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青島文化教材社・青嶋大輔社長インタビュー!“模型業界の狂犬”はプラモデルの裾野を広げたい——創業100年を迎えたアオシマが目指す未来とこれから

“アオシマ”の通称でも知られる静岡のプラモデルメーカー、青島文化教材社は2024年に創業100周年を迎えた。

創業者・青嶋次郎氏が大空の憧憬を胸に、同社の前身である青島飛行機研究所を設立したのは1924年(大正13年)のこと。模型飛行機の製造・販売を中心に事業を展開し、辛く苦しい戦中~戦後を経て、1961年(昭和36年)に現在の名前である青島文化教材社に社名を変更。そして、同社初のプラモデル「ブルーバード号」を発売する。日本初のプラモデルが発売されたのは1958年(昭和33年)のことなので(※)、プラモデルメーカーとしては老舗中の老舗と言える存在だ。

(※)1958年(昭和33年)に、東京・淺草にあった玩具メーカー・マルサン商店が「原子力潜水艦ノーチラス号」を発売。

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▲青島文化教材社 本社(静岡県静岡市)

しかし、現在の青島文化教材社(以下、アオシマと記載)は、“老舗プラモデルメーカー”という字面から連想されるイメージからはほど遠い、アグレッシヴな商品企画を立て続けに仕掛ける意気軒昂なメーカーとしても知られている。

例えば100年目の今年発表された「けもプラ」プロジェクトは、近年新ジャンル化が進む“美プラ”こと美少女プラモデル界隈を、今まさに、大いにざわつかせている。

アオシマのメインストリームは、自動車を中心に、艦船、航空機、戦車(AFV)、バイクなど、様々なスケールで展開されるプラモデル(スケールモデル)だ。しかしそれだけに留まらず、キャラクターモデル、完成品トイ、さらにはカプセルトイにグッズなどなど、多彩なジャンルで魅力的な商品を発表し続けている同社のモノ造りの源流はどこにあるのか。そして、101年目、さらにその先に何を見ているのか――。アオシマ100年目の“今”と101年目の“これから”を、代表取締役である青嶋大輔氏に語っていただいた。

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▲株式会社青島文化教材社 代表取締役社長 青嶋大輔氏


何がきてもアオシマなら全部やれるという自信はあります

——「アオシマのプラモデル」で連想するアイテムが人それぞれ、ここまでバラバラになるメーカーさんは非常に珍しいと思います。これまで発売されてきたアイテムで、印象深いシリーズはありますか?

アオシマは飛行機の木製模型からスタートして、そこからプラモデルとして最初に発売したのが「ブルーバード号」というボートのプラモデル。そして、ボート以外にも、車や船、オリジナルキャラクターなど、幅広い題材をプラモデル化してきました。振り返ってみると歴代で一番売れたのは、やっぱり「合体」シリーズだと思います(※)。あれは本当に凄かった。当時のキャラクター商品の勢いが、今のアオシマの源流といえるかもしれません。

※完成品同士の部品を交換でき、複数のキットを組み合わせて1つの「合体ロボット」「合体マシン」を作り出すことができたプラモデルシリーズ。オリジナルロボから戦艦、スーパーカーまで様々なジャンルで展開された。

——スケールモデルとキャラクターモデルで、ファン層の違いというのは感じますか?

確かに違いますね。現状ではスケールモデルが主力になっていますが、キャラクター関連アイテムのユーザーさんも、すごい人数がいらっしゃるんですよ。それぞれのジャンル、キャラクターごとに個別のファンの方々がいる。同じプラモデルというホビーのなかで、まったく異なるお客さまがいらっしゃるという感じでしょうか。

——得意のジャンルがあれば、大なり小なり特化していくものだと思うのですが、アオシマの場合は特定のジャンルに特化していないといいますか、どんなジャンルでも貪欲に展開していくというイメージがあります。

