船井電機、株仮差し押さえ 関連会社のネット広告代金未納で 事業多角化推進の末
AV機器メーカーの船井電機(大阪府大東市)の株式について、東京都のネット広告会社が仮差し押さえを申請し、9月初めに東京地裁がこれを認める決定を出していたことが関係者への取材で分かった。関連会社の広告代金の未納が原因という。2日までに経営陣も大幅に代わり、代表権を持つ会長に閣僚経験者が就任した。
船井は創立60年を超える老舗企業で、「FUNAI」ブランドで低価格帯のテレビを家電量販のヤマダホールディングスに供給していることなどで知られる。
業績不振で2021年に出版会社に買収されて上場廃止になり、現在は持ち株会社「船井電機・ホールディングス(船井HD)」の傘下の事業会社になっている。
船井は事業の多角化を進めるなか、昨春に脱毛サロンチェーンを買収。関係者によると、この脱毛サロンチェーンはネット広告会社に対して多額の負債を抱え、船井HDがこれに連帯保証をしていた。この債務の返済が進まず、ネット広告会社が東京地裁に対し、船井HDが所有する船井電機の株式の仮差し押さえを申し立てていた。
船井電機のホームページや広報によると、前社長の上田智一氏は9月27日付で取締役から外れ、今月2日までに新たな代表取締役会長として元環境大臣の原田義昭氏(80)が就任した。
このほか日本政策金融公庫の元役員やファンドの代表らが新たに取締役に就いた。新たな経営体制のもと、今後の経営計画を策定中で「なるべく早いタイミングで公表したい」(広報)としている。
船井は、創業者の船井哲良氏が興したミシン関連の会社からトランジスタラジオの生産部門が独立する形で1961年に設立された。
大手メーカーへのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を軸に、80年代以降はビデオデッキやテレビ、電話機などにも手を広げた。
特にテレビは米小売大手ウォルマートを通じた販売で北米で数量を伸ばしてきた。ピーク時の2006年度の売上高は4千億円近くに達したが、昨年度は5分の1ほどの851億円まで落ち込んでいる。事業報告書によると、昨年度の従業員は約2100人。
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