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CoC『輾転と町は』のアレコレ

February 24th, 2021 22:36・All users
 どうも、ごくつぶしです。

 今回は、なんかこう、TRPGシナリオ書きマンらしくというか、FANBOXらしく、拙作『輾転と町は』の裏話でもしていこうかなぁと思っております。

 もちろんネタバレの大嵐なので、現時点で通過予定・通過中の方はウィンドウを閉じて、飯食って風呂入って歯を磨いて寝てください。


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① そもそもの始まり


 まずは、このシナリオを執筆しようと決心した経緯についてお話することにします。

 私は物忘れの多い人間です。アパートの階段を下り終えてから「鍵閉めたっけ?」と確認しに帰るなんて日常茶飯事ですし、常に身に着けている眼鏡や携帯だってしょっちゅう無くします。そんな時、ふと思ったのです。いつも気にかけているものすらこうなるのだから、普段気にも留めない物や人なんて、どうなっているか分からない…………。




 それから町を歩くたびに、色々なことが気にかかるようになりました。あの空き地には何があったか、この店はいつから存在しているのかと。人や社会の変容に合わせて街並みが変わっていくのか、はたまた町の変容に合わせて人や社会の認識が変わっていくのかと。

 今回のwebアンソロジー企画【風説たまゆら電報局】のお話をいただいたのは、まさにこの疑念が膨れ上がっていた頃でした。この違和感を、この不快感を、誰かに理解してほしい……

 ただ、しばらくの間は「これをどうやって“ゲーム”や“シナリオ”に落とし込むか?」ということばかり考えていました。こんなにも漠然としているものをどうやって遊べる形に持っていくのか、さっぱり見当がつかなかったのです。

 これといった方針すら見出せないまま2週間が過ぎたころ、仕事帰りのことでした。遠くに見える鉄塔の背がやけに高く見えたのです。よくよく見れば、その鉄塔の頂と思っていた光は、点に浮かぶ星々のうちのひとつでした。




 なんだ、そう見えただけか。
 そう知覚した瞬間、自身の中に物語が湧きあがってきました。

 背丈の低くみすぼらしい鉄塔は真実か?

 あの家は本当にあんな形をしていたか?

 昨日と今日で何が変わった?

 寝返りを打ち、今にも起き上がろうとする町。

 その蠢動を知られることのない、わたしたちの町が。

 町は生きている。

② 花森(はなもり)とは誰なのか?


 彼、あるいは彼女は「どこにでもいる一人の友人」です。彼自身に何か特別な力があるわけでもなく、特別な存在であるわけでもありません。それは探索者たちにとっても同じです。特別に仲が良いわけでもないただの友人です。皆さんにもいませんか。これといって頻繁に連絡を取り合うわけでもなく、ましてや二人きりで遊ぶような間柄でもない、同級生と親友の間にいる友人が。花森は所謂そういう人で、他の友人と横一列に並べてしまえば、もはや特徴といえるものは見出せないでしょう。



 よって、花森については「何も決まっていない」というのが公式設定となっております。本当に存在したのかすらあやふやになってしまいますから、名前や仕事、性格など、何も決まっていません。ですから、なぜ花森があなたたちに電話をかけたのかは、制作者である私にもわかりません。

 ただ、電話をとったのは他でもない“あなた”です。

 それだけがあなたにとっての“本当”なのです。



③ シナリオのエンディングに至る処理について


なぜ、《うわさ》に失敗しなければならないのか? 

 花森からの電話が途切れた後、「錆び付いた鉄塔の噂」を思い出した探索者は、大昔に一度忘れてしまった噂話の真偽を確かめるべく、自分たちの町を駆け回ります。その過程で皆に聞くでしょう。

「鉄塔が夜な夜な歩いているという噂を知っているか?」

 と。


  探索者が意識している・していないに関わらず、この時点で二つの事象が発生しています。

 1.「あの錆び付いた鉄塔は夜な夜な歩いている」と噂を広める

 2.情報を集める中で、噂が“真実”であるという証拠が増える

 この二つを繰り返す……すなわち、自分の疑念を確かめようとひた走ればひた走るほど、探索者はまさしく「媒介者」と化し、自分と他者を、自分と鉄塔を、そして他者と鉄塔をも結び付けていくことになります。そして、その過程において噂はますます真実味を帯びていくのです。終いには

 そうだ、そうに違いない。

 あの鉄塔は、錆び付いた鉄塔は、生きているんだ。

 と、あの夜の電話の主と同じ考えに至るかもしれません。そのころには、真実から噂が生じるのと同じように、皆の噂が真実を形作っているでしょう。




 ですから、空から無数の鉄骨が降り注ぐとき――あるいは、その姿を取った神が手を伸ばすとき――探索者は、真実を形作る噂を“否定”しなければならない。すなわち、《うわさ》の判定に失敗しなければならないのです。ただ、いくつもの証拠をかき集めてきた探索者にとって、それはひどく難しいことでしょう。自分が記憶している話がどれも、目の前の現実を裏付けてしまっているのですから。

 これについて一度お便りをいただきました。

「探索すればするほどロスト率が上がる処理は如何なものか?」

 というものです。探索者ロストしたんかな。でもね、あの夜電話をかけてきた、噂話を追い続けた友人がどうなったか考えてもらいたいのね。それでも納得できない場合は、シナリオの傾向が合わないのかもしれない。ごめんね。

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