そこは強みだと捉えています。幅広いジャンル展開をしてきたということは、何でもできるということですから。ただ、見方によっては方向性が定まってないといえるかもしれない(笑)。でも、実際にはそれぞれしっかりやってきましたから、何がきてもアオシマなら全部やれるという自信はあります。

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キャラクター商品が中心の会社さんが、車やスケールのアイテムをやろうとしても、すぐには無理ですよね。ある程度の研究が絶対に必要です。でも、アオシマの場合にはスケールもキャラクターも、それこそ飛び道具みたいなものも(笑)、全部できます。ただ、現状では車のプラモデルが主力になっていますから、そこを一番に注力していますけどね。


他社が絶対にやらないアイテムもニーズがあるならアオシマはやる

——純粋なキャラクターモデルではありませんが、キャラクターが車体にデザインされた「痛車」をいち早くラインナップされるなど、アオシマのフットワークの軽さはすごいと感じました。

あれは当時、社内では反対する声が多かったんですよね。

——え? そうなんですか。

「1/24 痛車」プラモデル(※)の第1弾を発売したのは2009年ですが、あれって営業発の企画なんです。当時、僕は営業部所属だったのですが、他の営業員が「これは面白いからやりましょう!」って企画したのが発端なんですよ。

(※)第1弾「1/24 痛車シリーズ No.01 涼宮ハルヒの憂鬱 FD3S RX-7」が2009年(平成21年)に発売。以降、『らき☆すた』や『艦これ』、『けいおん!』に『魔法少女リリカルなのは』など、人気作品を多数ラインナップ。最新作としては、「ウマ娘 プリティーダービー ZN6 TOYOTA86 '16(トヨタ)」を2024年11月に発売予定。

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▲1/24 痛車シリーズ最新作「ウマ娘 プリティーダービー ZN6 TOYOTA86 '16(トヨタ) 」は2024年11月発売予定。

実際のところ、発売まで「本当にこれって売れるのかな……」と企画担当者以外はピンときていない感じで商品開発が進行していったのですが、結果、ものすごい大ヒットとなりました。ああいったアイテムを柔軟に展開できる環境は、アオシマならではといえるかもしれませんね。

——既存のアイテムと何かを掛け合わせて、独自の魅力的なアイテムに仕上げるというのは非常にアオシマらしいですよね。「ザ・デコトラ」や「グラチャン」シリーズは「痛車」シリーズの源流のように感じます。

その遺伝子は間違いなくあると思います。昔、「創造のプラモデル」ってワードをよく使っていたんです。まさに創造の「創」はつくるということ。ですから、「デコトラ」をはじめ、新しいものをとにかく生みだしていこう、“創って”いこうという社風は確かにあります。

あまりよい例えではないかも知れませんが、車のプラモデルにしても、すっごいシャコタンや他社が絶対にやらないヤンチャなカスタム系も、アオシマはやってしまうんですね。ニーズがあるならば商品化しようという雰囲気は、延々と引き継がれています。さすがに昨今はヤンチャすぎるアイテムの商品化はちょっとキビしくなってきましたが(苦笑)。それでも自分は“もっとやれ、どんどんやれ”と推奨しています。

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▲2024年7月に東京タワーギャラリーで開催された「ザ★デコトラ展」では、ド派手なデコトラのボックスアートとプラモデルの展示が行われた。
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▲青嶋社長自ら設営したという「ザ★デコトラ展」で掲出されたデコトラを説明するパネル。東京タワーという世界的な観光地ということもあって、英語での解説となっている。

——尖ったアイテム展開は社長推奨なのですね。

真面目なものを本気でやって、「我々にはこれだけの技術があるぞ」と実力を見せるのは必要なことです。その上で、ちょっとウケを狙った商品があるのは、構わないと思うのですよ。同じ落描きでも、絵心のある人とそうでない人とでは、仕上がりがやっぱり違うじゃないですか。ウチで言えば、持てる技術をつぎ込んで開発した代表例が「ディーゼル機関車 DD51 北斗星」(※)でしょうか。

