担う仕組みだ。

 教育格差解消に取り組む公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」(CFC)などによると、放課後や休日に保護者がかける教育費は2021年度、公立小で約25万円、公立中で約37万円で、コロナ禍前の18年度と比べ、それぞれ約15%、約20%増えた。世帯年収が多いほど支出を増やす傾向があり、物価高の影響もあり、所得が低い世帯との間に格差が広がる懸念があるという。

 CFCは各地の自治体から事業を請け負い、塾などで使える教育クーポンを発行してきた。一方、経営の柱として「貧困・格差」に取り組む三井住友フィナンシャル(SMBC)グループも教育格差に着目。23年度から3年間で計3億円を拠出し、格差解消に乗り出し、今後も継続したい考えだ。

 今回、CFCはSMBCグループの資金を使い、学習塾のほか、スポーツ、文化芸術、自然社会体験などで使えるクーポンを発行する。自治体が経費を負担するこれまでの事業と違い、民間資金のため、事業の自由度が増すという。CFCとSMBCグループは、フリースクールへの助成など子育て支援策に力を入れる鎌倉市に協力を打診し、連携が実現した。

 対象は就学援助費受給世帯と生活保護受給世帯。通常は、対象世帯であることを証明する公的書類を添付する必要があるが、鎌倉市が連携することで、利用者は公的書類を添付しなくても、CFCが市に確認するだけで済む。市は学校を通じて利用者を募ったり、事業をPRしたりして協力する。

 市内の対象者は、今年度(11月~来年3月)は中学1~3年の約500人。1人上限5万円分を提供する。来年度は小学4年~中学3年の約1千人。小学生は1人上限8万円分、中学生は1人上限10万円分を提供する。事業費は2年間で数千万円を見込む。

 松尾崇市長は「有意義な取り組みでありがたい」と感謝。SMBCグループ社会的価値創造推進部の高市邦仁部長は「収益を短期的に生まなくても、意義が高いものは企業市民として取り組む」。CFCの今井悠介代表理事は「国レベルで取り組むには3千億円の予算規模が必要。やりたい自治体を増やし、SMBCに続く第2、第3の企業が生まれてくるよう、良いモデルをつくる必要がある」と語った。問い合わせはCFC(03・5809・7394)へ。(井石栄司)

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この記事を書いた人
井石栄司
横浜総局|行政・経済・中華街
専門・関心分野
地方財政、情報公開