浚渫土から有害物質 市川の人工干潟造成計画 三番瀬を守る会「汚染土投入は問題」と中止訴え
2024年10月1日 08時06分
千葉県市川市の人工干潟造成計画に反対する市民団体が9月29日、市内で学習会を開いた。三番瀬を守る連絡会の中山敏則代表世話人は、講演などで計画の問題点を挙げるとともに、市が干潟予定地に埋める浚渫(しゅんせつ)土から、有害物質とダイオキシンが検出されていたことを明らかにした。いずれも基準値を下回っていたものの、「汚染土を投入するのは問題だ」と強調。講演後に参加者はJR本八幡駅北口で、中止を求める初の街頭活動を行った。(保母哲)
中山さんは人工干潟の問題点として、波に浸食されるなどで、干潟の維持と生き物の定着の両立は困難▽土砂を補充しなければならず、維持・管理費は莫大(ばくだい)に▽兵庫県では人工砂浜が陥没し、死亡事故が起きた▽専門家が加わっていない-などと指摘。
環境省との意見交換で、担当者は「人工干潟の成功例は把握していない」と答えたことなどから、中山さんは「市川市は『根性論』で全国初の人工干潟を造ろうとしている」と市の計画を批判した。
浚渫土から検出されたのは総水銀、油分、バナジウムまたはその化合物とダイオキシン。人工干潟の造成予定地では、同市塩浜沖で行われている航路浚渫工事の砂泥を利用するため、中山さんは、業者が昨年4月に作成した「底質調査報告書」を入手した。
人工干潟の代替案として中山さんは、江戸川放水路とも呼ばれる江戸川下流部にある自然の干潟の活用を挙げた。市が2014年3月に策定した「生物多様性いちかわ戦略」のパンフレットに、その干潟で潮干狩りをする子どもたちの写真も収められている。「海水域の干潟があり、既に市民の憩いの場になっていることを市も認めているのだから、人工干潟は不要」と話した。
また、東京湾の湾港や航路で発生する浚渫土は、東京都側から千葉県側に大量投棄されているため、中山さんは「迷惑料」として千葉県が受け取っている金額の資料も入手。11~23年度の13年間で計103億円だった。
このうち約80億円が漁協に支払われ、市川市漁協が人工干潟に賛成していることから、中山さんは「こうしたお金の流れや補助金で、漁協は行政の方針に逆らえないのでは」と推測。投棄先は千葉市・幕張沖だった。
学習会を主催したのは、市川三番瀬を守る会。市民ら約70人が参加した。同会の谷藤利子(としこ)会長は「県も同じ場所で造成に向けて調査したが、問題が多いため断念した。なのに、なぜ市川市が造ろうとするのか」と憤る。街頭活動は今後、定期的に実施する。
<市川市の人工干潟造成計画> JR市川塩浜駅南側、塩浜三番瀬公園前の東京湾を幅約100メートル、奥行き約50メートルにわたって埋め、人工干潟を造る。「市民が直接海に触れられる場所がない」として、市が昨年8月に計画を発表した。航路の浚渫土を、専用船で埋める「覆砂(ふくさ)」方式とし、早ければ来年4月から工事に着手する。
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