(※)2015年発売の「1/45 トレインミュージアムOJ No.1 ディーゼル機関車 DD51 北斗星」。アオシマ歴代第1位だというパーツ数はなんと1200点以上という超絶キット。

——そういう実力を持ったメーカーが、バニラ宣伝カー(※)を発売したのは衝撃的でした。

ははは、それが真面目ラインの対極となるネタラインですね(笑)。

(※)2018年1月に「コレクションスケール No.SP1 高収入求人情報 バニラ宣伝カー」を発売。さらに2024年2月には、荷台が光りテーマソングも流れる最新第2弾「コレクションスケール No.SP2 光る!音が鳴る!高収入求人情報 バニラ宣伝カー」を発売。

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▲2024年2月に発売された「コレクションスケール No.SP2 光る!音が鳴る!高収入求人情報 バニラ宣伝カー」。

——そういう両極端なラインナップを展開できるメーカーって、あまりないですよね。

そうですね……多分ないですね。新興のメーカーさんなら、どちらかに振り切るみたいな展開をするかもしれませんが、普通なら真面目な部分とふざけた部分を天秤にかけたら、真面目の方が強いんですよ。大真面目なものをきちんと創ることができるのが大前提で、それができるから、アオシマは尖ったアイテムも出すことができるんですね。

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やれと言われた仕事ではいいものはできない

——キャラクターモデルについても教えてください。2017年に「ACKS(アオシマ キャラクター キット セレクション)」が発表され、本格的な展開がはじまりました。「3式機龍」や「ガンバスター」、直近ですと「イデオン」など、作品とキャラクターの選択が非常にアオシマらしいと感じました。作品選びの基準というのはあるのでしょうか?

う~ん、キャラクターの選択については、会社が決めるのではなく企画員が決めているんですよ。やっぱり、企画者の思い入れがあると良いものができあがるので。「これをやりたいです!」っていう、企画者の意志を尊重して今のラインナップになっているんです。

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▲2024年10月発売予定の「ACKS No.DI-02 1/450 伝説巨神イデオン アニメカラーver.」。

もちろん、個人的には誰もが知っているような超メジャー作品のキャラクターモデルをやってみたいという気持ちはありますが、それぞれにコアなファンが付いている作品・キャラクターを取り上げて丁寧に商品化していくというのは、とてもアオシマっぽいかな、と。

——『機動警察パトレイバー』や『伝説巨神イデオン』も、今やるの!? と、正直思いました(笑)。

パトレイバーは企画者が好きだったんですよね。で、「やりたい」って言うから「どうぞ」って。他のインタビューで言ったことがあるかもしれませんが、僕は社長になってから企画の承認会議で「この企画はダメだ」って言ったことは1度もないんです。利益率や販売価格で意見したことはありますが、「これはやめたほうがいいんじゃないか」と言ったことは本当に1度もない。企画員に「自信はあるか?」とたずねて「ありません」と言われたらさすがにNGにしますが、みんな「自信あります!」って答えるから、「わかった、よしやろう。がんばれよ」って。

——企画担当者は責任重大ですね。

プレッシャーは大きいと思いますが、やりがいはあるでしょう。やれと言われてやる仕事では、きっとよいものはできないですよ。とはいえ、やっぱり仕事ですからね。やりたいことだったとしても、仕事になってしまえば辛くなるじゃないですか。納期や品質とか、うまくいかなくて行き詰まり、どうしようもなくなる時もあります。でも、そんな状況を乗り越えられるかどうか、最後の最後は担当者の熱意なんですよ。

それに、もし失敗してしまった、売れなかったとしても、自分はそれに対して怒りません。みんなで決めたことだし、会社全員でやったことの結果だから。全力を尽くしたのであれば、それでいいんじゃないかな、と。

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これは僕だけが思っているわけではないんです。会社全体にそういう雰囲気というか、気風がある。先ほどもお話ししましたが、「とにかく新しいものを生みだしていこう、創っていこう」という社風が、アオシマという会社には確かにあるんです。

——すこし余談になってしまうのですが、尖った商品が発表されたとき、「狂犬アオシマがまた牙をむいた」みたいな言葉がネット界隈をよく賑わせます。“模型業界の狂犬”といったワードを耳にされたことありますか……?

もちろん知っていますよ(笑)。“狂犬”という異名が生まれたルーツも知っています。あれって、当初静岡のローカルでTV放送されていた『ピエール瀧のしょんないTV』(※)という番組が発端なんですよ。

(※)2010年~2019年にかけて一部のテレビ朝日系系列局などで放送されていた、静岡朝日テレビ制作の情報バラエティ番組。ピエール瀧氏がホスト役となり、静岡県内の場所はできごと、マニアックなアイテムなどを紹介した。

その番組に弊社の飯塚(※)が出演したとき、彼の紹介テロップで「プラモ界の狂犬・飯塚」みたいな書かれ方をしたんですね。それがずっと生きていて、いつの間にかメーカー自体が“狂犬”って言われるようになっちゃった(笑)。

(※)開発事業本部所属の飯塚秀実氏。数々のヒット商品を立案。不審船の付属が話題となった「1/700 ウォーターライン No.18 海上自衛隊 ミサイル艇 おおたか しらたか」や、まさかの商品化で業界を騒然とさせた、前述の「コレクションスケール No.SP 高収入求人情報 バニラ宣伝カー」も氏の企画である。

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▲ 不審船(写真右上)の付属で話題を呼んだ「1/700 ウォーターライン No.18 海上自衛隊 ミサイル艇 おおたか しらたか」

飯塚はものすごい研究家で、個人でイベントに出展したりして情報を集め、商品開発をしている人なんです。僕は彼のことをとても尊敬しているんですけど、社内随一、ナンバーワンのアウトロー社員で、やばい企画ばかりだすんですよ(笑)。もちろん、本命ど真ん中の商品がメインですが、たまに“そういう企画”を出してくる。そのインパクトが強すぎて、“狂犬”と呼ばれたのでしょうが、いつの間にか会社が“狂犬”と呼ばれるようになってしまいました。

だから、僕はネットとかで「狂犬」って言われているのを見ると、「よく言ってくれた!」って思います。全然イヤじゃないし、むしろもっと言ってほしい。だって、それってアオシマのことを見てくれているということじゃないですか。本当に、本当にありがたく感じているんですよ。


取り巻く環境の変化、変わらぬモノ造りへの想い

——アオシマの事業についても少し質問させてください。2013年に御社は中国事務所を立ち上げられましたが、海外での展開状況は現状いかがでしょうか?

創業100年とはいっても、アオシマは海外展開で非常に後れをとっていたメーカーなんです。戦車や航空機といったスケールモデルを展開しているメーカーが、成熟したアメリカやヨーロッパの市場へどんどん輸出しているところに、デコトラやシャコタンを持っていっても、やっぱり売れないワケですよ(苦笑)。そこで海外市場に合わせた展開をきちんとやっていこうと舵を切ったのが十数年前。中国事務所の開設もその一環ですね。

いろいろと試行錯誤をしている最中、国産車や日本のキャラクター人気が海外で高まり、その高まりに呼応するかのように輸出が伸びているというのが現状です。市場としては、アメリカやヨーロッパはもちろんですが、特に中国をはじめとする東アジア、そして東南アジア地域の伸びがすごいですね。

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国産車人気に関しては、アメリカの25年ルール(※)もあるんだと思います。「スカイライン GT-R」や「RX-7」、「スープラ」など、バブル期のスポーツカーがものすごい金額で取引されているようになり、世界的にも注目されるようになりました。

(※)アメリカにおいて、製造から25年を経過した車両をクラシックカーとして認める登録制度のこと。アメリカ国内への輸入を認めていない右ハンドル車も輸入可能となり、関税や排ガス規制も対象外となる。

そんな人気車のプラモデルということで、手に取ってくださるお客さまが増えたのだと思います。国産車のラインナップは力を入れてきましたが、今後はこれまで以上に力を入れていきたいですね。

——近年のプラモデル業界を語る上で避けて通れないのが、コロナ禍での巣ごもり需要だと思います。コロナ禍以前と後では、どのあたりが大きく変わったと感じていますか?

おっしゃるとおり、コロナ禍の数年間は業界全体に追い風がありました。そして、コロナ禍が過ぎて皆が外に出かけるようになったら、プラモデルの売上げは落ちたのか?といえば、実はそんなに落ちていない。もちろん、商材によっては大きく凹んだり右肩下がりだったりするものもありますが、コロナ禍以前と比べると、コロナ禍で大きく伸びた数字がおおむね維持されている。つまり、コロナ禍をきっかけにプラモデル趣味をはじめてくださった方が、今もきちんと興味をもってくれているということなんです。

ですから、メーカーとして興味も持ち付けてもらえるよう、新たな商品開発はもちろん、広報宣伝にも力を入れていかなければならないな、と。この盛り上がりを一過性のものにしないため、今が正念場だと思っています。


アオシマが見据えるプラモデルの未来

——そういう点では、2024年後半~2025年に登場するアイテムは非常に重要なアイテムだと思います。今後、アオシマから登場する新製品の中で、 個人的に注目をされているアイテムはありますか?

直近でいえば、やはり「けもプラ」ですね。担当者が企画を持ってきたとき、「なんかすごいのがきたな」って(笑)。一目見た瞬間から、これはポテンシャルの固まりだと感じました。

僕個人はものすごくコアな趣味を持っているわけじゃないんですよ。ただ、色々なメーカーの方々とお話させていただく機会は多いですし、売り場にもできる限り足を運んでいます。そういうことを続けていくと、今は何がトレンドで、他社さんは何に力を入れているかといった、業界全体の流れみたいなものが見えてくるじゃないですか。そういう、自社のラインナップだけではなく、もうちょっと業界全体を俯瞰した視点で捉えたとき、「けもプラ」が与えるインパクトってかなりのものになるんじゃないかと、可能性を感じています。「けもプラ」は、おそらく今までアオシマを知らなかった人たちが弊社のことを知るきっかけになるプラモデルになるのではないかな、と。

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▲こちらは2024年5月の第62回静岡ホビーショーで配布された「けもプラ」のチラシ(表面と裏面)。開発は鋭意進行中とのこと。続報をお待ちください!

ですから、「けもプラ」は単発で終わらせないよう向こう何年かは続けられるような展開をしていきたい。そのためには、しっかりとしたクオリティに仕上げることが最優先です。今回は企画者の熱量がヤバいくらいで、本当に力が入っています。汎用性も高いですし、すごく面白いプラモデルに仕上がると思います。具体的な情報の発表はもう少し先になってしまいますが、楽しみに待っていてほしいですね。

——近年、アオシマは「楽プラ」をはじめとする初心者向けアイテムの拡充に特に力をいれているように感じます。御社のイベントでも「プラモデルの裾野を広げたい」というキャッチがよく用いられていますが、現状への危機感というのを感じているということでしょうか?

プラモデルの未来を考えたとき、現状はプラモデルを作るきっかけがなさ過ぎると感じています。これからのために、今の子どもたちにプラモデルに触れてもらう機会を作るところから始めなければならない。プラモデルのポテンシャルって、ものすごく高いと思うんですよ。触って組み立ててみれば、絶対みんな楽しんでくれる。もちろん続くか続かないかは人それぞれですけれど、はじめて組み立てて完成させたときは、絶対、みんな“楽しい”って言ってくれる。その最初の“楽しい”を言ってもらうきっかけのプラモデルを創りたいという思いで、「楽プラ」をはじめとする初心者向けプラモデルの開発に力をいれているんです。

——はじめてプラモデルを触る人に、「組み立ての楽しさ」というプラモデルならでは魅力を損なわず、かつ組立てやすいキットを開発するというのは、相当に高いハードルなのでは?

「楽プラ」シリーズの開発がはじまったころに僕が開発スタッフに話したのは、この企画の利益はとりあえずいい、と。いや、“薄くていい”だったかな(笑)。利益がでないと会社が潰れちゃうから赤字ではダメだけれど、規定の利益率でなくても構わないという指示をだしました。それでリリース当初は1,500円(税別)で発売したんです。とにかく触ってもらおう、組み立ててもらおうというのがコンセプトの商品だったので。

同じコンセプトの商品として「1/24 プリペイントモデル」シリーズがすでに立ち上がっていましたが、我々はそこからもう少し年齢層を下げたかった――裾野を広げたかったんです。「楽プラ」の開発は決して容易ではありませんが、裾野を広げるという重要な役割があるので、それを達成するために妥協することはできないんです。

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——最近では「楽プラ」に「ミニオンズ」などのキャラクターモノもラインナップに加わりました。キャラクターの選定にもこだわりを感じます。

キャラクターで「ミニオンズ」を選んだのは、瞬発力のある商品より定番となる商品を目指しているからなんです。もちろん、ものすごい流行っているキャラクターなら爆発的に売れる可能性は高いです。でも、プラモデルという商材の場合は、やはり長く売っていきたいんです。

——「楽プラ」シリーズが発売されてから7年ほど経ちましたが、お客さまの反応はいかがですか?

おかげさまで、ものすごくいい反響をいただいています。いま日本で一番売れている車のプラモデルシリーズって、間違いなく「楽プラ」なんですよ。

アオシマが過去何十年と続けてきた「1/24 ザ★モデルカー」シリーズは、当然ですが車種もバリエーションも一番種類があるシリーズです。それに対して「楽プラ」の場合は、2017年からスタートしてまだ約20車種、アイテム数も約130種ほどの展開です。でも、出荷数ベースでは、過去何十年とやってきたシリーズに、並走までは行かないけれど背中は見えている——そのぐらいのところにまで来ているんです。

展示にも力をいれていて、お店に飾っていただけるよう完成品の提供なども積極的に行っています。やっぱり実際に見てもらうのが一番ですから。お店の方から、お客さまから新規に何を作ったらよいかアドバイスを求められたとき、「これがいいですよ」と勧めることができるアイテムがあるのはありがたい、と言ってもらえたのはうれしかったですね。

——もう少しすると、楽プラから入ってきたユーザーさんが他のプラモデルにチャレンジするという流れに繋がっていくのでしょうね。

そうなってくれるとうれしいですし、そこを目指しています。やっぱり、一段一段上っていける階段をメーカーが作らなければいけません。もちろん、最初からハイレベルなスキルを求められるプラモデル——アオシマでいえば前述した「DD51」のような——を作れてしまうすごい人もいますが、そんな人はなかなかいないですよね。

でも、「楽プラ スナップキット」があり、そこから本当にちょっとだけステップアップした「楽プラ スナップカー」があり、さらにその先に1/24スケールの「ザ★モデルカー」など各種シリーズがある。そういう階段がようやく出来上がってきたというのが、今の状況だと思います。

でも、まだ足らない。もっと登りやすい階段を作らなければいけないかもしれないし、もっと高いところまで上がれるようにしなければならないかもしれない。プラモデルの裾野を広げるために今必要なものは何かを考え、アオシマなりの回答をきちんと提供していくのが、プラモデルの明るい未来につながるのだと思います。

——本日はありがとうございました。電撃ホビーウェブでは今後も新商品のご紹介記事はもちろん、「けもプラ」の特集企画も各種展開予定です。読者の皆さまも引き続きお楽しみに!


青嶋大輔(あおしま・だいすけ)氏プロフィール

1976年、静岡県静岡市生まれ。関東学院大学卒業後にアメリカの雑貨・衣類の輸入販売店を起業。その後、2000年に青島文化教材社入社。営業、企画開発、経営企画などの部門を経て、2016年に代表取締役社長就任。創業者である青嶋次郎氏の曾孫にあたり、同社のトップとしては青嶋次郎氏から数えて6代目。


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